14 管狐 奥さんに気付かれる
俺は管狐。
いまだにご主人様は迎えに来てくれない。
いい加減、迎えに来てくれてもいいと思うのだが、どうなっているんだ?
まさか、俺が死んだと思われているのか?
いや、きっとご主人様も忙しくて、俺の探索に割く時間が無いのだ。
現にお嬢ちゃんも、学校と家の手伝いで忙しくしている。
「ちょっと〜。ヨウコも服を畳むの手伝ってよ〜」
おっと。お嬢ちゃんに命令されてしまった。
こうなっては、体が勝手に動いてしまう。
「ヨウコ。うまい〜」
そうだろう。
ご主人様の脱ぎ散らかされた服を畳んでいたからな。
この程度の仕事、俺にかかればお手のものだ。
「ひより。ひとつ聞いてもいい?」
「ママ。なあに?」
奥さんはやっと気付いたな。
普段は洗濯物をお嬢ちゃんに頼んだら、他の家事をやっていて、俺が畳む姿を見ていなかったからな。
さすがに洗濯物が勝手に畳まれていく様子を見たら、おかしく思うだろう。
「洗濯物がひとりでに畳まれていっているんだけど……」
「ヨウコが手伝ってくれているんだよ〜」
「ヨウコちゃんって、いつもひよりがお話しているお友達?」
「うん!」
「それは……」
さあ、奥さんはどう思う?
「エライのね〜」
それだけ?
「うん! ヨウコ、エライの〜」
「ヨウコちゃんは、そこにいるの?」
「ママは見えてなかったんだ……」
俺は管狐。
霊力の無い者には見えないから、仕方がない。
「こ、こうすれば見えるわよ」
奥さん。俺を服で包まないでくれないか?
それでは、見えてなかった事実は消えないぞ?
「ほらね?」
「ママ。賢い!」
お嬢ちゃん。それでいいのか?
賢いの一言で済む問題では無いと思う。
「う〜ん。これじゃあ、何かわからないし、服を着せようか?」
「それ、かわいいかも!」
「それじゃあ、洗濯物を片付けたら、ヨウコちゃんに似合う服を、一緒にお絵描きして考えよう」
「うん! どんな服にしよっかな〜?」
その後二人は、俺の服を、絵を書きながら話し合い、決定していた。
「うん。かわいい!」
「本当ね〜。それにこれなら、抱いても気持ちいいね」
これが服なのか?
俺には服には見えない。
キツネのぬいぐるみだ。
俺は管狐なのに、綿の抜いた、キツネのぬいぐるみを着させられてしまった。
ひとつ言いたい。
これは正解なのか??