13 管狐 かくれんぼをする
俺は管狐。
今日はお嬢ちゃんと近所の公園に来ている。
近所と言っても、そこそこの距離だ。
なので、お嬢ちゃんと自転車に乗ってやって来た。
初めて乗ったが、風を切るあの感じは悪く無い。
「ひよりちゃん。こっち〜」
「ここみちゃん! みんな〜」
あれは学校の友達だな。
仲良さそうに話をしている。
これなら今日は、俺に何かを要求してくる事は無いだろう。
「それじゃあ、かくれんぼするよ」
「「「「「じゃんけん、ぽん!」」」」」
「あ、負けた」
「ゆうた君が鬼ね」
「みんな隠れろ〜」
「「「「「わ〜〜〜」」」」」
「すぐみつけてやる! い〜ち。に〜い……」
皆、蜘蛛の子を散らすように逃げて行ったな。
お嬢ちゃんも頑張って走っている。
そろそろ隠れる場所が決まったのか?
貫通している穴に入ったな。
これでは丸見えになるのではないのか?
「よし! ここで鬼をやり過ごすよ〜。そのためには、ヨウコの力が必要だね」
何故、俺の力が必要になる?
俺は管狐。
力になれないぞ?
「じゃあ、ヨウコは外の見張りね。たぶんそっちから来るから、ゆうた君が来たら教えてね」
ズルじゃないか!
くっ。命令されたから行くしかない。
「そうそう。そこ! ヨウコから合図があったら、わたしは反対側から外に出るからね。そして、また戻る。これで最後までみつからないよ!」
お嬢ちゃんの作戦は、賢いんだが、人間に見えない俺を使うのはズルいと思う。
命令されたからやるしかないが、友達にズルして勝とうとするのはよくないと思うぞ?
「それじゃあ、見張りお願いね〜」
はいはい。
やればいいんだろ。
その後俺は、キョロキョロと周囲を警戒する。
その間、お嬢ちゃんは暇なのか、何度か話し掛けて来たが、隠れているのを思い出し、すぐに口を閉じていた。
「ひより、見つけた!!」
「あ! ゆうた君!!」
お嬢ちゃんが恨めしそうに俺を見ているな。
俺はちゃんと仕事をしていた。
だから、そんな目で見ないでくれ。
「みつかっちゃったよ〜」
当然だ。
穴はふたつある。
ひとつに見張りを立てても、もう片方から来られては意味がない。
「なんで教えてくれなかったの〜」
俺は反対に居たからだ。
どうやって、教えればよかったんだ?
「むう……ヨーコが早く、妖狐になれば見つからなかったのに〜」
それは関係ない。
作戦が悪かったんだ。
そもそも俺は管狐。
どうやっても妖狐になれないからな。
「ひよりちゃん。誰かとお話してるの?」
「あ、ひとりごとだよ〜」
その後お嬢ちゃんは、かくれんぼで俺を頼ることはなくなった。