12 管狐 人に夢を知られてしまう
俺は管狐。
現在、隣のお姉さんの膝に乗せられ、優しく撫でられている。
「ごめんなさい。あなたが大きくなっていたから、てっきり、ひよりちゃんにとり憑いて、霊気を吸い取っているのかと思ったの」
うん。正解だ。
正確に言うと、あふれて漏れている霊気を吸っている。
だから、お嬢ちゃんの体調に問題は無いはずだ。
この事を言うと、変に受け取られると困るから、お姉さんには黙っておこう。
「それに管狐なんて、初めて見たのよ。本物はこんなに大きいのね。それにモフモフしてて、撫で心地がいいのね」
いや、管狐はもっと小さい。
ネズミぐらいだ。
零号ジイサンで猫より少し小さいぐらいだが、気付いたら俺も、それぐらいの大きさがある。
俺も零号ジイサンの大きさになるのは、もっと時間がかかるものだと思っていた。
お姉さんも、そろそろ撫でるのやめようか?
「ん、んん〜……お姉ちゃん?」
お嬢ちゃんが目を覚ましたか。
きょとんとした顔でお姉さんと俺を見ている。
「ヨウコ……あ! なんでもない……」
「この子、ヨウコって言うの?」
「え……お姉ちゃんも見えるの?」
「うん。かわいい名前だね」
「うん!」
そうか?
俺は雄だから、似合わないと思うぞ?
「それよりこの管狐って、ひよりちゃんが使役してるの?」
「くだぎつね? しえき?」
「え……何も知らないの!? 管狐って言うのはね……」
お姉さんが俺の事を説明してくれている。
これでようやく、お嬢ちゃんが俺を管狐と認識してくれるだろう。
「え〜。ヨウコは妖狐だよ〜。管狐なんかじゃないよ〜」
残念ながら、認めてくれないみたいだ。
だが、俺は管狐。
お姉さんの方が知識があるから、説得されたら認めざるを得ないだろう。
「そうね。ヨウコちゃんは、ヨウコちゃんよね」
もっと説得してくれ!
いや、名前のせいか?
お姉さんは、一個体でヨウコと呼んでいるな。
「ヨウコはね〜。九尾の狐になるのが夢なんだ〜。だから、わたしも頑張って手伝うの」
違う。それはお嬢ちゃんの夢だ。
俺は一言も、そんな事は言ってない。
お姉さん。
俺の首振りで気付いてくれ!
「そうなんだ。ちゃんとお世話するなんてエライね〜」
お姉さん!
気付いてくれ!!
ダメか。
ならば、お嬢ちゃんに知られたくなかったが、もう一度紙に書いてやる……
「ヨウコ〜。こっちおいで〜」
うっ……お嬢ちゃんの命令で、お姉さんの膝の上から、お嬢ちゃんの膝の上に移動してしまった。
「よくなついているね」
「うん!」
違う。命令されたんだ。
「ひよりちゃんが、ただの風邪だったからよかったわ」
「??」
「あ、こっちの話。それじゃあ、よく休んで早く治してね」
「うん! ありがと〜」
お姉さん。俺の夢は九尾の狐ではないんだ。
俺は管狐。
お嬢ちゃんの誤解を解いてから帰ってくれ〜〜〜!