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11 管狐 殺気に震える


 俺は管狐。

 ご主人様は、まだ迎えに来てくれない。


 その代わりに今日は、お隣のお姉さんが、お嬢ちゃんを訪ねて来た。

 どうやら風邪を引いた、お嬢ちゃんのお見舞いに来たらしい。


 風邪を引いたのは当然だ。

 昨日の雨に打たれて、そのまま庭で遊んでいたのが悪い。

 自業自得なのに、何故か現在、お姉さんに睨まれている。

 まさか見えてるの?


「お前の仕業か?」


 お前?

 お姉さんがお嬢ちゃんを呼ぶ時は、いつも名前で呼んでいたはずだ。


「聞こえているだろう? お前だ」


 俺のこと?

 見えていないはずなんだが……

 試しに自分を指差してみよう。


「そうだ。お前だ」


 え……見えてる。


「もう一度聞く。お前がやったのか?」


 なんのことだ?


「なんだ? 呪いは使えるくせに、他者と意思を通わす事も出来ないのか?」


 呪い?

 俺は管狐。

 そんな事は出来ない。

 しかし、普段優しいお姉さんが、俺に殺気を放つものだから震えが止まらない。

 俺はご主人様に会えずじまいで、ここで殺されるのか?

 いや、命乞いをしてでも生き残る!


「なんだそれは? 必死で首を振っても、お前が人に仇なすあやかしだと、わかっている!」


 首が取れそうになるぐらい振ってもダメか……

 それよりも、俺は管狐。

 人に使役されるあやかしだ。

 お姉さんは勘違いしている。

 だから、そのぶっそうな物は置いてくれ。


「これが怖いのか? そうだろう。霊験あらたかな御神木から作られた、退魔の木刀だ。お前ごとき、弱いあやかしなど一撃だ」


 弱いとわかっているなら、そんな凶器、持って来ないでくれ!

 これは絶対絶命のピンチだ。

 どうにかして、お姉さんに無害な管狐と伝えなくては……

 そうだ!

 一か八か……


「待て!」


 俺は必死に勉強机に登って、鉛筆を掴む。

 そして、がむしゃらに文字を書いた。


「くだぎつね? わるいあやかしじゃないよ?」


 ふぅ。なんとか書けた。

 お嬢ちゃんの勉強する姿をいつも見ながら、ひらがなを頑張って覚えた甲斐があったな。

 お嬢ちゃんに文字を書けると知られると、「ねえねえ」とうるさそうだから秘密だがな。

 これまでのレベルアップで力が上がっているから、もしかしたら鉛筆を持てるのではないかと、賭けに出たが、正解だった。

 これで誤解は解けるだろう。


「管狐? たしか管狐って、人に使役される無害なあやかしよね?」


 そうだ! 命だけは助けてくれ!!


「なんでこんな所に管狐が……。それに大きい……。フェレットみたい」


 フェレットが何かわからないが、もう殺気は消えたな。

 助かった〜〜〜!


「あなた、尻尾がモフモフしてるのね〜」


 殺気が消えたのはいいけど、今度は撫で回さないでくれないか?


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