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2.アキラ・ローグライトⅠ

今更ですがE/Oとは設定が異なっています。

 ログインが終わると以前にはなかったムービーが始まる。

ナレーションがアニメの声優と同じ事からストーリークエストに関したムービーと思われる。


――十三年前。

――ロードグリアード帝国、皇帝アレハンド・イヴァク・ロードグリアードが皇帝を退き、第一帝位継承者のルドルフ・イヴァン・ロードグリアードが皇帝の座に就いたその日、ロードグリアード帝国を改め神聖アッシナール教国と国名を変えた。

――その背景にあるのはここ十数年で新興した宗教であるアッシナール教でルドルフ皇帝は敬虔な宗徒であった事だ。

――アッシナール教の教義は一貫している。

――それはヒューマ至上主義、ヒューマ、アキレウス、アマゾネス(以後、ヒト族)以外の種族は、全て亜人と称し劣等民族だという。

――そして、世界には亜人を多くおり、至上の存在であるヒト族の土地が不法占拠されている。

――さぁ、ヒト族諸君、世界を取り戻そうではないか!

――それがアッシナール教の根幹となっている。

――そんな宗教が国を持ったならばどうなるか子供でも分かるだろう。

――国内にいる亜人と勝手に決めつけた人々を捕らえ私財没収し投獄。粛清したのだ。

――それだけではない。 ヒト族なら犯罪者でも受け入れアッシナール教の宗徒として招き入れた。

――さて、国内にいる亜人を全て投獄・粛清し終えた後、その先に何があると予想出来る?

――そう、宗教戦争だ。 国外には彼らが亜人と称する種族が数多くおり、国を持ってさえいる。

――この世界は元々一つの宗教しかなかった。 四神教がそれだ。

――四神教は全ての種族に対して平等でヒト族以外を亜人と称するなど到底受け入れられる訳がない。

――ここに神聖アッシナール教国VS世界という構図が出来上る事になる。


 最後に世界地図が炎に包まれてムービーが終わる。

暗転して数秒、視界が広がっていく。

 そこはノースブレイ王国傭兵都市ヴェユスにある代々俺が使っているキャラ達の自宅となっている二階にある一室の天井だ。

簡素な作りの部屋というか寝室でベッドと全身が写る大きな鏡があるだけの部屋。

まぁ、端的に言えばログイン・ログアウトする際に使う部屋だ。

俺は身を起こし右を向く。


「ああ、今回は女か・・・」


 鏡に映った今回のキャラを見て俺はそう呟くと可愛らしい声が聞こえた。

四代目キャラの少女時代の声に似ているな。

四代目のキャラはヒューマであった三代目とアマゾネスであったフレンドのキャラの子で少女時代は、自分が操っているキャラとは思えないほど可愛かったが女性になってくる辺りからアマゾネスの血が表に出てくるようになって正に姉御という言葉が似合うキャラだった。

それはそれで都合が良く一人称をオレにしていたものだ。

まぁ、それはさておき今回のキャラはヒューマとエルフの子つまりハーフエルフなので少女の姿から――正確に言えば十七・十八辺りで――成長が止まる合法ロリショタ種族だ。

恐らくはこの声から然程変わる事がないだろう。

  俺はベッドから起き上がり鏡の前に立ち全身の見回す。

髪は紅く瞳は金色ヴォルト銀色アニエラのオッドアイで猫目か。

ちなみに、髪や目の色は、得意属性の影響が色濃くでるので、それだけで色々を察する事が出来る。

ハーフエルフという事もあり耳が控えめに尖り容姿は整っている。

服装は全子供キャラ共通(色はランダム)の布の服(男はズボン、女はスカート)だ。

背はそれほど高くなく百五十後半辺りだろう。

何となく初代の色違いって感じがするな。


「ステータス」


 他意はないが本来声を出さずとも思考するだけでステータス画面を呼び出せるがあえて声の確認を含めて出してみた。


名前:アキラ・ローグライト

種族:ハーフエルフ(ヒューマ/古代エルフ)

年齢:15

性別:女

両親:ヴォルト・ローグライト/アニエラ・ロ-グライト

所属:ノースブレイ王国

所属:なし

職業:一般人

役割:剣士

二つ名:雷迅の娘

属性:炎Lv1、雷Lv1、光Lv1、▼Lv0を表示する。

賞金額:なし

▼詳細表示


 これが基本的な今回のキャラのステータスだ。

以前にはなかった役割という項目が増えている。

想像であるが恐らくはスキル構成などからNPCから自分がどう見られるのか、だと思う。

新生アップデート前は、自称であったのを新参プレイヤーにも分かりやすくしたのだろう。

▼詳細表示を指でタップすれば、詳細ステータスつまり腕力とかその辺の数値を見る事が出来る。

とはいえ、今のところは、特筆する所もないし大した見所もないだろう。


「スキル」


種族スキル:ハーフエルフLv1

血族スキル:全武器適正+、精霊魔法適性+++、霊力+++、法力++、霊視(真)

才能スキル:雷迅の娘、堕天族の血、料理下手

一般スキル:刀剣修練Lv3、布具修練Lv2、

流派スキル:《月守夢想流剣術Lv0+1》縮地法・極Lv0+1、鎌鼬・極Lv0+1


 これは中々良い意味でヤバげなスキル構成だ。

種族スキルっていうのがいわゆるキャラクターのレベルだと思ってくれて良い。

つまり、レベル1の状態でこれだという事だ。

血族スキルは種族や血族が持つ特性の様なものなのだが、これがあまりにも破格過ぎる。

ちなみに、普通のハーフエルフの固有スキルは下記の様な感じだ。


固有スキル:全武器適性+、精霊魔法適性+、法力++、霊視(真)


 お分かり頂けるだろうか。

比べて見ると精霊魔法への適正が()()()()事を・・・。

+が一つで1.2倍の熟練ボーナスなのでそれが三つなので1.6倍の熟練ボーナスとなる。

霊力は、魔術に対する魔力の様なものなのでこの精霊魔法適正ならこんなものかもしれない。

これ以外に気になるものが二つほどある。

 堕天族の血・・・、なんだこれ?

えーと、”過去に該当種族――()()()()()()()()()()()――だった場合、先祖返りにより一部能力が使える様になる。”と・・・。

そして、その一部の能力とやらは分からず仕舞いか。

 料理下手・・・は、生産スキル《料理》を使用し一工程以上の料理を作った場合、必ず失敗する。また、失敗した場合、必ず『謎の物体X』が出来上がる・・・と、なるほど。


「じゃねぇ!?」


 え、なにその『謎の物体X』って、分類は”食べ物”・・・本当か?

『注意:食べ物ではありません。 うっかり口にした場合、気絶、猛毒、狂化、恐怖、衰弱、出血状態になりますので取り扱いには十分に気を付けて下さい』


「おい、どっちだよ」


 落ち着け、俺。 スキルにツッコミ入れてどうする。

後は普通、だな。 うん。

刀剣修練も布具修練が若干上がっているのは子供キャラの特権だな。

親の方向性に沿って若干のスキルを習得して始める事が出来る。

《月守夢想流剣術》は自流派で、要するに俺のリアルを削った結晶だな。

Lv0の後に+1となっているが、恐らくこれが二つ名と才能スキルにある雷迅の娘の効果だろう。

進化に進化しまくった流派スキルによる恩恵は非常に大きいのでこのプラス1は非常に有難い。

また、Lv0からLv1まで一度二度程度使えばすぐに上がるので低レベル帯でLv2になるというのは破格と言える。

ま、Lv1からすごく長いのでスタートダッシュ的意味合いで終わるだろうが。

 ちなみに、才能スキルはE/O特有のシステム『()()()()』に深く関わっていて詳細は省くけど先天的に習得しているか後天的に確率での自動取得となっていて自分で選択出来ない。


「あ、そうだ」


 遠距離会話をちょっと試してみよう。

誰に掛けるか、長命組よりも短命組の方が良いかな。

『※アーネスト』にでも掛けるかな。

長命組にはついていない※印は遠距離会話で会話すると現在のキャラに置き換わると予想している。

アップデート前のフレンドリストの更新は一度直接会う事で更新される。

その際、更新前のキャラ名に※印が付いていたと記憶している。


『♪~♪~♪~♪、ん、ヴォルトどうした?』

「いや、折角、何の制限もなく使えるんだし試し?みたいな感じで掛けてみた」

『・・・ぇ、誰!?』

「ヴォルトだけど? 元が付くけどね。 今はアキラって名前」

『あ、そか。(女の声でビビったぜ)俺はアリストな』

「アリストね。了解」


 アリストの声も大分若い。

俺が掛けた側なので相手がアーネストだと分かっているがもし逆なら同じ様な反応をしたかも知れない。


『そういや、聞いてるか?』

「何を?」

『ロードグリアード、いや、今はアッシナール教国だったか。

あそこに自宅持っている奴ら大変らしいぜ』

「大変?」

『ログインしたら自宅じゃなくギルドから開始したらしい』

「へぇ~、それってヒューマとかも?」

『いや、ヒューマ、アキレウス、アマゾネス以外の種族だな』

「やっぱ、あのムービーに関連してる訳だね」


 かの国に自宅のあるプレイヤーは、ノンプレイヤーと同じように私財凍結された上に家からも追い出された状態で始まった訳か・・・。

運営にキレて良いんじゃね?


『んで、最初のストーリークエストは国外脱出らしい。

アッシナール教国以外も脱出の協力がクエストになってるらしい』

「て事は、俺・・・ってのは止めておこう。 ボク達低レベル帯はやる事ないんじゃないの?」

『まぁ、そこは低レベル帯用クエストがあるんだな。 これが』

「へぇ~」

『どうせ、この後、傭兵登録しに行くんだろ? ついでに見て来いよ』

「うん、そうするけど・・・、アリストはもう見て来たの?」

『応よっ! てか、その喋り方、中身がヴォルトだと思うと気持ち悪いわ』

「失敬な! 取り合えず見て来るよ。 後ほどまた連絡する」

『分かった。 んじゃな』

「じゃね」


 取り合えず、傭兵登録をしに行って来よう。

俺は二階の部屋を出て廊下に出てその先にある階段から一階へ降りる。

リビングにはソファーに座った状態のヴォルト(ノンプレイヤー)がおり、キッチンには食器を洗っている動作を繰り返すアニエラ(ノンプレイヤー)がいる。

どちらも高性能AIではなく決まった動作パターンを繰り返しているだけの一般AIだ。

ただ、簡単な会話というかキーワードとなる言葉に反応して返答する機能が付いている。

基本的にスキルトレーナーとしての役割が一番大きい。

取り合えず、今習得出来るスキルを学んでおこう。

 俺はリビングへ移動し机を挟んでヴォルト(ノンプレイヤー)に話しかける。


「”お父様”」

「何だ? 娘よ」

「”習得できるスキル”を”知りたい”です」

「そうだな。 今のところ、お前に教えられるのはこれだけだ」


▼習得可能スキル一覧    習得限界数:1

・革具修練

・気配察知

・気配遮断

・回避

・受け流し

・サバイバル

・応急処置


 このラインナップは近接戦闘で必要なスキルを大体網羅しているが習得限界数が1なのでどれか一つを選択しなければならない。

尚、習得限界数は、種族レベルを上げる事で増やす事が出来る。

さて、どれが良いだろうか。

しばらくは、町周辺もしくは比較的安全な街道付近での活動となるだろうから、遠出を前提としたスキルは除外で良いだろう。

となると有力候補は、戦闘面で有効な『回避』、『受け流し』のどちらかだろう。

『回避』は文字通り、攻撃を避けてダメージを受けない為のスキル。

『受け流し』は、攻撃を受けるがダメージを受けない為のスキル。

どちらもタイミングが大事なスキルだが受け流しの方がシビアだ。

ここにはないが同じ系統のスキルとして『弾き返し』というのも存在する。

こちらは《受け流し》よりも一層タイミングがシビアになっている。


「”お父様”、”受け流し”を”教えて”頂けませんか?」

「ふむ、よかろう。 少し待て・・・確認してみろ」

(スキル)


 今度は思考でスキル画面を出してみる。

問題なくスキル画面が出て一般スキルに『受け流し』が出現した。

次は、アニエラにスキルを教えて貰おう。

アニエラは、前時代時に精霊魔法を得意としていた。

アニメ二十四話でシュレンガ要塞の突入時に背後で暴れまわっていた巨大な精霊は彼女が呼び出したものだ。 その辺の描写は尺短縮の為か省かれていた為、予想でしかないけど多分間違いない。

ただアニメではなく実際ゲームの中では彼女の呼び出した二体の巨大な精霊が敵陣を混乱へと陥れていたのは事実だ。


「”お母様”」

「あら何? アキラちゃん」


 十五歳の娘がいるとは思えないほどの若々しい姿のエルフの美女が振り向く。

どう見ても二十代前半だ。


「”習得できるスキル”を”知りたい”です」

「そうね。 アキラちゃんが習得出来そうなものはこのぐらいかな?」


▼習得可能スキル一覧    習得限界数:1

・精霊魔法

・法術

・霊環修練

・触媒修練

・調和


 これまたヴォルトと正反対なラインナップだ。

見事に魔法へ偏っている。

正直、どれも興味があるがこの中で最初に覚えるべきなものはもう決まっている。

「”お母様”、”精霊魔法”を”教えて”頂けませんか?」

「アキラちゃんならそう言うと思ったわ。 ・・・はい、これでどうかしら?」

「・・・ありがとうございます」


 キッチンから離れそのまま玄関へ向かい外へ出る。

自宅から出ると主にプレイヤーの自宅が密集している住宅街に出る。

この住宅街区は都市全体で見ると市庁舎が上と仮定すると丁度左下に位置する。

そして、各区画の導線の様に存在している上下左右に延びる中央大通りがある。

中央大通りが交差する地点が名称そのままの中央広場でその場所に傭兵ギルドがある。

取り合えず、俺はそこへ目指してひたすら歩く。

当然と言えば当然か、新参プレイヤーらしきの姿は一度も見る事なく中央広場へと辿り着く。

やっと、ここでそれっぽいプレイヤーを見る事が出来た。

連絡が取り易くなったからか、一人二人で固まって行動している。

俺はそれを横目で見ながら傭兵ギルドへ入る。


 この都市の傭兵ギルドは、()()()()の中にあるだけに中々大きい。

この規模の大きさだと各首都にあるギルド並と言っても過言ではない。

こういう大きなギルドは色々な施設が入った複合型の場合が多い。

ヴェユスのギルドでは、傭兵ギルド、酒場、宿泊施設、鍛錬場が入っている。

・・・いや、今回のアップデートで共有倉庫もこの施設の中に出来たようだ。

ある一角だけやけに人が集まっているのはそういう事の様だ。

それとは逆の方向にチビッ子達が集まっている一角があるが新参プレイヤー達かな?

臨時ギルド職員っぽいお姉さんを囲んでいるし、うん、多分、それっぽいな。

酒場では、飲んだくれている傭兵達が彼らを見ながら冷やかしているのが見える。

大人げないな、ほんと。

 取り合えず、登録カウンターに並びながら彼らの話を聞いてみよう。


「質問! 大鎌の修練ってどこで覚えられますか?」

「えーと、それは自分達で探してね♪」

「僕達も『八迅』みたく強くなれますか?」

「えーと、努力次第かな?」


 答えを言う訳にもいかず、気安く「なれるよ」とも言えず愛想笑いをしながら新参プレイヤー達に返答している。


「だははは、ガキ共、『八迅』を目指すのは止めとけ」

「そーそ、レイジ・キリサキ程度にしておきなよ」


 これだから、アニメから入ったお子様は・・・と彼らは愚痴を零している。

まぁ、それは致し方ない事ではある。

アニメでは『八迅』をレイジに合わせる様に手の届く範囲のヒーローにまで弱体化してあった。


「なんでだよっ。 おっさん」

「そだそだ!! 先にプレイしているからって偉そうにしやがって!」


 若干、ロールプレイから足を踏み外している発言をする新参くんちゃん達、それを聞いて飲んだくれ傭兵達は大きなため息をする。


「『八迅』はアニメの中の様なヒーローなんかじゃねぇ・・・。 アレは化け物だ・・・」

「そーよ。 あんなの勝てる訳ないじゃない」

「俺なんか要塞内の教会で死んだんだぜ? その後、一度も戦場に出る事なく戦争終わっちまった」


 どうやら、あの傭兵達と戦場で出くわしていたらしい。

とはいえ、俺ではなく他の『八迅』メンバーの可能性が高いな。

彼らの様子を見て新参くんちゃん達は空気を読んだのか違う質問をお姉さんにしていた。


「さて、俺達もクエスト探すか?」

「ええ。 確かストーリークエストあるんだっけ?」

「β以来だよな。 少し楽しみだったりする」

「実はあたいも・・・」


 先ほどまでの飲んだくれ具合がなかったかのように生き生きとした様子で立ち上がる。

彼らは飲んだくれをロールプレイしていた、ただのお節介だったようだ。

とはいえ、あの経験談から当事者なのは間違いないようだ。

彼ら三人は酒場とギルドの間に置かれている掲示板(クエストボード)の前で立ち止まる。


「次の方」

「あ、はい」


 俺の番の様だ。

彼らから目を離し、カウンター向こうにいる受付のお姉さんと対面する。


「では、登録前に引継ぎをしますのでお名前をお願いします」

「アキラ・ローグライトです」

「えーと、ヴォルト・ローグライト様からの引継ぎで宜しいですか?」

「は『え!?』い・・・?」


 なんか周囲から驚いた様な声がしたんだけど・・・?

特にクエストボード前の例の三人には凝視されている・・・気がする。


「え?」

Ⅱがあります。

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