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1.新生アップデート

説明会

「ふぅ・・・なかなか面白かったな」


 俺はアニメどころかもうほとんど見る機会の減ったテレビを眺め余韻に浸った。

全二十四話、エヴォリューションオンライン The Animationは、主人公であるレイジ・キリサキによる冒険と戦争をテーマにした作品だ。

主人公を含めた一部の登場人物以外は、実際にゲーム内にいるプレイヤー達というのが驚きだ。

無論、完全再現ではなくアニメ用に脚色されているがキャラを操っている本人が見て自キャラだと思うぐらいによく出来ている。

ちなみに俺の自キャラはヴォルト・ローグライトまたは暴虐のヴォルトとして最後に大々的に紹介されたキャラだ。

立ち振る舞いや喋り方とか全然違うけれど、装備品や容姿の再現度が高く嬉しい限りだ。

無論、主人公よりあまり活躍させる訳にもいかないので多少弱体化されているがこの程度なら問題ない。


 さて、アニメが終わった訳だが、実は後三時間ほどで四年目がスタートする。

しかも、今回からアニメの影響が出ていて、それに合わせたアップデートがサーバー停止中の今現在行われている。

『新生アップデート』と呼ばれエヴォリューションオンラインの正式タイトルも若干変更を加えられてる。

確か『Re:()volution(ボリューション) Online(オンライン)~新生の章~』で略して『Re/O(レオ)』って感じかな。

まぁ、でも多分今まで通り『Evolution(エボリューション) Online(オンライン)』略して『E/O(イオ)』って呼ぶと思う。

四年目を迎える訳だが、三年目が終わった時点で短命種族は世代交代を必ず行う事になっている為、ヴォルトではなく子供キャラでのプレイとなる。

アニメではちょい役でほとんど出番のなかったアニエラという古代エルフ族のNPCと結婚した為、初代から見て初めての長命キャラでのプレイだ。

短命キャラは時代進行に合わせて子供キャラへ移行しないといけない半面、成長速度が速い。

逆に長命キャラは時代進行時、世代交代するかしないかの選択が出来る上に見た目の変化もほとんどない反面、成長速度が緩やかだ。

短命と長命ではプレイスタイルが全く逆なのだ。

一般的に言われているのが短命がヘビーゲーマー用、長命がライトゲーマー用だ。

短命は一番多いのが六代目から八代目あたりで、長命は二・三代目が多く未だに一代目でプレイしているプレイヤーもいる。

俺の従妹もプレイしているがβテストからずっと今まで一代目でプレイしている。


 正直、流派の方の進化がそろそろ打ち止め――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()――だったので丁度いいかも知れない。

今度は魔法を極めてみようと思う訳だ。

そうそう、これも一般的言われている事なのだが、流派進化は短命種族、魔法研究は長命種族が向いていると言われている。


 話を戻すが子供キャラの性別は選択式ではなく時代が進行した後の初ログイン時に初めて知る事になる。

今回は男女ともに初代と同じアキラという名前にした――()()()()()()()()()()()()()――ので俺のリアル名でもある訳で男であって欲しい。

ちなみに子供キャラの名前以外は、完全にランダム――()()()()()()姿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()姿()()()()――だ。

初代は残念ながら女キャラであった為、ロールプレイに苦労した。

特に一人称をどれにするかが一番の問題だったな。

ロールプレイというのは”役割を演じる”という意味でE/Oでは推奨いや必須になっている。

正直な話、チャットで文字を打つのと実際自分で喋って演じるのはかなり違い戸惑ったものだ。

はてさて、今回から参戦する未成年プレイヤー達はロールプレイ出来るのだろうか。

ま、俺には関係ないけどね。

ちなみに初代から数えてヴォルトまでの男女比は、男4に対して女3である為、案外男になる可能性が大じゃねぇの? と思っている。

逆に割合の少ない女キャラになる可能性もあるか。

正直、性別以外は特に悩んだりしない。

女キャラ用の装備は初代と四代目と六代目で粗方揃っているので改めて用意する必要がない。

俺の事はこんなもので良いだろう。


 『新生アップデート』で追加された要素を改めて確認しよう。

一番大きな事はやはり対象年齢が十八歳以上から十五歳以上に引き下げられた事だろう。

その為、性関係と犯罪関係に色々変更が加えられている。

 十八歳未満のキャラに対する性関係とプレイヤーキルが不可能になっている。

逆に十八歳未満のプレイヤーは、性関係に関するサービスを受けられない。

犯罪プレイの方は非推奨だが、散々の警告の後に一応出来るとの事だ。

つまり、健全なプレイを求められている訳だな。

特に性行為は大人でも中毒者を出している程だし、十八歳未プレイヤーにさせる訳にはいかないだろう。

ちなみに、HMGは十八歳以上でないと購入できないので、十八歳未満はゲームセンターやレジャーホテルなどに設置されているVRポッドと呼ばれるリクライニングチェアー型のVR機器から接続する必要がある。


 正確に何がとは公開されていないが多くのスキルとアイテムが増加しているらしい。

流派や魔法も少しながら追加しているみたいだ。

それ以外には色々と便利機能が追加された。

E/Oの世界観が壊れるという事で意図的になかった機能だ。

例えば、フレンド同士の遠距離会話やメールだ。

フレンド同士の遠距離会話は、ギルドや騎士団に所属した後にある程度の名声と多額の金を支払う事で使えたサービスでこれが最初から無料で何の規制もなく使える。

メールも本来は着くまで距離に応じた時間が必要だったがすぐに到着する上にポストなどが必要なく送信者から受信者に直接届く仕様の様だ。

それだけでなく消費アイテムや金銭のやり取りまで出来るのだから至れり尽くせりだ。

後は公共倉庫機能だろうか。

倉庫とは本来、自宅内倉庫の事で機能は保管するだけであったが、各都市の倉庫に預ければどこからでも取り出しが出来る。

勿論、こちらは預けたレアリティや数などでそれなりの金を支払う必要がある上に維持費も必要なようだ。

正直、既存のプレイヤーにとって温過ぎる機能であるが新参にはこれぐらいが丁度良いのかも知れない。

 後、アニメの影響だな。

『八迅』の二つ名の効果が色々変更になったみたいだ。 

以前はNPCからの好感度と知名度が上昇効果ぐらいしかなかった。

と言ってもアイテムの価格の割引効果やら隠しクエストの受注などそれなりの恩恵があった訳だ。

それに加えて流派スキルにボーナスが追加されたみたいだ。

また、『八迅』本人ではなく、その子供キャラにも反映している所が素晴らしい。

恐らく『八迅』だけでなくイベントなどで運営から特別に与えられた二つ名は全て追加効果があると思って良いだろう。

 次は新生クエスト――()()()()()()()()()()()()()――だろうか。

β時にストーリークエストが存在したが正式になってなくなった。

それが復活するという話だ。

そのストーリークエストはアニメの影響があるらしい。

まぁ、これは新参プレイヤーに対するアプローチみたいなものだろうと思っている。

噂ではこのストーリークエストの結末がアニメ二期に反映するらしいからな。

第二のレイジ・キリサキまたは『八迅』になろうというプレイヤーがたくさんいる事だろう。

俺としては新参くんちゃん達には長命種族でまったりと遊んでほしいところだ。

NPCであるレイジはともかくとして――()()()()()()()()()()()――『八迅』はヘビーもヘビー、廃人を超え廃神レベルだ。

まだ、親の庇護下にある彼らにはそんな道を歩んでもらいたくない。

そもそも『八迅』だってプレイヤーの間で広まっていた『八人の廃神』という蔑称から来ている言葉でそれをロードグリアード・華朝連邦間戦争での活躍を口実に運営が面白がって『八迅』という二つ名を作ってしまったという経緯がある。

つまり、リアルは大事だよっと俺は言いたい訳だ。

あ、俺は良いんだよ。

誰の手も借りず持ち株と貯金を崩して生活しているから。

と、こんなところだろうが、新生クエストについてはこれ以上の情報が開示されていない。


「まだ・・・、時間はあるな」


 何だかんだで楽しみ過ぎて色々考えていたが思ったより時間が経っていない。

後、一時間ほど余っている。

ちょっと『百ちゃんねる』を覗いてみるか・・・。

俺はすぐ横に置いてあるHMGヘッドマウントギアを被り、ベッドで横になってから右側にあるスイットを押す。

するとほんの十数秒で俺の意識はバーチャル空間へと飛んだ。

そこにはE/Oのアイコンの他、百ちゃんねるやブラウザ、メールボックス、それにVRゲームが視線の先に浮いている。

俺は迷わずE/Oのじゃなくて百ちゃんねるのアイコンをタップする。

すると俺がよく巡回するスレッドが空間いっぱいに広がる。

それを見たいスレッドを手で掻き寄せて閲覧する。


 ふむ、・・・ま、あれだ。

新参プレイヤーが沸いてるな~としか言える事がない。

目新しい情報がある訳ないし、特に既存プレイヤーにとって有益なレスが一つもないな。

性関連のサービスを楽しみにしている新参プレイヤーが何人かいるみたいだし、ちゃんと指摘してやれよ、と俺は思う訳だが・・・、あ、されたな。

それにしてE/Oの総合スレ、もうpart3000近くまで出来たんだな。

E/Oをプレイしながら書き込める訳でもないのによくここまで伸びるもんだよな。

ちなみに次に伸びているのが質問スレでpart1800ちょっと、後はpart200行くか行かないかあたりだ。

 3Dゲーム全盛期の頃は、ゲームしながら攻略サイトや百ちゃんねるを見る事が出来た。

しかし、VRゲームが主流の現在は、ゲームしながら他の事が出来なくなった。

当たり前であるが二つのゲーム機もしくは二つのPCを使っての二アカプレイも出来ない。

最も頭が二つに戸籍が二つあるなら可能だろうけど普通の人類では無理だろう。

それにコントローラーやマウスとキーボードを使用してゲームしている訳でなく、自分の思考や身体を使ってプレイしているので当たり前と言えば当たり前なのだ。

それとは別に総合スレや質問スレ以外が伸び悩んでいるのは上述以外にも理由がある。

 一番の理由は、他人が攻略した方法と同じ方法で攻略出来ない事にある。

誰々に会って話を聞く、これだけでもいる時間帯や場所が違うしいない日もある。

下手したら死亡している可能性もあるのがE/Oなのだ。

 二番目の理由として、ノンプレイヤーの頭上にアイコンや名前が出ている訳ではないというのもある。

スキルやノンプレイヤーなどを利用して自分の頭と足で探し出すのが基本となる。

つまり、自分で攻略の糸口を探し出すのが基本という事だ。

ちなみにクエストの過程をすっ飛ばしゴールに直接行ってもクエストをクリアする事が出来ない。

だからか、攻略スレなどでは、こういうクエストがあったぜ的な報告しかないのだ。

それでもE/Oのプレイヤーの大半は、発見したクエストを秘匿しがちなので、攻略スレなどに挙がっているクエストは氷山の一角で大した事のないものが多い。

 

 さて、まだ二十分ほど時間があるな。


「どうするかな・・・」


 そういえば、アキラの種族はハーフエルフになるのは間違いない訳だし、精霊魔法の予習をしておこう。

精霊魔法とはダークエルフを除いたエルフ族(ハーフエルフ、エルフ、ハイエルフ)なら誰でも使える魔法に分類されている。

そして、端的に言えば召喚魔法の事をE/Oでは精霊魔法と言う。

契約場所は固定だけど契約できるかどうかはプレイヤー次第。

精霊名は種族名の様なもので個を表す言葉ではない。

つまり、同精霊でも契約するプレイヤーによって性格の違う精霊と契約する事になる。

精霊にはレベルの概念がなく、最初から最後までレベルMAXみたいなもの。

その代わり、信頼度または親交度というものがあり、その段階毎に力を開放していく。

それに付け加えて同精霊でも若干、習得している魔法が違うらしい。

ちなみに、契約出来る所は公式どころか攻略スレや個人ブログでもほとんど紹介されていない。

召喚できる精霊が精霊魔法を使うプレイヤーの強さに直結するし、おいそれと公開は出来ない。

個人で探し出すか親しくなったフレンドやクラン仲間に教えて貰えっていう話だな。


「おっと、そろそろオープンする時間だな」


 俺は頭上に浮かんでいるE/Oのアイコンを見る。

アイコンの下で時間をカウントしており、オープンまで残り二分ほどだという事が分かる。

3D全盛期と違い回線速度が劇的に速くなっているとは言え、全世界から一斉にログインするので恐らくはすぐに入る事が出来ないだろう。

それでも俺は『00:00:00』とカウントがなった瞬間、E/Oのアイコンをタップした。

ログインどころかカウントの代わりに『キュー:786532人中/356321番目』と表示される。


「・・・うっそだろ? おい」


 あの一瞬で何人が同時にタップしたんだよ。

しかも、一秒毎に千人ずつぐらいのペースで人が増えていっている。

勿論、順番にログインしていっているが明らかに増える人数の方が多い。


「これはログイン出来るまで相当時間が掛かるな」


 俺は凄まじい速度で人数が増えていく数字を見ながら心の無にして眺める事にした。

ログインまで残り15538人

※次回からログイン後の話になります。

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