第五話 手料理対決
俺は店の奥に入った。まず、凛の手料理から食べることにする。皿は無かったのか、焼きそばが入っているカップに盛り付けられていたが、中身は親子丼だった。だが、ただの丼ではなく、焼きそばも刻まれて入っていた。そばめしみたいな感じかな。
「いただきます」
俺は半熟卵がかかった鶏肉にかぶりついた。じゅわーっとした肉汁が口の中で溢れ出し、身体に染み渡っていく。美味い。めっちゃ美味い。
「じゃあ今度はこっちかな。いただきます」
俺はカスミから手料理を受け取る。こちらも焼きそばの入っていたカップに、美味しそうな焼きそばが入っていた。
「カップ麺じゃねぇか!?」
「だって料理とかしたことないッス」
「じゃあまあ今回は凛の勝ちということで、料理係は凛で決定かな」
「くぅー、仕方ないッス」
「毎日私の手料理を食べさせてあげるね、新庄君」
「ありがとう」
その後、焼きそばと親子丼を3人で食べた。多めに作ってくれていたが、3人だし、色々なことがあって疲れたのか、完食してしまった。
一応バリケードを見てみるが、モンスターが侵入してきた形跡は無かった。とりあえずここにいれば安全だと思う。もう夜遅いし、寝るかな。寝床はないけど、まあ雑魚寝でいいだろう。
「え? 雑魚寝? じゃあ私が新庄君の隣に行くね?」
「なっ、私がセンパイの隣ッスよ!」
「俺の隣なら2人とも左右1人ずつでいいんじゃないのか?」
「新庄君がそれでいいなら……」
「わかったッスよ……」
え? 俺なんか変なこと言ったかな? まあいいか。俺だって健全な高校二年生なんだ。1回くらい両脇に女の子がいる状態で寝てみたいとか思ってもいいだろ?
俺は、その辺で寝転がって、寝る体勢に入った。床は硬くて寝るには少し厳しいけど、2人と寝れるなら我慢出来る。だが、2人は俺の予想を超えてきた。まず、凛が俺の左隣に来て、俺のほうを向きながら俺の腕を抱き抱えて眠りについた。そして、カスミはそれに対抗するかのようにおれの右隣のポジションを取り、俺の腕を抱えて眠りについた。
2人の寝顔がとても近い。そして、逃げ場がない。いや、嬉しいんだけどね。嬉しいんだけど寝れないこれ! 凛の寝顔は名前の通りに凛としていて綺麗だし、カスミの寝顔はあどけなさがあって可愛い。2人とも食べちゃいたいくらいに可愛い。いや、変な意味じゃないからね!?
やばいやばい、18禁になるとこだったわ。俺もまだ18になってねぇけどな。
とにかく、寝れないんですよどうしたらいいですか? ねぇ、俺どうしたらいいの? ずっとこの2人の顔眺めとくよ!?
「んんっ、むにゃむにゃ、新庄君……」
はわわわ、可愛すぎかよ!
「新庄君……んっ、好き……」
あー無理、もう無理死んじゃう、キュン死しちゃう。無理無理こんなん無理。もっと寝言ちょうだい。
「んっ、なんで、カスミとかいうやつ殺せないの……むかつく……」
……聞かなかったことにしよう。
それにしても魔王様グッジョブ。3人のうち誰か1人が死んだら2人とも巻き添えっていうルールが無かったら今頃どっちか死んでてもおかしくない。ってか俺が死んでてもおかしくないしな。
でも、俺1人だけじゃなくて本当に良かったな。こいつらがいなかったら俺もう死んでるし。仲間がいれば心が折れても助け合える。
「ありがとうな、2人とも」
誰に聞かれてるわけでもないが、気付けば声に出ていた。
俺はこいつらを守るためにも強くならないとな。
「ドンドンドン!」
何の音だ!?
「ガシャーン!」
まさか……あの音はバリケードに立てておいた傘立ての……。
「凛、カスミ、すまない、起きてくれ!」
「んっ、どうしたの新庄君?」
「どうしたッスかー、センパーイ」
「バリケードが破られた可能性が高い」
俺達はゆっくりと出入口の方に行く、ふと時計を見ると、夜中4時だった。こんな時間まで起きてたのか俺……。そして、出入口の近くには虎のようなモンスターがいた。そのモンスターは店内を暴れ回っていた。