第十一話 魔王様からのメッセージ
息が……出来ない……なんだこれ……。
「あっ、新、君、おは」
「センパ、やっ、目覚た、ッス」
かすれるような薄い声で、誰かが俺を呼んでいた。
「新庄君?」
「センパイ、大丈夫ッスか?」
あっ、息が出来るようになってる……。
俺は目をゆっくりと開いた。すると、カスミと凛が俺の上に覆いかぶさっていた。
「おはよう二人共、ちょっと……どいてくれ」
「あっ、ごめんね新庄君」
「センパイごめんなさいッス」
うーん……なんか身体がだるいな……え!? 唇が濡れてる!?
「どっちか俺が寝てる間にキスしただろ?」
「あっ、えっ、バレちゃった?」
「ごめんなさいッス、両方ッス」
「だからもうそろそろ止めておこうって言ってたのに」
「ね……お前だってやってたじゃないッスか!」
「なんかお前ら仲良くなってないか?」
「なってないわよ!」
「なってるわけないッス!」
いやー、仲良いね。前より良くなってる気がする。頭くらくらしてるからあんまりわからないけど。
「とにかく、俺が寝てる間なんか変わったこと無かったか?」
「ええ多分」
「どのくらいの時間が経ったんだ?」
「えーっと……」
「覚えてないッス」
なんでだよ!? えーっと時計時計……あった。うわっ、三時間しか経ってなかった。なんか三日くらい眠ってたのかと思ったぜ。いやまあたしかに今考えたら、そんなに時間経ってたら二人共覚えてるか。
《魔王様からメッセージが届きました》
うお!? なんだ?
俺はマッドレイブを開いた。すると、メッセージの所に赤い丸がついてあり、通知が一件あるよとお知らせしてくれているようだった。
「なんか魔王からメッセージ来たから読むわ」
「え? あのよくわかんないやつから?」
「いつも思うけどなんでそんなに魔王に対して強気なの……まあいいや、読み上げるよ?」
「わかったッス」
「我は魔王、偉大なる神に選ばれた最強にして最高の……ここはとばすとして、えーっと、自慢長いな!?」
「低俗ッスね」
「えーっと、つまり? おめでとう、報酬としてスキルの覚え方を教えてやろうってことらしい」
「スキルの覚え方書いてるの?」
「うん。二つあるっぽいな。一つ目は修行して出すって書いてある」
「修行って具体的には?」
「いやっ、書いてない」
「無能ね」
「二つ目はなにッスか?」
「特定のモンスターを倒したら獲得出来るピースをマッドレイブにスキャンすれば出来るらしい」
「カタカナ多いわね」
「まあ異世界ってカタカナ多いイメージあるし、普通なんじゃないか?」
それより、なんかわりと希望が見えてきたな。修行でスキル獲得出来るなら、俺にもなんとかなるかもしれない。というか、とりあえずスキルを習得しないと何も出来ない気がするし。
ふとマッドレイブに視線を落とすと、召喚可能モンスターの欄にも、通知が来ていた。どういうことなんだろうと、開いてみると、《ゾンビ》と書いてあった。
えっ、マジか。俺止め刺してないよな。ということは、攻撃さえしておいたら自分で倒した判定になるのか? なんにせよ、絶対使えるよなこれ。
「いでよゾンビ!」
さっき戦ったゾンビが現れた。蚊とかと比べてなんて強そうなんだ。めっちゃ気持ち悪いけど。
「えっ、新庄君、それなに!?」
「ちょっ、キモいッス!」
「えっ、いやごめんなんか召喚出来るようになってたから」
「それ使うの禁止ね!」
「……わかりました」
俺はゾンビを引っ込めた。せっかくちょっとは戦力になるかと思ったのに……いや、これ無理だ。十秒くらいしか召喚してないのにもう息切れが激しい……。
はぁはぁ。もう召喚とかやめよう。なんかスキル取って強くなるんだ!
「二人共、修行とやらをしないか?」
「どうやってやるの?」
「イメージでもあるッスか?」
「いや、なんもないけどさ。考えようぜ」
「……わかったわよ」
「任せろッス!」
頼もしいな二人共。やっぱ持つべきものは仲間だぜ。
そして一時間後、完全に手詰まりになっていました。
「魔法撃ちまくってもなにもスキル取れそうにないし……しんどい……」
「こっちも剣を振ったところで意味なさそうッス!」
「俺も蹴り技的なのやろうとしてるけど脚すら上がらない……」
そもそもの修行の方法が間違ってるのか、それとももっと実戦をしないといけないのか、単に修行の時間が少ないだけなのかすらわからない。俺達は先の見えない状態でこれ以上意味のあるかもわからない修行は出来なかった。
「とりあえず……ご飯食べましょうか」