舞い戻る創造主
「久しぶり……いや、お主にとっては数分ぶりかの」
「あ、アウラ様!お身体の方は……」
「特に何もなっておらん、所であの人はどうした?」
男について訪ねようとしたところ、その目的の彼もすぐに現れた。
……まぁ確かに壁を無くせば事が終わったように見えるかの。全く終わってないんじゃがな。
「アウラ様、これは一体……というのと終わった、のですか」
「全く終わっとらん。敵は内側じゃ、壁は今更不要、それにことごとく厄介な奴が相手じゃな、それと……まぁよい、ここじゃあれじゃ。言いたいことは尽きぬでの……」
ここでは安全とは言い難い、ミノスとも別れることになるが向こう側からいくらでも干渉できる、どうということはない。
「ではアウラ様、一旦向こうへ……」
「うぬ、あぁ君は先に行っててくれ、後で追いつくでな。ジュノー、お主は着いていって先に待っとれ」
「……あぁ、わかりましたよ」
男とジュノーがその場からふと消える。その場には【守護者】が二柱と神様一柱が残される。ことがひと段落付いたからかアウラの瞳の光も元に戻る。
「私は今の話のとおり戻るが……そうじゃなミノス、お主には色々面倒をかけたのう、連れ回して結局まともな経験ひとつ与えられんかったな」
「い、いえそんなことは……」
急に改められて驚きを隠せないミノスであるがその言葉を聞くにありきたりな謙遜が出るほどの余裕はあったようじゃ。
「そう言うでない、むしろお主がなんと言おうとお主の力量が全てを示しているからの……でナグモであったか、お主は特に……言うことは無いな、全体的な力不足は個々に言うものでもあるまい。それにお主の管轄には物理的に強いのがおるからな、あれはまぁ六割ぐらい頼っても大丈夫じゃろ」
「は、はぁ……わかりました」
二人への言葉は全くもって飾っていない、まぁこんな連れ回すだけ連れ回してはい、さよならというのは申し訳なさもあるが……力不足のままに連れていくことも宜しくない。
「……まぁ我らがこの程度で別れになるわけではあるまいて、どうせすぐにまた会うじゃろ……それじゃあの」
「ま、また会えた時はお願いします……」
何かを噛み締めるような声を聞きながらアウラは場を後にする。
「たわけ、我らに寿命は無きに等しいぞ、だからお主は未熟なのじゃ」
◇
アウラにとっては久方の研究室、男にとっては数分ぶりの研究室。
「で、じゃ。これがことの顛末と今後の予定じゃな、にしても面倒なのに引き立ったのう」
戦闘時の緊迫感を感じさせない笑い方ができる、それは一つの安全を得たという意味でもあり、アウラにとってはその程度の緊急性に過ぎないという意味である。
「そんなに面倒な相手なので?」
「まぁ面倒じゃ、まとわりついてくるし細々とした嫌がらせなんか当たり前のようにしてくるやつじゃな」
他にも……とアウラが過去例をあげ続けていたが聞いているだけで頭が痛くなってくるようなものばかりであった。
「……それを神様は以前相手したと……【守護者】だけで守れるものなんですかね……?」
「まぁなんとか……なってたかもしれんな」
急に思い当たる節に巡ったらしく、考え込んでしまった、神様はちょくちょくこのようなことをする。何かあるのだろう。
「……あぁ、そうであった。【守護者】の事で一つ話があってな?」
そうだ、あの時に思ったことを今ここで果たしてしまおうかの……ここで解決してしまえば多少力不足な彼らの問題は解決するじゃろうからの。
「ん?彼らに不備でもありましたかな」
「不備もなにも足りなさ過ぎるんじゃよ、お主の主要なのしか見ておらんかった私にも責任があるが末端の【守護者】に関しては弱すぎじゃ、移動すらままならない奴もおったし、人に入れこみすぎる奴もおる、これでは力ある住人と大差ないではないか……というわけでな?ちょっとお主の作った【守護者】、皆テコ入れせぬか?というわけじゃ」
「……例えば?……と聞くまでもないですね。神様、私は恐れながらそれが出来ないので代わりにやっていただいても?」
……まぁお主は私の世界の住人じゃからな。できなくて当然か……と言いたいが重要なことが抜けていた以上知りませんでしたで終わるわけにはいかないんじゃがの。
「まぁ……やったことがなければ無理よな、ほれ……これでいいじゃろ」
光球に手をかざしアウラの瞳が軽く光を帯びればすぐに世界の【守護者】の能力が書き変わる。
……だれがどうであったかにかかわらずこれで必要な能力は皆一様に得ることができたはずじゃ。自在移動に限らず必要そうな能力を彼らに足していく、これでもうあの牛頭のようなことになって鍛えるなんてことは起きないのう……少しばかりつまらなくも思うがまぁこの手はすぐに実行するにこしたことはないじゃろ。