ジュノー
「んーそうだね……まぁ何とか僕一人でもできると思うよ……ただ僕にもつくらせておくれよ、前はやらせてくれなかっただろう?」
微笑む姿はやはりこの前役目を終え、遂に別れた【守護者】。アウラの世界で長い間役目をはたしてきたジュノーその人であった。経験と言いながら流し込んだのはその一番の功労者本人の記憶であった。
「あの時はどうなるか分からんかったからのう」
「まぁ、そうだね、ところで******、また随分と雰囲気が変わったね……この世界は前に話していた所なんだろうけど」
品を見定めるようにアウラの周りを回ったり触ったりしている。過去のアウラを知っている彼女にとっては非常に物珍しい様だ。確かにこの姿になるのは男に出会った後の話であって少なくとも向こうではただのヒトに近い形の存在だったのだから当然だろう。
「そうじゃろ?可愛いじゃろう?文化をあの時潰そうとしなくて本当に良かったと思っておるよ……あと今はアウラと言う、その名前でもお主なら構わぬが……」
「まさか、君がそんなことを言うようになるなんてねぇ……ん?」
アウラに触っているうちになにかに気がついたようで胸を確かめるように執拗にペタペタしている。
「ん?ゴミでも付いておったか?」
「……君は性別をどっちにしたんだい……?」
「どっちって……男じゃが……」
「は?!」
ジュノーが目を丸くして吹き出した。偶然アウラをはさんで彼女の視線の先にあった岩が爆ぜた。
「……た、ただ可愛らしくなっただけだと思っていたんだけど……何がどうしてそんなところまで……」
「なんじゃ。可愛いから良いじゃろ?」
「ま、まぁ君は元々性別なんて無かったからね……ただその格好で男は誤解されかねないぞ……」
ジュノは君は何も変わらないねとボヤきながら呆れていた。
◇
さて、再会はここまでにしておこう。
どうやら僕はまた【守護者】として作られた様だ。
ついこの前役目を終え寿命を迎えられたというのにあんまりだ。
それもあるがもう一つある、あの時「もうゆっくり僕は休ませてもらうよ」なんて言ったのにすぐに仕事とは神使いが荒いにも程があるんじゃないかな。いくら緊急とは言え他にも何人か候補はいただろう……
そして何より言いたい事があるのはこの見た目だ。身体は悪くない、悪くはないんだけど瞳が宜しくない。なんだこの破壊の片目は、僕は元々絶対防御の蒼い瞳と千里眼である金色の瞳だったのに、全くもって正反対の性質じゃないか。
「で、 ******。要するに仕事だろう?……それに隣の彼も【守護者】みたいだけど……」
「そうじゃ、前回みたいに適当で大丈夫じゃから任せてもいいかの、隣のは……」
何故か隣で小さくなっている牛頭の男がいる。一応【守護者】のだとは感じるのだが……弱い。
「……隣のこやつは感情のまま襲ってきたから一度たたきつぶした所じゃった、ほれお主、新しい【守護者】じゃぞ」
「あ……えと……私、凄い弱い【守護者】」
「私を襲った時の威勢はどうした」
「そんなもの、なくなった」
……きっとあの人のことだ殺すのに目の前に出るなんてぐらいの事言いながら瞬殺でもしたんだろう。まぁ力がない程度、道具をばらまく仕事にはなんの影響もない。
それに住人が欲しがるような【神器】や【宝具】を生み出すのは僕と ******でやればいい。
「……まぁそこの弱い【守護者】君は置いといて ******、もう始めてもいいのかい?」
「ええぞ、あ、あとその瞳じゃがな、何が現れるかわからん、容赦なく使うのじゃぞ……私が誇る最強の盾を取ってまでつけたんじゃからな」
「……僕はそのまま盾の方がうれしいんだけどなぁ」
しかしわざわざそうしたといわれると使ってみたくなるものである。何か手ごろなものはないかと付近に目をやれば丁度人一人分ほどの瓦礫が転がっていたので睨むように軽く力を籠めてそれを見つめれば瞬く間に粉になった。
……やはり前の方がいいと思う。
「まぁまぁ不満なのはわかるがそう言うでない……必要になるときがくるからそうしたんじゃ、許してくれんかの。で、じゃ、今からばらまきに行くからちとついてまいれ」
顔に出ていたらしい、特にそれ以上詰められることはなかったが逆にそれ以後一切話になることはなかった。
◇
「ええか?まだここでは生物に対しての干渉はこれだけじゃ。直接乗り込んできたなんてのは起きておらん。加えてお前たち【守護者】に対してはちょくちょく介入が続いている……そういうのに対応するのが今から用意する道具たちじゃ」
アウラの説明が少々長引いたころ、牛頭の【守護者】がふいに思うことがあったらしい。
「あ、アウラ様……もしかして【神器】、【宝具】を使うだけならば我々だけでも可能なのか?」
「……使うというか……そうじゃな……お守りみたいなものじゃ、力に頼らずとも外部から守ることはこういう改変を直接してくる輩に対しては有用じゃからな」
「な、なるほど……し、して私の役目はそれをほかの【守護者】に渡すこと、と」
「そうじゃ。お主人型の癖してその頭の見た目じゃからな、住人に流すには【獣人】相手にしか補整がないからの……それにジュノーがおるからそっちに任せた方が隠したり紛れ込ませるのは慣れておる。そこは失敗を恐れんでええ」
こうしてアウラ一派による【神器】と【宝具】のばらまきが始まった。
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