歪みは世界を超えて
どういう事だ、少なくとも神様の付近でそのような事間違っても起こすわけがない。
それにこのようなことを起こせば関連する【守護者】が報告の一つや二つ挙げてくるところなのにそれもない。
慌てて世界樹側を覗いてみればそこには爆発で地面が構造物ごと凸凹になり世界樹すら燃え上がっているという惨事が広がっていた。住人から見れば間違いなくこの世の地獄だ。
先ずは状況把握と世界が自壊しないように維持しなくてはならない。急いで主要な【守護者】に現状報告の指示を飛ばす。するとまずは魔力の【守護者】が研究室に現れた。しかしながらあのストッパーとして圧倒的なな力を奮った面影はなくところどころ身体のパーツが吹き飛んでいた。
「お前は無事……では無さそうだな、何があった」
「主よ、主の仕業でなければそれと同列の所業でございます。明らかに世界を弄ってから干渉してくる存在です。アウラ様が他の【守護者】と修正と世界維持をしていますがアウラ様が生身のため力尽きれば……そこまでかと」
話を続けるとどうやらいきなり世界で様々なものが異様な爆ぜ方をしたらしい。
アウラのいた学園では……あの人形が爆ぜた様だ。
「急に発生したために我々【守護者】も爆発の無効化までは間に合わず……しかも今も干渉が続いてる様で……【守護者】何人かが消されました……」
「トール、誰が消えたのかリストアップを」
「かしこまりました」
消えた【守護者】は早急に造らねばなるまい、しかしアウラが対応しているということは原因を含めて過去に経験があるのだろうか?
「マキナ、神様は何が原因か言っていたか?」
「間違っても戻ってくるなとしか……それもかなり強い口調で……」
「そうか……とりあえずマキナ、バックアップと改変箇所を参照、修正してくれ」
「了解しました」
以前と同じように修正をかけようとしたマキナだったがすぐに動作を停止した。
「……おとーさん、これ修正出来ない……修正しようにも構造が変わりすぎてて一から作るのと変わらなくなってるわ……」
「ん?それは一体……」
男も言われてどういう事だと確認しようとしてみる。そしてマキナのいう意味がわかった。
これまで世界の構造は至ってシンプルで構造を覗けば簡単に思うようにリストアップから具体的な事象監視まですぐに出来ていた、それは男にとってはまさに理想のインターフェースであったのだが……今はそこに至るまでに明らかな壁が幾重にも連なっているのだ。これでマキナはどこを基準に修正すればいいのかわからなくなってしまったということらしい。
……このまるで殻のような壁自体はあの神様が作ったものなのかそれとも違う存在によるものなのかはわからないがとりあえず外側から弄ることができないのだけは確かなようだ。手だし出来ずにいると非常にさらにまずい事態に進展しているのに気が付いた、時間が微妙に自分たち以外の手で進められているのだ。
時間を進めるというのはただ放置してその時が来るまで待つというわけではない。その進めている間に手を出せば進化、歴史を弄ったとしても実際に何十年と時が進んだように世界では処理されるために世界の住人たちは違和感をなく活動することができるというものだ。逆に言えば他人がそれを行えば自在に生物の来歴を弄ることができる……つまり今おそらくその時間の改変の中で何が起きているかと考えれば間違いなく住人への改変が起きているだろうということだ。
◇
それは突然轟音と共に起きた、授業中のことである。
アウラにも何の音かははっきりとわかる、それが何かのいたずらでないこともすぐにわかった。生徒の中にはパニックを起こす者もでる。なにせ急に連続した爆発音があたりに響き煙を噴き上げているのだ、ただ事ではない。
「な、なにごとじゃ!?……生徒諸君、落ち着くのじゃ!とりあえず窓から離れて壁に寄れい!」
「アウラ様、僕が状況を確認に行ってまいります。生徒を」
「うぬ、頼むぞ……なにか嫌な予感がするんじゃよ」
そういって教室からラスティナが駆けだしていく。
それからしばらくの事だ、学園内部でひときわ大きな爆発が起きたのは。
アウラが音の方を振り向けば窓を突き破っていくつもの残骸が飛んでくる、それをアウラは教師として生徒の前に立ち防いだ。
……がしかし故に一番恐ろしいものを見てしまった。
「なっ!?」
「あ、アウラ様今戻っては……!」
飛んできたのはただの残骸ではなかった、明らかにラスティナの素体とは別に仕込んだパーツの一部だったのだ。まさか自分の作った人形が爆弾になってしまったなどという余りの衝撃にアウラは人であることをやめて元に戻ってしまったのだ、むしろこれが救いとなった。生徒は爆発の恐怖でアウラの変化にはまだ気が付いていないようではあるがこの異常時にそうはいっていられない。
この変化は先ほどの驚きとはうって変わってアウラに冷静さを取り戻させた。
「おっと……やってしまったかの……マキナ、あの創造主にお主の仕業か、と聞くのじゃ。そうでなければ絶対にもどってくるではないぞ?」
「え、あの……それはどういう……」
「お前の主に代わって私がここで守ってやるということじゃ。ほれ、ちょっと目くらましも用意してやるからここから早くいくのじゃ」
そう言ってほぼ強制的にマキナを向こう側へと送り出す。
――ここからは久々の大仕事じゃな。
もし相手が同じ同列の存在であるならばこれは技術目当てでもなければただ私やあの創造主を恨んで狙ったようなものではない、ただただ破壊を楽しむような一番相手にしたくない奴じゃ。
まずはあまりにも無防備であった世界を厳重なものにせねばなるまい……感覚ではこれは【守護者】数柱はもうすでに亡き者にされている。外からこの壁を越えて根幹を叩きなおしてくれるまでは私がどうにかしてやろう……