修行、遊び、実践 ①
「……よし、準備はいいね?覚えるって貴方が言った以上容赦しないよ?」
「は、はい!」
周囲に人は誰もいない、ここでレヴィアが教えるために放つ魔法程度ならば何かあっても直ぐに見られることはないだろう。
「じゃあまずは魔法についての認識を改めることだね、魔法はどんな力だと思ってる?」
「何も無いとこで何かを作ったり……触らずにものを動かしたり……」
「……違うね、今からとあることを見せるからそこから考えて見るんだ」
レヴィアが片手をかざすとその周囲の空間に色がついた。その色がついた空間は意思を持ったように動き回りまるでレヴィアの手から龍が伸びるように自在に動いている。
「綺麗……」
「……どうだい、分かった?」
「え、えーと……レヴィアさんから蛇が生えてるように見えます……」
「……駄目だね、じゃあやり方を変えるよ、私の剣を出して頂戴」
レヴィアと少女の間にはそれなりに距離があるがレヴィア差し出された剣を先ほどの龍のように操る魔力でそのまま掴んで振り回し始めた。
「わぁ…!」
「どう?これならわかるでしょ」
流石にこれなら……と期待の目で少女を見るが……
「手が伸びてますね……」
「あは、は……ま、まぁそういう見え方もたしかにあるね……まぁ正解にしよう」
苦笑いが零れた。
確かに伸ばした魔力の先で更に何かを掴んだり、そこから詠唱したり出来るのであながち間違いとは言えないのだ。
「いい?別に魔法でものを動かす時別に物に触れてない訳じゃないの、こうやって普段なら見えないけど対象と術者は繋がってるんだよ。今から覚えようとしてるのはこのイメージがなきゃ駄目。いい?イメージ出来なくなったら何度でも見せてあげるけど最終的には自力でいつでもイメージできるようにして」
「はい!」
「返事はいい子だねぇ……で次に貴方はまず魔法を使ったことが無いに等しいから私がやってる方法で教えてあげよう……でもこれだけは約束して、これはこの世界じゃ普通じゃないの、人に言われても変えちゃ駄目だしどこで教わったか教えても駄目、いいね?」
「……は、はい……?」
少女は理由をはっきり分かっていないようだがこれにはかなりイメージの話と同じぐらい意味があるのだ。
「あのクソ上司も含めて【魔法使い】はみんな詠唱してるよね?」
「え、ええ」
「本来あれは不要なんだ。だからほかの人に言われて詠唱しなきゃいけないなんて思っちゃ駄目。どんなに大層な理由があっても従ったら駄目。君はそういう所でまだ教えを受けてないから私から受けたことだけを守るんだ」
「は、はぁ……?」
まだ当人は納得していないようだが問題ない。守ってくれさえすれば何とかなる。むしろ変に一度覚えた感覚はなかなか消しにくい、まだ覚えていないうちにちゃんとした感覚が植え付けられればいいのだ。
「まぁそのうちわかるよ。さて本題、色つけてゆっくりやるからよく見ておくんだ」
そういう所レヴィアと尾ひれと地面の間に色がつく、実は常に少しだけ浮いてたわけだ。
「レヴィアさん常に浮いてたんですね」
「そうだよ、だって鱗剥がれちゃうし土とか付くと傷んじゃうもの、本当なら地上にすらいたくないんだよ?油も飛んじゃうし……」
「あー……なるほど……?」
「っと話がずれた……で浮かせればあとはこう……魔力で地面を蹴るようにすれば……」
スイーッと、ね……とここまで来て私は気がついた、一気に教えて出来るわけがないという当然の事実を。
確かに目標が直結している方がやる気には繋がるのだが実の所この移動法はかなり難しい部類……そもそも魔力を器用な手先からではなく足裏から出すこと、さらにその魔力で自重を支え続けるだけの力が必要なこと、最後にその支えている状態に加えて前に進むために常時地面を蹴るために追加で魔力を進みたい方向へ常に出力しなくてはならないこと……精度と力を要求するため簡単なことではないからね。
「んー……そうだねぇ……まずは私が君の操る魔力に色をつけてあげるから最初に見せたみたいに動かせるようになろうか、まず手を出しなさいな」
「こうですか?」
「そうそう……で手のひらに触れている空気を押し出すのをイメージして?」
……私も初めはこんな感じだったなぁ……
あの時は姫様に色々教わったよ……でもこの子は上限は高いし限界的に扱えないという問題はないはずだからちゃんと身につければ……
「んぬぬぬっ……お?で、できた?」
「いいね、試しにそれの先端を思うように動かしてみなさいな、イメージはそうねぇ……先端を今のあなたの手だと思ってそれを向かわせたいところへ動かす感じでどうかしら?」
「んーと……」
そう言われると少女は手を動かしてしまって魔力の紐の方は動かない。
「本物の手じゃないよ……あ、ちょっと後ろから失礼」
「ひえっ?!レヴィアさん冷たい!」
「ほらほら集中が切れてしまうよ、別に初めてじゃないしそもそも君も女の子でしょうが……ほら手を貸して」
少女の手の甲を包むようにしてそこから魔力を顕現させる、感覚はそのまま少女に伝わり少女の手を通してレヴィアの魔力が流れ出ている状況になる。
「レヴィアさんは冷たいけどこっちは暖かいですね」
「私の体温じゃなくて、その手先の感覚をよく覚えるんだよ?今度はこれを私なしでやるんだから……」
「はーい……」
まだ少女はこの感覚を楽しんでいるから……これが続けばいいんだけど……
レヴィアの口調がアスタリアと入れ替わっていた事に27日の朝に気が付きましてここ数話に渡って改稿しました。
レヴィアの印象が固定されてしまった読者には非常に申し訳ありません、内容自体は一切変わらないので改稿したら再度見ていただけるとありがたいです。