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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第5節 厄災編
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アウレリアの思惑

「情報は集まらないのか!?」

「そ、そう言われましても困ります!伝承が正しいかどうかしか我々には……」

「それでいい!それでいいから裏取りを急いでくれ!」


――アウレリア首都、城内


 その城内は戦争をしているというのに不気味にも落ち着いていた。

ここには一人の【魔法使い】と城の【騎士】が何人も話し込んでいる様だが、彼らも同じように落ち着いては……おらず必死にある情報を集めてようとしている。


「……戦争集結前までにあの力を我がものにしなくては……」

「あの時は見栄を張りましたが必ずや現実に」


そうして【騎士】らが部屋から戻ろうとした時、小さな伝令が駆け込んできた。


「し、失礼します!」

「貴様、魔導師殿の前で無礼だぞ、改めよ!」

「まぁよい、それに値する報告なんだろうな……?さもなくば……」


 魔法陣がその伝令の足元に設置された。


「し、城の件でございます! 裏が取れました! か、確実に宝具が存在します!」

「……どこで裏をとった?」


 まさか、こんな少女が一体どこでなどという中【魔法使い】は真面目な顔で話を確認する。

 

「つ、使いを走らせて奥地で見つけてまいりました……隠密のできる使いなので戦闘を避け……」


 次第に彼女の声が細々しくなる、【魔法使い】は段々と顔が暗くなり目に疑いの色が見え始めた。


「その使いとやら、信用できるか?」

「こ、こちらに呼べば宜しいでしょうか?」

「……さっさと呼べ!」


 痺れを切らしたのかついに【魔法使い】が声を荒らげる、慌てて少女は使いを呼び出そうと背負っていた剣を取り出す。

その剣は不思議なデザインをしているが到底物を斬れるようには見えない、装飾用か――と周囲の騎士が呆れてみていれば剣から白肌の人魚がけだるそうに出てきた。


「んー……眠いんだけどどうしたの?」

「れ、レヴィアさーん……魔導師様が呼べって……」

「あ? あのクソ上司が私に何だってのよ。私は奥まで探索させられて疲れてるの。……殴ればいい?」


 見る見るうちに彼女の顔が青くなる。逆に【魔法使い】の顔は見る見るうちに赤くなった。


「待って!レヴィアさん本人の前ですって!」

「知るわけないでしょ! 私はあんなところ久々に歩いて疲れてるの!」

「事実確認したいだけらしいですからお願いしますよ……」


 泣く泣く少女に言われたので渋々剣に引っ込むのを辞める。

 怒りをグッと抑えて【魔法使い】はレヴィアに問う。


「おい、人魚、お前が見たのは事実なんだろうな?」

「そうだよ、確かにあの最深部手前にあるね。普通に取りに行くならかなり大変だけど」


 さも私は取りに行きませんと遠まわしに宣言するレヴィアに【魔法使い】はやはり苛立ちがこみ上げてくる。こちらがどんな気をして血眼になってあの龍神を手中に引き込もうとしているのかまったくわかっていないではないかと。


「おい、取りに行きませんって宣言してるみたいじゃないか、見たんだから取りに行けるだろう?」

「嫌だね、あの剣は私達触れないようになってるし、あなた達世界に本来いる人たちじゃないと触れないんだよ」


 私は一人なら隠密で行けるけど他人を運んでは出来ないしね、と言われて【魔法使い】は引かざるを得ない、重々あの城の魔物のような四角い奴らは挑んだ者が皆これまでとは段違いに強いと言っているからだ。


「……そこに行くにはどれ位強い必要がある?」

「そうだねぇ、同じのを三人、いや四人並べて私に勝てるぐらいかね? ……って私の強さを知らないんだったね。んー……君たち仮にも【騎士】でしょ?ちょっとかかっておいで」


 そういって周囲で呆然とレヴィアのことを見ていた騎士たちに斬りかかってくるように炊き付ける。

彼らは少なくとも近衛兵になるほどの腕はあるのだ、来いと言われて本来なら笑って流す程度だが……


「……いいんじゃない? あなたたちちょっと悪いけど戦ってもらえる? 手加減はなしでいいわ。」

「は、はぁ……では失礼します。我らとて誇りがありますから、手は抜きたくありません、よろしいですね?」

「えぇ……じゃあこのままっていうのも君らに失礼だ。ちゃんとした武器で戦わないと」


 少女が背負っていた剣を取り上げて軽く一撫ですると見る見るうちにその剣が本性を現し、刃であるべき部分に透過度のある光が刃のように差し込む。元より刀身など見えていなかったのだ。


「……君らには防具をつけていないから心配だろうけど特に気にせず殺すつもりでかかってきていいよ?」

「……では。」


 彼女はすでに人々が踏破していないところまで城奥地まで踏み込める、その時点で一切の油断はできない、小手調べは不要。そう判断した一人目の騎士は初めから敵兵を殺すのと同じように首、多少ずれても肩に斬りこめるように横からやや斜めに斬りこんだ。


「いい狙い……でも根本的に速さがたりないねっ!」

「……っ?!」


……刹那、彼女が消えた。いや動いたのだ、斬りかかった側とは逆側に回り込むようにして騎士の背後、息が当たるか当たらないかの距離まで寄り、その剣先を騎士の首筋に迷うことなく当てた、一人目の騎士は動けば首に刃が当たるか当たらないかで自分の勝利を諦めた。


「……ま、参った。」

「キミ、狙いはいいから鍛えれば何とかなるんじゃない? まぁ……身体が耐えられるかはわからないけど……次、ちょっと面倒だから一斉においで。一対多数をやったことがないわけじゃないでしょ?」


 そういうと騎士が数人レヴィアを囲うようにして剣を構え彼女に斬りかかる。さすがに全方位からなら……と騎士も考えたがすぐに裏切られることとなった。


「ほらほら、全方位から斬れば大丈夫なんて思うならこうすればいいんだ……よっ!」


 【魔法使い】は目を疑った。姿勢を低くしたと思えばそのまま円を描くように剣を振り上げたのだ、ただ振り上げただけなのに……振り上げただけで屈強な、かつ鎧を着て重量のあるはずの騎士が数名吹き飛んだのだ。一人は自分に向かって飛んできたのでかわした。


「まぁこれで魔法を使ってないんだけど、これに数人で勝てるぐらいじゃないといけないかな。理解してもらえた?」

「…………」


 【魔法使い】はただただ誰一人として力不足でしかない現実を受け入れるしかなかった。

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