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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第5節 厄災編
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【厄災】が暴れても世界が滅びない理由

 人の身体をもらってから早数日。

 【厄災】はあることを疑問に抱きながら世界中に現れ、たびたび恐怖を与えていた。

 与えられた使命を淡々とこなしていく、我はこの為に作られたからか特に嫌悪もなければ義務感もなく、不思議とやめようとは思わない。

 目の前に現れるだけで放たれる威圧感は度々戦線を狂わせ逃亡兵を作る、実に力のないことが憐れだ。


「し、将軍、【厄災】が!」

「よりによってこんな時に……【魔法使い】を使ってこちらに寄せるな!」

「魔術隊、目標を【厄災】に、放てっー!」


 むしろ逃げ惑うを見るよりこのように挑んでくるのはいい心がけだ。

 しかしながら我より効率が良く器用な身体を生まれつき持っているのだからもう少し高度な魔法が使えてもおかしくないだろうにこの程度とは……残念である。

 確かに素の魔力量は我とは大幅に違う、しかしより効率化すれば少ない消費で撃つこともできるではないか。


 そのまま過ぎ去ろうと思っていたが気が変わった、我に挑む心意気に応じて目に見える全てを滅ぼしてやろう。



「……心意気だけであったか。」


 目に見える生き残りは始めの頃の一割といったところか、このまま放置しても良いが戦場事消してしまえばその方が恐れるだろうからこのまま消して……


 戦場を巨大な魔法陣が幾重にも重なって包み込む、生き残りの何割かは諦めたのか立ち止まってしまった。まぁよい、このまま……

 とその時発動させていた魔法陣がガラスが割れたように壊れた。


「……使命によりこれ以上はこの場での行動を制限します。」

「……貴様は誰だ、我を止められる以上同列の存在と見受ける。」


 壊したのは人のカタチに似ているようで異なる存在らしい、これが我の使命を果たすべき相手だろうか。

 【厄災】は内心喜んでいた、ここの住人の姿ではないが我を超えられるかもしれない存在がいることに。

 

「あなたが殺しすぎないようにする【守護者】が一柱、あなたにある割合より減らされると強者の生まれる効率が悪くなる。だからそのストッパー。」

「……ちっ、いくら暴れてもってのはこういうことかよ……」


 非常に残念だ、という感想とともに無性に苛立ちがこみ上げてくる。

 これが使命を無理やり妨害されているからなのか、それとも同等の力の相手と戦えないことがわかったからかはわからない。いくら暴れても大丈夫という理由が分からなかった我も我だがこの苛立ちを目の前の存在にぶつけてみたくなった。


「……わかって頂けたなら引いて欲しいのですが?」

「……断る、と言えば?」

「一時的にあなたを潰して再び生成してもらいます。我々【守護者】は世界が滅びぬように維持する存在、貴方のような存在を根絶やしにはしたくありませんが度がすぎれば容赦することは何もありません。これが最後です、引きなさい。」


 恐らく使命を考えれば引くのが正しい、しかし現状我と戦えるのはこいつらしかいない。

 使命を果たす果たさないよりも植え付けられた戦うことへの欲がこれまでただただ蹂躙に終わりもどかしくさせていた彼に反動のように襲いかかり、その勢いはそのまま【守護者】へと牙を向いた。



 研究室にて【厄災】を眺める男がいる。


「人が滅ぶからと働くのをやめ、人が滅ぼせないからと【守護者】に仕掛ける、どこで設計を間違えたかな。」


 久々にコーヒーを飲む。

 世界にはまだこのような飲み物は出回っていないので飲むのは創造が使いたい放題のこの空間に限られる。男の視線の先の映像では【厄災】がマクシスの守護神となった魔力の【守護者】が戦闘を繰り広げている。


「よりによって一番血の気が荒いのに目をつけられたようですな。」

「まぁ前例がなかった分アレには色々と大盤振る舞いしたからな……まさにあれは武神みたいなものだろう。」


 今【厄災】とやり合っている【守護者】は男がアウラに尋ねる前に作った者の一人、構造、仕様含めてマキナやトールのほぼ互換だ。

 後に同じ仕様にしたのは魔力、四素とステータスにまつわるの【守護者】のみ、そこが弄られると他のところにまで影響が一挙に及ぶためかなり強力な権限を与えた。


「ところで創造主様、【厄災】の処遇はいかがなさいますか?少なくとも【守護者】との不和は今後もあるかと……」

「だが使命を破ったわけではないからな、むしろこれを見た国の住人は守護神にあやかって色々と始めてくれるだろう、とりあえず周辺が壊れないように他の【守護者】を付けておこう、戦闘はやらせておけ。」

「は、はぁ……分かりました。」


 この戦いはどう考えても【守護者】が勝利する、これを機に【厄災】も多少弁えて使命を果てしてくれればそれでいいだろう。



「くっそ……願ってもない程バケモンじゃねえか……」

「それはどういたしまして。今更褒めても何も緩ませる手がありませんが。」


 さらっと言いやがって……余裕ですってわけか……正直魔法主軸で戦ってたなら一切の勝ち目はなかった。まず魔法陣を配置しようものならたちまち消し飛ぶ、無力化だけならまだしも自分に向かって飛んでくるように改竄される時すらある。かといって魔法陣を使わずに魔法をぶつけようとしてみれば相手に振れるか触れないかのところですべて霧散する。ここで肉弾戦に持ち込めばいいかと思いきやまったくもってびくともしない、本来殴れば少なくとも殴った部分がへこんだり、吹き飛んだりするものだがそれが一切ない。

 

こちらの攻撃が通ってる様子はほぼないが相手はそもそも攻撃をしてこないのがさらに苛立つ、これならいっそのこと一瞬で葬ってくれた方がまだ強者に負けたと認められるがここまで舐められるとそうはならない。

……せめて一発殴らないと気が済まん。


「……そろそろ終わりにしましょう。創造主がお待ちですから。」

「あ?そりゃどういう……っ?!」


 急に場の空気と流れが変わったと思えば、周囲から魔法陣もなく速攻で魔法が飛んでくる、幻覚でも見ているのではと思うほどだ。ただ負けるわけにはいかないのでここで殴るために【守護者】へ急接近を図る。


――【厄災】の意識はここで途切れた。


「ほら、起きたまえ。君はまだ使命を終えていないだろう?」

「くそったれ……なんだってんだ。こちとらあの【守護者】を殴れなかったんで……って……チッ、創造主か。」

「私がいくらやっても滅びないといった理由がわかったろう?」

「ああ……くそったれって感じだ。我じゃなくてあれにやらせればいいだろうが……」

「あれはあくまで守り手だからな。破壊はお前の仕事だ。」


……この世界はくそったれだ。破壊の使命はいつまでも続くというのにあるタイミングで強制的に妨害が入る、呼吸をしようとしているのを無理やり口をふさがれるような感覚に毎回陥らなければならないからだ。

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