【Another】魔導装甲技術の出現
――ある時研究室にて
「おとーさんおかえりなさい。……?疲れたような顔をして何かありましたか?」
「……なんというか【魔族】は幸せそうな大家族になってたよ。」
創造主が複数いると言われた時に大変なのでその意味合いが強いがルルイエたちと彼女を合わせてみるのもいいだろう。
「まぁ、とてもおもしろそうな方々ですわね。あ、おとーさん、飛空艇の一件から気になったからもう一方でも似たようなものがないか探してみたの。」
「ほう?何かあったかい?」
二人の眼前に現れるもはや違和感も新鮮さも感じにくくなった光球。慣れしまうと実に味気なく感じてしまうがかなり画期的なものである。
「で……えーっと……これですわ。この人型のです。」
「ほう……」
いつの間に自立兵器をと思いつつよく見てみれば鎧の様なものらしく中に人が入っている。
さらに構造をよく調べてみれば機関の原理的に飛空艇と違いは少なく、より小型化したものを複数搭載しているようだ。
小型化した機関で鎧を着ることで発生する鈍化を軽減し、より硬く、強く出来るというところだろうか……
「ところでマキナ、これはどこで見られた?戦争でも始まったか?」
「ちょくちょく国境帯になったところで資源地帯の取り合いに。恐らく戦争の体を成しているものならこれまでにかなりの数ありましたわ」
戦争は当事者から見れば領土をとった取られた、生命が消えた云々があるがこれを創造した側から見るとただ生命淘汰が発生したに過ぎない。それが世界を消し去るものならともかく、国家間程度の規模であれば技術発展に繋がるため頻発にとは言わないが一定間隔を持って発生する方が創造主的には好ましい。
「おとーさんもこれは観察でいいでしょう?これまでもあった事ですから」
「そうだね。手出しは不要だ」
それにしても魔法を込みにした戦争というのは実に興味深い。
科学技術が低い頃から大量破壊、空爆などの芸当がかなり古くから当然となる。さらに言えばこちら側の世界は【魔法使い】は皆が皆好きになれる様にはなっていない。
【魔法使い】になれない者は物理的に装甲を厚くし彼らの死角を狙い物量で潰す、戦中において一度形勢が崩れると詠唱を正確に続けるにはそれだけの技量が必要なためその乱れた隙を突く、【魔法使い】に防壁を作らせ突入する等々……様々な魔法を織り交ぜた作戦や対策が作られる。
そしてあの鎧もその一つだろう。
魔法具だけで術式が完結したものであれば【魔法使い】である必要は無い、出来るだけ融点の高い鉱物で装甲を作り火炎魔法、弓、剣を物理的に耐え、燃料となる魔力の限りその機関の出力を持って敵を蹂躙するという発想だ。
世界樹側が【魔法使い】作るの道具によって万人が魔法に対抗できるならばこちらは技術によって魔法を使えない人々が【魔法使い】に対抗するという形になったようだ。
「マキナ、あの鎧は無敵だと思うかい?」
「んー……そうですね、鎧の形をしている分弱点がわかりやすい気もしますわ、それにちょっとお高くつきそうですね」
なるほど……面白い着眼点だ。
まずユニットコストだ。見たところ恐らくオリハルコンとはいかずともそれに準ずるものだろう、当然コストは高い。
次に少なくともいつかは物理的に破壊される。
矢、剣撃、火炎魔法を初めとする攻撃には耐えられても機関をピンポイントで破壊されたり【魔法使い】に技術があればだが一種の徹甲弾、高速で鋭利なものを飛ばすなどすれば中身の人間が死ぬ、操作が一人であればその操作手が死ねばユニットは死に体になるのだ。
しかしそれでも新兵器が並べば当然猛威を振るう、彼らが剣を振るうだけでも生身の歩兵は簡単に死ぬ、中には故障などで動作を停止する鎧もあるが一機でも動けば敵には恐怖を植え付け、兵士を敵前逃亡へ導く。
【魔法使い】も当然鎧は着ているが魔法を扱う都合で可動部が多くその分装甲としては薄くなる、通常の歩兵が死ぬのならばより薄い彼らは言うまでもない、そして【魔法使い】の死亡は戦線に混乱をもたらす。そして魔法がなければ勢いをつけた歩兵が流れ込むわけで……
「あれが今度は皆に広まっていくんでしょうか?」
「あぁ、そうだ。色々な転用、応用を受けながら発展するだろう。今度はあれを着た【魔法使い】も出るかもしれないね……実に興味深い。
――この住人同士の戦争は実に面白い。未知を開拓するのはもちろんだがそれを誘導していくのもまた一興の余地がある。