七魔七様 ②
一応文中で省略した部分がありますが特に問題なく読めると思います(あとがきに省略したステータス部も載せました
レヴィアと呼ばれた人魚の様な白肌の女性が落ち着く間にはほかの五人も形成が終わっておりそれぞれ呆れたように見ていたり涙ぐんでいたり……と、それとなく彼らがルルイエのためとメビウスと戦い敗れていったのだろうと見当がついた。
「姫ぇ……ご無事でしたか……ひぐっ……」
「はいはい、泣かないの。もう大丈夫よね?あなたがこうだとアスタリアも泣き出してしまいそうよ?」
「レヴィアだけずるいわ!わたくしだって……」
こうして見るとルルイエがいかに【魔王】として慕われていた、というより愛されていたのかが分かる。
何人かはメビウスの事に殺気立っているが既にグスタフが立ってそばに居るということで手は出さなかった。
「……レヴィア殿、姫との再開を喜ぶ前に目の前の宿敵から姫を守るべきではありませんか?」
「なんだよルシウス、せっかく姫と感動の再会だってのに水を……っ?!前言撤回……どうして君がここにいる?グスタフ様、隣にいるなら説明して!」
レヴィアがルルイエとメビウスの間に入るように剣を構える、グスタフとは違い獲物は一本の剣……ただの剣ではなく恐らく業物の類だろう。
先ほどほぼ同じような事をしたグスタフは腰の武器から手を離して冷静に説明した。
「まぁ落ち着け。……自分が何をしでかしたか理解した【勇者】は死ねないので我らの召喚と再興を持って償うという事だ。とりあえず恨みは後で個々にやっておけ、私はもう既にやった。……とりあえずお前達は武器を下ろして新しい創造主に挨拶しておくべきだろう?」
「あ、新しい……?」
そう言って周囲を見回した時にもう一人の男がどういうものかに気が付きそのままルルイエを見返す。
「……ダメだったって訳ね。」
「そうね、ここは新しい世界よ。で、あの人がその創造主様。」
レヴィアが品定めするかのように男を見回して一言。
「……創造主?……ちょっと一戦挑んでもいいかしら?」
「ん?私は戦いをするような創造主では無いのだが……」
「ちえっ、姫のステータス弄ってるなら強いと思ったのに。」
そう残念そうにつぶやくと剣を正面に掲げて名乗りあげた。
「……私がレヴィアタン、剣に憑く吸血鬼の第三魔将軍。」
先ほどと違いどこか人見知りの様な感じに言われた、いまいち信頼されていないのかもしれない。レヴィアに続いて先ほど彼女に釣られて泣きそうになっていた青肌の女性も続いて名乗り始めた。
「これは私も言うべき所みたいね。わたくしが第七魔将軍、アスタリア。夢に生き夢を喰らう【魔族】です。以後お見知りおきを。」
その青肌のアスタリアは非常に妖艶で、夢を喰うとは言っているが要するにサキュバスの類なのかもしれない、見てみれば周囲の女性より露出度は高めだ、そんなことを思っていれば目線に気が付かれたようで大げさにに恥ずかしがられてしまった。
「きゃーっ、初対面の殿方に見られてしまいましたわ、お恥ずかしい!」
「おっと、済まないそんなつもりは……」
アスタリアは近場の大盾手に取り、それを前にして隠れた……と思えばその盾が喋り出した。
「……ボクが第四魔将軍、アイギス。【魔王】様を助けてくれたこと、感謝……」
「はい、よく言えました。こうやって出番を渡さないとアイギスったら喋らないんですもの。あ、彼女は死神の系統なんですよ。」
大盾自体大の大人を覆えるサイズだったのだが、アスタリアに呼ばれると後ろからそれより小さく不思議な立体感のない翼の生えた少年……いや娘が顔を覗かせた。
どうやら彼女なりの親切だったらしいがその出番の渡し方は私の人格が疑われるのでやめてほしいと言わざるを得なかった。
「仲間のためなのは分かったがアスタリアだったかな、私の人格が疑われかねないからできれば次はやめてほしい。」
「あら?申し訳ありません、前の創造主にもこれをやっていたのでつい……」
「……アスタリア、はしゃぐのは結構だがそろそろ我々も紹介させてもらえないだろうか……?」
呆れた様な顔をするのはこれまで黙って待っていた男一同。今の今までメビウスの警戒だけをし彼女たちがはしゃいでるのを特に問題はないと判断してそのまま懐かしそうに見ていたのが大半である。おそらくグスタフが近場にいるというだけでここまで決断しているのだろうがどうも見ている側としては緊張感に欠ける。
「あら……そうでした、ごめんなさいねはしゃいでしまって。」
「……まぁ気持ちはわからんでもないからな……それでは残りの若い番号から紹介させていただきます。私がルシウス。」
「んで、俺がマイモン、信仰を糧に力を維持している。で、こっちのデカいのがミニョル。俺以外の男共は自分で魔力を創れるから特に供給は困らないやつらだ……それにしても姫さんが無事でな……ああ……本当によかった……本当に……」
気性の荒そうな外見に反してそのまま目じりが赤くなっていく、それを仲間が笑ったり励ましたり……ルルイエも再会を大いに喜んでいるように見える。
メビウスも見ていて何か思うところがあったのだろう、グスタフに一言告げると部屋から出て行った。
色々話し込んでいて一見すると異種族のにぎやかなコミュニティであるこの様な光景を見ていると正直なところ彼らが皆元【魔王】だとは思えないのが男の本音である……が彼らの再会に水を差すのも忍びない……ので少し手荒ではあるが彼らのステータスを軽く見ることにしよう。よくよく考えればルルイエやメビウスのステータスは彼らの改変後に見た。これは要するに生の異世界のデータということになる。
まずは試しにMPSPHPあたりまでを見てみよう。
『グスタフ・シャイターン ♂ 999999歳』
『【竜人】Lv120/120【魔族】Lv100/100 MP 10/60000 SP 5890/15800 HP 60000/60000 HealingTime 34000』
『ガンデヴァ・ルシウス ♂ 0歳』
『【堕天使】Lv2/3【魔族】Lv100/100――
◇
なんというかステータスも見た目に違わず個性的であった、一般的な人間が二桁ばかりなステータスなのを考えてみればさすが元【魔王】であるといえるだろうか。
……それよりも0歳というのはどういうことだろうか、マキナやトールでもあるまい。
おそらくその当事者の一人であるルシウスならわかるだろうと思い、丁度彼が周囲を見ているだけだったので水を差さないようにこっそりそ彼に話を振った。
「なぁ君たち、0歳っていうのはどういうことだ?」
「あ、それは私を含めた何人か、ですね。【勇者】と戦う時に【転生】しまして……幽体の時は年齢加算がされないのでそうなっています。」
「【転生】すると何か利点があるのか?」
するとルシウスが他の面子を眺めたのちに何かを考える素振りをしてから説明してくれた。
「おそらく全員のステータスを見られたと思いますが、その場でレベルキャップが伸びるんですよ。私含めてレベルにまだ伸びしろがあったでしょう?デメリットは所持魔力と全快までに時間がかかってしまうこと他にもありますが姫のためとなりふり構わず使った輩が多かったのです。」
「なるほど……」
「まぁそれでも我々は誰一人として勝てなかったわけですが……グスタフ様が勝てなかった時点でなんとなく察してはいましたが……私もあとで個人的にけじめをつけておきましょうかね……何事もないのが我々にとって幸福ですから。あ、ミニョルだけちょっと違うかもしれません、彼はあの外見で死神の類ですから……」
どうやら今まで男と一度も会話をしていないミニョルという薄暗い外套に包まれて浮遊している男は死神でおそらく【勇者】の命をもってルルイエへの償いにするかもしれないので気を付けてくれと忠告を受けた。一見マイモンを慰めたりアイギスに肩に乗せていたり、ルルイエが周囲と笑いながら話してるのを楽しそうにしているようにしか見えないのだが……
――一瞬だけ光が覗いたその顔の上半分を隠す何かの頭蓋骨のような仮面の下の瞳には誰も気が付かなかった。
長ったらしいのでカットした各魔将軍のステータスです。
『グスタフ・シャイターン ♂ 999999歳』
『【竜人】Lv120/120【魔族】Lv100/100 MP 10/60000 SP 5890/15800 HP 60000/60000 HealingTime 34000』
『ガンデヴァ・ルシウス ♂ 0歳』
『【堕天使】Lv2/3【魔族】Lv100/100 MP 3500/3500 SP 4000/4000 HP 58000/58000 HealingTime 60000』
『レヴィアタン ♀ 8013歳』
『【魚人】Lv60/60【魔族】Lv100/100 MP 3500/3500 SP 500/500 HP 25000/25000 HealingTime 45000』
『アイギス・ベルフェゴール ♀ 586歳』
『【不死】Lv4/5【魔族】MP 9000/9000 SP 8000/8000 HP 200000/200000 HealingTime 700000』
『フラウ・マイモン ♂ 0歳』
『【獣人】Lv88/90【魔族】Lv100/100 MP 600/600 SP 8000/8000 HP 32000/32000 HealingTime 45000』
『ミニョル・ベーゼ ♂ 0歳』
『【暴君】Lv9/10【魔族】Lv100/100 MP 900/900 SP 8000/8000 HP 28000/28000 HealingTime 7000』
『アスタリア・グ―ル ♀ 0歳』
『【夢魔】Lv98/100 MP1200/1200 SP 600/600 HP100/100 HealingTime 40』