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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第4節 神様教師編
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魔将軍グスタフ

 一瞬にして緊迫した空気が現場に張り詰める。

 その容姿は竜人、とでも形容するべきだろうか、全身が固い装甲のようなものでおおわれており人のような肌は見えない、体格も人間より一回り大きく、腕も4本あることに加え尻尾まで見える。

 まさに異形の戦士という言葉が似あうだろう。

 剣を突き付けた側もつきつけられた側も一言も発しず、召喚したルルイエも意外なほどに冷静に見える……まるで全て予測してたかのようだった。


「グスタフ、剣を納めなさい。」

「しかし、姫様、こやつは……」

「今は大丈夫です。現にこの空間で魔法を行使できるのは私だけですわ。貴方ならわかるでしょう?」


 そう言ってグスタフと呼ばれたその【魔族】は彼に突き立てようとしていた4本の剣の内の3本を下した。


「……姫様の言うことを疑うわけではございませんが、仮にもこやつは我々を全滅させた元凶。幾ら姫様の言うこととはいえ……」

「……彼に名前をもらったといえば納得いきますか?逆に彼に名前を授けたとも言っておきましょうか。」

「なっ……?!」


……どうやら彼らの世界では名前というのはかなり大きな意味を持っているようだ、ルルイエからそう言われたことで彼は最後の剣を首筋から離した。

 剣を離した後、おもむろにルルイエの前へと進んでいき、彼女の前に剣をおいて跪いた。


「……姫様、此度は真に申し訳ありませんでした。我らが魔王軍、火の粉を振り払うどころか、民を守護することすら出来ず……」

「グスタフ、表を上げなさい……あの後私は何一つ守れませんでした、それは私にも責任があります。貴方一人が背負うものではありません。」

「し、しかし一人の将として……」


 そこまで言ったところでいまだに顔を上げずにいるグスタフの前へかがみ、彼の肩へ手を伸ばしながら


「……あなたはいつもそう、たしかに責任は我々率いる者が背負うもの。しかし背負うだけでいいものではないでしょう?……今その【勇者】はただただ現実を知らずに戦い続けた償いをしようとしています。私も消えること以外で、今再びここに魔界を創ることでその償いをしようとしています……協力してくれますね?」


 そう耳元でつぶやきながら少しだけ微笑む。

 男から見るとそのルルイエの動きは明らかにこれまでとは違いまさに王としての貫禄がその端々から垣間見える。

 グスタフから離れると今度はこちらへ歩いて来た。


「……彼が私の世界での……一応ナンバー2の一人目?でしょうか。」

「一人目……何人もいるのですか?」

「グスタフ、自己紹介も兼ねてお願いできますか?彼はこの新しい世界の創造主様ですので無礼の無きよう。」


 新しい創造主という言葉に一瞬グスタフは反応を示したがすぐにそれがどういう意味か察したのだろう、

すぐにあることに気が付いた。


「……やはりここは別の世界でございますか。」

「……そうですね。」


 やはりそうでしたかと申し訳なさそうにつぶやいていた、違う世界ということは何かしらがあって元の世界から離れたということだ。

 その後こちらを向いてルルイエにしたように膝をついた。


「では改めて、紹介に預かりました、第1魔将軍のグスタフと申す。姫様をこのように丁重に扱っていただけたことほかの者に代わってお礼を申し上げます。私のほかにあと8人ほど同列の存在がおります。」

「かつての世界と同じように君たちを保護するための世界とはいかないがよろしく頼む。ここは君たちの空間だ、特にほかの世界に訪れたりする分には問題ないが荒事はまだ控えてくれ。ようこそ、私の世界へ。」


 そういうと彼はそのままメビウスの方を向き先ほどとは違う――明らかな殺気を交えつつ彼に問うた。

 既に彼の手は腰に差しなおした剣を握っており既に戦闘態勢であることを示している。


「……先ほど姫様に名前を付けたといったな。【勇者】自身の口から今ここにいる事の次第をお聞きしたい、場合によっては私の意思で……切り伏せる。」

「グフタス、おやめなさい。」

「姫様、これは私のけじめでございます。止めないでいただきたい。」


 そう言ってメビウスの方を向いて改めて問い直す、一方メビウスはまっすぐと見つめているだけだったがしばらくすると


「僕は全てを殺したあとに彼女に気づかされたんだ。僕がただ生まれた当初の印象で善悪を決定していた、それがすべてではないということに疑いを持つべきだった……僕はそれを君たちに謝らなければならない、許されるとは思っていないけど、そうしなくてはならないと思った。」

「…………まったくもってくだらん。そういう心のままでいられるあたりやはりお前は人の皮を被った化け物だ。仮にもしお前が姫様も手にかけていたならば何度斬っても足りぬほどだ。やはり……切り伏せるべきか。」


 剣を握る手に力が入っていくのを見ていたのだろう、ルルイエは二人の間に割り込んで行こうとするがこれではそのまま斬られてしまうのではないかと男が対応しようとしたときにはすでに事が終わっていた、ルルイエが斬られたわけでもグスタフが斬らなかったでもない、彼女が瞬間的に魔力を流し込んでグスタフの剣をはじいたのだ。


「グスタフ、言いたいことはわかりますがあなたを呼び出すにあたって彼に魔力の大半を肩代わりさせました。私一人では足りません、ここで余計に魔力消費をさせられるのは私にとっても困ります。」

「しかし姫様、だからと言って名前まで付けさせるとは一体どういう……」

「……話の途中ですまないが名前を付けることの重大さがどういうものなのか教えてくれないか?理由によっては彼ではなく私が答えるべきだろう。」


 確かに名前を付けたのはメビウスだが名前を付けるように要求したのは男であった。

 彼らがここまでする以上何か彼らに大きな意味があるのならば私はそれを無視したことになる。


「そうですわね……私はもともと【魔王】でした、それはご存知かと思います。彼は私のような紙に作られた存在ではありませんが……おじさま、いえグスタフも元【魔王】です。」


 剣を弾かれたグスタフは諦めたようで剣をそのまましまいため息を吐きつつ答えた。


「うむ……姫様の元へ来るまではまた違う世界で【魔王】をしておった。今の名前を姫様から頂くまではただの【魔王】でございます。」

「実は創造主様には言っていませんでしたが……私の世界では名前をもらうということはその者に使え今の立場が消えるということですわ。……まぁ私の場合は相互に名付けましたしそもそも世界が違いますから、郷に入っては郷に従え、ということですわ。」

「え、えっとちょっといいかな……?」


 口を開いたのはメビウスだ、先ほどグスタフに襲われたがまだルルイエのおかげで傷という傷はついていなかった。


「……もしかして僕が名前を付け合うっていう提案を受け入れたのは非常にまずかった……?」

「……姫様。やはり1回斬らさせてはいただけませぬか?……けじめというより姫様を侮辱されているようでたまりませぬ。」

「え、えっと……それでいいなら1回ぐらいなら……どうせ死なないし……」

「では……」


 そう言って再び剣を構える、正直【勇者】は死んでしまっても計画に問題はないのだが、一応荒事は困るという体裁をとるために男は慌てたふりをしつつメビウスの状態を確認してルルイエに確認を取った。


「大丈夫なのか……?」

「これで事がこれ以上荒立たないのであればそれでいいと思いますわ、もし死んでしまっても私がいる限り大丈夫ですし……何よりおじさまがあのように私のためと言ってくださいましたし、二度も止めたのにここまで言うのですからもう斬らせてしまった方が早いと思いまして。二人目三人目と呼ぶのに一人目の問題が残っていては大変ですわ。」


 そう言ってほほ笑む彼女の目はなぜか光が消え、闇に吸い込まれるような色をしていた。

 グスタフが一回と言いながらメビウスが死なないというのが事実だとわかるとそのまま続けると言い出し結局彼が剣を収めたのはメビウスの形が保てなくなったころだった。


――これでも死んでいないというのだからどれだけ彼が世界を滅ぼすのに特化した性能でつくられたかがよくわかる。 


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