ステータスをいじろう
「おとーさんのバカあっ!もう知らない!」
「お、おい待ってくれ何をしたって……」
「そんなものまで実装するなんて!今すぐ消して!今すぐ!」
父親です。どうやら娘として見られたくない項目を可視化してしまったようだ……
顔を真っ赤にしたマキナに思いっきりいま叩かれている、痛い、主に心が。
「ま、待ってくれ、消すってどの項目だ……」
「身長!体重!あとB、W、Hも!身体データは全部よ!……というかマキナにもやらせて、まだありそう。」
そう言ってマキナに簡単にやり方を説明する、魔法とは別のスキル側なので詠唱や魔力操作が必要な訳では無い。
「うぅ……やっぱり……おとーさん、何でこんな細かいところまで……趣味?」
「断じて違う。物事の有り様を見せる機能として実装したんだ、そこまで表示されるとは思わなかったんだ……」
実装した機能は物事の有り様を数値で見せるという機能だ、恐らく人をここと特定出来る条件として身体データまで出てしまったのだろう。名前と年齢ぐらいだと思っていたが読みが甘かったようだ……
「ところでBWHってなんだ?」
「……体重と同じぐらい教えたくないものです。」
「……何となくわかった。消そう。……とりあえず帰ってからだ。」
流石に街中で【オリジン】を止めるわけにはいかない。
……何でもかんでも表示は出来ないなと思いつつ宿に入った。
「……でだ。これで出るのは身体データ以外……まぁ見た目以外にその人を示すものしか出ないはずだ。」
「これで変なことには使わせなくてすみますわそう……そう言えばおとーさん、【オリジン】じゃない時にこれを使うとどうなるのですか?」
「……使ってみるか。」
丁度今は人目も気にしなくていいし、【オリジン】でも無い。そう言って何気なく男自身のステータスを開示してみると……
『- ♂64歳 (Developer)』
『【創造主】Lv -/- MP-/- SP-/- HP-/- 』
「……ん?こんなふうになるようには指定してないのだが……」
「おとーさん、でべろーぱー?って何でしょう?」
「デベロッパー、な。開発者って事だから間違いでは無いのだが……普通に神様とはならないのか……?」
ここまで来て予想とは異なる結果が出力されたことに驚きである。
モノの有り様を表示する以上恐らくステータス側はあってるということだが……
「後でアウラ様にも試してみたらいいんじゃないかしら?」
「確かに、どうせ後で落ち合うしなぁ……」
彼女も扱う世界は違えど同じ創造主、結果的には同じものになるはずだ、とそこに丁度トールが帰ってきた。
「創造主様、先に戻っておられましたか……して、何をなさっていたので?」
「お、お前にも試してみようか。実は【鑑定】を実装しててな、その調整という訳だ。」
トールもやはり興味は示してくれた、取り消そうとは言わなかったので安心だ。
『トール ♂ 0歳』
『【オリジン】Lv -/-【ドワーフ】Lv 50/50 MP-/- SP-/- HP7000/7000 HealingTime 0』
『スキル: 創造 改変 遮断 鉱物専門知識 』
『状態: 世界の理の影響下』
『取得技術【鍛冶師】【執事】』
「ほう、【鍛冶師】はこうでるのか……」
「創造主様、私の年齢は一体……」
……やはりトールも年齢は気にするのか、そういう点は意外だ。
「稼働してからの時間だから気にしないでくれ。マキナも一緒だった。」
「なるほど、そうでございましたか。」
マキナも一緒という時点で作られたからというのを理解したようだ……しかし彼らが降り立った時に不意に【鑑定】された時に不便だ、なにか対策をねらなければならないだろう。
トールのステータスを見たマキナがあることに気がついたらしく。
「おとーさん、トールは【ドワーフ】って付いてたけどマキナにはどうして無いのですか?」
ん?確かに言われてみればそうだ、普通に最初は孫として作ったのが影響しているのだろうか。
「なにか欲しいのがあったら好きにつけていいぞ……ただ付けすぎないようにな。」
「【創造主の娘】……とか……」
「またなんと直接的な……マキナ様?せめて【神の子】ぐらいにぼかして置いた方がいいのでは?見られたら困りますよ。」
トール、せめてマキナを止めて欲しかった。
……結局マキナのステータスに【神の子】が付け足された。
◇
――研究室にて
「おうおう、君はやっぱり【鑑定】を実装してたかのう。」
「神様気づいてたんですか?」
「こっちでも気がついたやつがおったぞ?」
アウラの方でも早くも存在に気づいた人がいるようだ、やはり偶然とは恐ろしいものだ。
「……じゃがのう?流石にあの項目はセクハラじゃと思うんじゃが……」
「あの項目というと……BWH……でしたか?」
「……君はいきなり人にスリーサイズを見られる女子の気持ちを考えた方がいいと思うんじゃよ?当然消したよのう?私も見られてしまって恥ずかしやら大変やら……」
そう言ってあえてオーバーに恥ずかしがって見せるアウラ。
それを苦笑いで謝りつつ彼女のステータスを【鑑定】で表示させてみる。
『アウル・オーラ - 999999歳 Developer』
『【創造主】Lv -/- MP -/- SP -/- HP 53000/530000 HealingTime 0』
『スキル: 万物創造 改変 影響無視 【錬成】』
『適性技術: 【魔法使い(四素)】【星操術師】【錬成師】』
やはりアウラにもDeveloperがついている、どうやら実装でのミスではなく本当にそういう存在があるということらしい。
しかしそんなことよりも目につくことがあった。
「……神様?いろいろ勝手に【】付き増やしましたね……?しかも変な読み仮名まで……」
「な、なんのことかのう……?私はちょーっとだけ適正技術を細かくしただけじゃよ……?」
明らかにこの増えた適正技術の原因は彼女だ。
さすがに理由もなしに勝手に改変するのはいくら神様の我儘でもギリギリの範疇であり、最悪巻き戻しもありうる。まずは彼女を問い詰めるところから始めたのだが思いのほか早く口を割った。
「……どうして私に聞かずに弄ったんですか。内容次第では巻き戻しですよ。」
「君のノートにあったからいいかと思って……」
いつの間にノートを見たのだろう、ノート自体は見ても構わないものだが少なくともアウラが見てた覚えはない……のだが続きを聞くと大まかな筋が見えてきた。
「……ルルイエの話を聞いたら面白いほど細かくてな……君のノートにもいくつか被るのがあったからちょっとなら大丈夫だと思ったんじゃ……でな?【魔法使い】一つとってもその技術や知識で全くの別ものじゃって言われてな?……君は種族もその理由で分けてるから大丈夫じゃろうって……」
「考えが飛躍しすぎです。神様らしくない……何かほかにも原因がありますね?」
そういうとアウラがぎょっとしたようにたじろいだ、どうやら図星だったようだ。
「……か……」
「……か?」
「……か、かっこいい……美しいって大事じゃろ……?」
神様は魔法開発に毒され過ぎたのかもしれない、ノートを書いた当時を考えればとても重要なことには変わりないのだが人として降りているのときの感性のまま弄ったようだ。
……さすがに気が引けるが今回ばかりは何か罰でも制約でも設けようかと思う、それと神様を炊きつけたルルイエも調査したほうがいいかもしれない……部外者はやはり手放しにはできないのだろうか。