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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第3節 神様人化編
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リミッター

 アウラが風呂に入ることを覚えてからしばらく、彼女は遂に錬成への糸口を掴み今まさにその成果として浴槽を作ろうとしていた。


「フッフッフ……いよいよ家で風呂に入れるのう……」


 そう言ってアウラは不敵な笑みを浮かべる、ここまで風呂を気に入り、家に浴槽を置くことだけに錬成を開発したと言っても過言ではないような欲望にまみれた神様がいたであろうか。

 少なくとも隣に立っているユラは知らない。


「遂に錬成が完成したと聞いて楽しみにしておったんじゃが……まさかその最初の成果をこれで示すとはのう……」

「まぁよく見ておくのじゃ。作ろうとしているものは私の趣味じゃがそれにつぎ込む技術は本物じゃぞ?」


 ほれ、始めるぞと詠唱を始める。


『我世界に代わりて、万物を生み出す――』


 すると床から浴槽が生えるように構成されていく、ユラは詠唱が根本から違うことに驚いたがその後浴槽が作られていく様に言葉を奪われてしまった。

 確かに目の前で無から物質が作られているのだ、何かを加工している訳では無い。

 原理を考えているうちにアウラが口を開いた。


「……見ての通りこれが錬成じゃ……ユラには開発に至る経緯は喋れんがこれを広めて欲しくてのう?」

「今度はアウラ様の名前を出しますかの……アウラ様は今は一人の【魔法使い】ですからの。」


 前はユラの成果に書き換えられてしまったが2度もそんなことをするつもりはない、加えて今の彼女は神様ではない、つまりは神の啓示でないならただの成果の押し付けとなってしまうのでユラとしても引き受けたくはなかった。


「うぬ、そのつもりで今は生身じゃ。それとな?……実はこれには制限をつけてあってのう……」


 アウラの表情が一変する、制限というのはかなり大事なことらしい。


「……制限ですか?」

「……うぬ、本来の錬成は特に新しいことはしておらぬ。割合を決めた素を無理やりと魔力で混ぜ込んで現界させているだけじゃ。この世のものは割合さえ分かればなんでも作れる、要するに本来なら……」

「生命も作れる、と」


 生命も作れる、これはユラにとっては大きな問題である、彼は平和の為に誰も彼もが力を持つことで均衡を保とうとした。

 しかし生命も作れる錬成は兵士だろうと割合が分かれば作れてしまう、作った命を即戦場へ送り込むなど倫理的にもどうかと思われるがそれ以上に作る人数が多いほど数的差を作ってしまうのだ。

 これでは均衡など出来なくなってしまう。

 ユラがくらい顔をしている中アウラはそのまま続ける。


「そうじゃ。だからこの詠唱には制限をかけた。わざわざ詠唱がこれまでの魔法と違うのもその為じゃ……優れた【魔法使い】ならおそらく気づくかもしれんが……まぁそのうち武器ぐらいは作り始めてしまいそうじゃが錬成できる形は複雑なほど魔力を型のように使う都合上特段と難しくなるからのう、とりあえず軍事使えても個人レベルがせいぜいじゃ。」


 まぁ天才が出たらその時は神として監視するがのう、と最後に付け足した。

 ユラ自身もどうしても新兵器というものは最初は対抗できませんからのう……と元々自分の考えの穴も把握していたらしく、特に問題視する様子はなかった。

 一通り制限について語った後に急にアウラがイタズラを思いついた子供のような顔で笑いながら


「……制限はかけた、じゃがな、何かしら作ってみるのは悪くないと思わんかの?……力は使い手次第じゃよ。お主もやってみたいじゃろ?」

「フォッフォッフォッ……全くその通りですな。ワシもやってみたいと思ったところじゃ!」

「お主ならそう言うと思ったぞ!」


 現世の魔術開発に関して先駆者であり今なお先端を走る二人の【魔法使い】、そんな彼らがまるで子供のようにはしゃぎ、色んなものを作って部屋を埋めていくのであった……



「お主、なかなかやるではないか!ではこうかのう?」

「フォっフォっフォっ……鳥の羽とはアウラ様もなかなかの精度、ではこんなのはどうじゃ……?」

「おお!細かく出来ておるのう!お、ここはもう少し【土】の割合を増やせば同じものになると思うぞ?」

「ほうほう……あれはそういう割合でしたか……」


 大はしゃぎで錬成を続ける彼らの手は深夜になって風呂を使いに来ないことを心配したルルイエが家に確認しに来るまで止まることは無かった。


「あれ?だれかお客さんですか?……って何やってるんですか!?もう夜中だっていうのに……」

「「ん?」」

「え、えっと……その方は……?」


 ルルイエが深夜に女性の家で一緒になってはしゃいでいた老人に対して警戒する、彼女にとっては明らかに不審者でしかないようだ。

 これはユラから見ると別の意味で驚きであった、彼女から殺気かと思われたが練り上げられたのはかなり密度の濃い魔力、アウラ程ではないがそれに準じるレベルのものだ。


「ん?……あぁ初対面であったのう。これはユラと言ってな、お主が来る前から色々と関わりがあるんじゃ、警戒せんでもよい。ユラにも紹介しておきたいんじゃが色々理由があってな、とりあえず彼女はルルイエとだけしか言えぬが二人共私の本来の正体を知っているからそこら辺は気にせんでもよいぞ。」


アウラが二人に対してさっと紹介を兼ねつつ双方の警戒を解く。


「なるほどなるほど、貴女がアウラ様に色々と用意してくださった方でしたか……話だけは聞いておりました。」

「いやいやお嬢さんこちらこそ誤解を招きそうなことになっていて申し訳ないのう……アウラ様とこの手の話になると歯止めがききませんな。……ところで先ほどの魔力はあなたのものですかのう?」


そう言われてルルイエはハッとしたように


「あ、あのー……お気づきになられました?出来れば気にしないでもらえると嬉しいのですが……」

「ほう?気になりますが……」

「ユラよ、事情があるのじゃ。後に分かるからいまはかんべんしてやってくれんかのう?」


 ユラの言葉を遮って、申し訳なさそうにアウラが言うのでその手の事情なんだろうなと把握した。


「フォっフォっ……ワシの時と同じということですかの……それならその時を心待ちにしてますかのう。」

「うぬ、それで頼む。まぁルルイエは普通に生活はするがの……それにそう遠い日の話でもないじゃろうしのう。なぁルルイエ?」


 そうどこか懐かしい目をしながら言うアウラの想いをルルイエは理解出来ていなかった。


「……?え、ええ。多分そうです……ね?」

「理解出来ておらんかったか……」


 そのままアウラは呆れてしまい後でルルイエが何のことかと尋ねても適当にはぐらかされてしまった……なおこのことをルルイエはアウラの作った風呂に入れるとなった際に楽しみのあまりすっかり忘れてしまうのだがむしろアウラにとっては好都合だったので思い出させることは無かった。



「……ではアウラ様、後ほど学会で会いましょうぞ。事前に情報はワシが広めておきます故、心置き無く発表して欲しいですのう。」

「うぬ、任せたぞ?お主も自分の研究をしっかりとな。」


 そうしてユラは街中へ、自分の学園へと消えていく。


――どちらの世界でも城が見えるようになる日はすぐそこだ。

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