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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第3節 神様人化編
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神様だって魔法開発がしたい

 研究室にて。


「……事も終わった事だしそろそろかの?」

「そうですね、やっと世界樹の方を見に行けます、これで世界を弄りながらまた気楽に過ごせるというものです。」


 そう言って久々だと言いながら男は背伸びをする、アウラはまた衣装を変えようとしていた。


「先に前に手を貸した奴がどうなっているか見てきてもいいかの?さらに手を貸すつもりは無いんじゃが魔法関連では私も色々やったからの。」

「別に構いませんよ。まぁ、神様は確かにこっちの世界にはかなり手を入れてますからねぇ……」


 それで戦争を起こすとか街を滅ぼすとかなら止めますがね、と男は笑いながら答える。

 世界に降りるということは世界を直接見ることが出来る一方、世界の理に影響されてしまう、神様も世界に降りている間は何にも影響されない訳ではないので安全ではなくなる、なので、一通り問題を片付けないと何があるかわからなかったために暫く降りることが出来なかったわけだ。

 そうしてアウラはあのユラの所まで向かっていった。



 久々に休息を手に入れた男は次にどういう調整をするか思いを馳せながらソファに横になっていた、寝る必要がなくなっても休みというのは精神に良い。

 そのまま暫くするとアウラが楽しげに帰ってきた。


「いやぁいいものを得た。ほくほくじゃ、そうじゃ……それでな?ちょっと良いかの?」


 どうやら観察したついでになにか思いついたらしい、話を聞いてみると。



「実はな……?私も魔法開発がしたくてな?」

「ほう……?それはまたどうしてです?」

「いや、人々に魔法のことで色々やったじゃろ?そしたら私の世界には無かったものだからついつい楽しくてな?それで……」


 アウラ曰く、久々に観察したが魔法は発展していたし、【鑑定】に近いものは出来てきているのでそれは住人が自ら開発してくれるだろうと考えているらしい。

 しかしながら創造、【錬成】に当たるものが全くと言っていいほど発展してなかったのでこれを自分が住人として開発したいということだそうだ。

 なによりアウラは知らないものは体験したがる様な神様だ、考えてみれば当然の事であった。


「……そうですね、神様は別に問題を起こす訳では無いでしょうから制限するつもりはありませんよ。」

「本当か?!君はやはり分かってくれるのう、いやぁいい世界を作ったもんじゃ。」


 アウラがこう言うのも分からないでもない、基本他人の世界には不干渉が暗黙の了解みたいなものだ、船頭多くして船山に登ると言うように作り手が多い世界はいつか綻びが生じてそこから崩れてしまう、しかしアウラは私の世界の生みの親、世界創造の経験も私以上だ、おおそれた世界改変などしないだろう……そういう信頼の元の許可だ。


「神様は信頼してますから。」

「おうおう、嬉しいのう……しかしそれ以上は照れるからやめて欲しいのう。」


 恥ずかしがるような素振りをするが神様の性別はまだ不明だ、しかし娘と瓜二つ故にまた可愛らしいのが複雑な気持ちである。


「で、世界に降りるのはいいですがどこに居を構えるつもりですか?私は娘と転々としながら世界を見て回ろうと思っていたのですが。」

「マキナはおとーさんと一緒ならどこへでもついて行きます。」


 マキナは随分と世界を見回るのを楽しみに待っていたらしい、あんなに待ったのだから早く行かせてくれと言わんばかりである。


「城の姫様とちょいとある所に興味があってな、そこで研究しつつこっちでぶらぶらかのう……」

「【魔王】のあの娘ですか……確かに彼女は【魔法使い】としてはこの世界にとっては規格外の技術……それが目的で?」


 【魔王】ルルイエの魔法は異世界から持ち込まれたものである、今魔法を研究しようとしている彼女にとってはそういう点で興味があるらしい、男にとっても木の根の件の解析にもなるだろうということで定期的に報告し合うことにし、3人は一度慣れきった白い空間にぽつんと存在する研究室を後にした。



「誰よりも仕様を知っていても上手くいかないこともあるもんじゃなぁ……」


 アウラが街中のとある1室で悩みこんでいた。

 世界に降りてから早数ヶ月、目の前にある研究以外は何一つ問題がなかった。

 むしろ目の前の研究に問題しかなかった。

 彼女が確立しようとしているのは【錬成】、無から万物を生み出す魔術、彼女はいま神様ではなく一人の【魔法使い】として研究をしている。

 世界に降りた時こそ身分が証明出来ずに苦労したが事前にユラに宣言したのが幸をそうしたようで無理やり身分を作ってもらった、ユラも何事かと驚いていたが事情を把握し家を一軒貸してまでくれた。

 それと同時に彼には教鞭を振るってはくれないかと頼まれたが


「私が教えてしまったら勢い余って余計なことまで教えてしまうからのう。……お腹も減ってしまったか……」


と断ってしまった……ユラは彼女の生活費を心配していたのだがアウラには伝わらなかったようだ。

 今の彼女は【オリジン】の一人ではあるが他の住人同様食事も必要だし睡眠も必要だ、世界の理の影響は逃れられない。

 現に今彼女は寝ずに二日目を迎え、その代償にかなりの眠気と空腹に襲われている。

しかし彼女は元よりの神様、家事ができるわけがなかった。


「う、うぅ……こんなに空腹が不便なものだとは思わなかったのう……仕方ない、こうなれば……」


 そう言って彼女は家を出ると魔法を練り出し、空へと舞った、その行先は……


「ルルイエ、飯が欲しいのじゃ……空腹を舐めておった……」

「あ、アウラ様?また外から……」

「今度はちゃんと然るべき門を使ったぞ!そ、それよりも……飯を……」


 そう、あの未だに雲に包まれた城の最下層、その先の【魔王】の居場所である。

 服を作った一件の後密かに肌着を含めて作ってくれないかと頼まれた、【魔王】だからといってそういう当たりは何も変わらないらしい……そういう話をしていくうちに彼女が自分でも料理出来ることを知っていたのだ。

……なおルルイエはアウラの本来の性別すらわからないことは知らない。


「あの時食べさせてくれると言ったであろう?!それが今日も来ただけじゃ!」

「まさか数日おきにくるなんて思ってませんよ!……まぁ料理も食事も知らないなら当然と言えば当然ですか……」


 連日ではないがアウラは世界に降りてからずっとお世話になっている。

 ルルイエはルルイエでお礼も兼ねているので気にはしていないのだがこれでは神様の威厳の欠片もなく見ていて複雑なのは言うまでもない。


「残念なことにその数日おきの飯は私にとっては次の飯じゃ。それにお金も作って来なかった、ルルイエが頼りじゃ。」

「……神様とは思えませんね……分かりました、今度は定期的に持っていきます……話を聞く限りアウラ様は今、神様じゃないなら不健康過ぎです。とりあえず作りますから待っていてください。」

「おぉ!それは嬉しいのう……人の体になってから飯の存在と味の大切さが身にしみて分かったわ……」


 ルルイエは【魔王】だが神様ではない、従って元々自分の世界で食事もすれば少なからず睡眠も取っていた、料理は【魔族】思いの彼女が臣下に振舞おうとして身につけたのである。

 むしろ【勇者】改めてメビウスもアウラ程ではないが死なないからという理由でこれまで食べていなかったらしく、こちらに来てから彼にも無理やりにでも食べさせているようだ。


「なんて二人に私はご飯を作ることなってるのかしら……」


 その次の日から【魔王】が神様にご飯を持っていくなどという知る人が見れば恐ろしい光景が見られることとなったのであった。

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