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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第3節 神様人化編
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魔法の使い道

――世界樹の世界にて


「なぁなぁ、今日の講義誰だっけ?」

「え、お前確認しないできたのかよ?!今日は学長が講義する日だぞ?」

「まじかよ、早くしないと座席がなくなっちまう!」


 そう言って制服を着た少年たちが駆けていく、彼らの目的地は魔導師育成学校となった魔法研のとある講義室、彼らが講義室に駆け込むとすでに教室は満席で立って授業を受けようとしている生徒も見える。

 彼らの目的は学長――大魔導師先生ことユラの講義である。

 ユラが教室に踏み入れると生徒の顔が引き締まった。


「フォッフォッフォ……こんな老いぼれの話を熱心に聞いてくれるなんて勤勉だのう……」


 目を細めながら彼は自分の書いた教科書を開いて講義を始める、彼が語るのは魔法開発の基礎論理でも実戦向けの魔法でもなければ魔法概念についてでもない、ただ運用法とそれに向けた魔法具論だ。

 ユラはアウラからの魔術指南を受けた後にその時の体験と本人の弛まぬ努力によって種族専用と化した分こちら側よりも発展していた一方の世界の魔術レベルまで個人で追いついた、本人はあの時の啓示のおかげだと笑っているが並大抵のことではない、アウラも数世代はかかる算段だったのだ、その点で彼の努力は神々の予想を上回ったともいえる。

 加えて彼は魔法は種族適性に関係なく皆が一様に使えるべきものだと考え続けた、【エルフ】や【デミ・ヒューマン】ばかりが高位の【魔法使い】でいいわけがない、と。

 そうして彼は研究機関だった魔法研を魔導師育成学校とし、研究する傍ら次世代に様々な種族に等しく魔法の恩恵をもたらせるようにと教育を始めた。


「でだ、魔法とは確かに身を守る力になる。町中での自衛、外的の魔物を打ち払うだけではない。しかしそれは生命を奪うこともできる力だ。魔法以外で言えば常に剣と盾を身に着けているようなものである。ここで疑問に思った者もいるだろう、生命を奪うほどの力なのになぜ研究開発が進むのか……そこの君、どんな答えでもいい。考えてみなさい。」

「えっ……これまで軍用にすることで国を守りやすくなるからだとばかり……ご、ごめんなさいっ」


 答えるように求められた生徒は申し訳なさそうに答える、平和利用を説く講義での答え方ではないと思ったのだろう。


「ふむ……いや、その考えもある。」

「?!」


 そうしてユラはある例えを質問しだす。


「確かに軍で使うと人殺しの道具にされてしまう。これは私もよくは思っていないのは事実だのう……でものう、世の中きれいごとでは済まない……例えば君は相手がとてつもなく大きな破壊をもたらす魔法を持っていたらその相手に喧嘩を売るかね?」

「……う、うりたくないですね」

「フォッフォッ、そうじゃろう?元々敵を打ち払うために使われ始めた魔法はどうしてもそういう面を持っている。使うなと言って全員が使わなくなるわけがないのう、むしろそうやってお互いに牽制している間は平和ともいえる……では質問を変えよう、次は隣の君だ。今さっきの状態で魔法を使う側だったとして戦争相手が魔法を使えない国だったらどうするかね?もちろん平和交渉なんて考えないでいいぞ。」


 そう言って違う質問を投げかけると何人かは真意を見抜いたらしくハッとした顔をしだす。


「私は……そうですね、それを使えば自分たちは被害が少なく済むのでどんどん使って戦争に勝とうとします……」

「正解だ、ここでするどい何人かは気が付いたようだが魔法が誰かの専売特許だと使える者と使えない者の間で決定的な格差が生まれてしまう……お互いに同じ力を持っているからこそ平和になれると私は思っている。私が魔法開発以外に魔法具について説いてるのはこのためだからのう……」


 ユラは机の上に宝石の入った指輪やら腕輪やらを出していくとその価値のわかる何人かの生徒は目を丸くした、家1軒なんてレベルではない代物もあるようだ。


「いまここにある魔法具は適性のあるものにさらに魔力的な恩恵を与える物ばかりだ……私が今はなしていたのとは全く別の方向の魔法具じゃ。だがこれらの仕組みをまず説明しよう。」


『我世界の理に問う、万物を司る素よ、その身を成す繋がりを我に示せ』


 敢えて彼は無詠唱でも出来ることを詠唱する、それを見て一部の生徒は何故魔法陣も使わないのか疑問に思った。

 ここでは魔法陣を使う際に実行される魔法は魔法陣の製作者の技量に大きく左右される、さらに魔導師とも呼ばれる人々は詠唱で必要な魔力操作を無言で行うことが出来るというのに。

 魔道具から様々な魔法陣が展開され元素を集めた魔導炉が複数現れ、それを繋ぐ魔法陣が表示される。


「あえて詠唱したのには理由がある。よくこの魔道具の構造を見てみなさい。我々が無詠唱で行うとこれを見ることは出来ないからのう、相手に見られないための偽装が付けてあるからでもある。で、本題だ。この魔法陣が読めるものは言ってみなさい。」

「ね、念動だと思います。」

「そうじゃ。君たちが最初に親から教わるであろう誰でも使える念動じゃ。」


 個人差はあれ手元にものを寄せる〈念動〉、これは手の届く範囲であればこの世界の人は大半が無詠唱でも行使できるほど基礎的な魔法だ。


「君たちは念動の原理を考えたことかのう?人によっては品物を見えない手で動かしてるとまで思うっている者もいるやもしれん。さてここで問題だ、では何故これがこんな高価な魔道具に入っているか分かるものは答えてみなさい。私の話したことがヒントじゃな。」


 そう言ってあたりを見回しても答えられそうな生徒は見えない、お手上げとばかりに俯く生徒、考え込む生徒様々だ。


「……魔道具をつけることでより高度な魔術が使えると聞きました、遠隔で魔法陣を使える……のでは?」

「面白い、その発想は大事にするといい。だがここでは間違いだ……他におらんか?……そうか、では答えを見せよう。『世界の理よ、〈光れ〉』」


 彼が研究中に見つけたもの、あの日の美しい輝きを作るために開発した魔力の着色という一見なんの意味もない魔法、これがユラの大魔道士先生の世紀の大発明とも言われた魔法だ。

 生徒からどよめきにも近い歓声があがる。


「綺麗……」

「本物なんて初めて見たぜ……」

「ほれ見とれるでないぞ、よくこの流れを見なさい。魔法具に向かって流れ込んでいるのが分かるだろう?彼女の答えは半分正解じゃ。彼らは魔導炉からこの魔法陣で大量の魔力を流し込んで肩代わりしてもらう。これできがついただろう?念動は魔力も対象にすることが出来る。つまりはな……」


 そう言って一つの魔法陣を作り上げていく、かなり密度と精度の高い魔法陣がその場に練られていく。


「これが万人が同じように魔法を使えるようにする私の研究じゃ、まだ未完成だがのう、今日これを見た諸君は分け隔てなく人々に魔法をもたらしてくれる魔導師を目指してくれることを願っておる、日々の講義でよく自分がとのような魔導師になるか考えるのだ……」


 そう言って一息つけると本題の魔法具作成、改造、調整について語り出した……



「今日はここまで。後半の講義の内容より使い方を忘れぬように。」


 生徒から惜しみない拍手を受けながら部屋をあとにし、自分の研究室へと向かう、彼の万人向け以外の研究をするためだ。


「まだワシはあの日の輝きを再現できん……やはりあれは……」


 そんなことを呟きながら部屋の前につくと学校の警備員と揉めている少女の姿があったがその姿にユラは目を見開いた。


「彼にアウラといえばわかると言っておろう!なぜ分からん!」

「で、ですから学長はここにはいらっしゃいませんしどの道許可なく会わせるわけにはいきません!」


 以前の様な言動をしていないが彼には誰だかすぐに分かった。


「あ、アウラ様……どうしてこちらに……?」

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