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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第2節 文化成長編
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神は胃袋を握ろうとした、【勇者】はそれよりも服が欲しかった

 所変わって研究室。

如何に彼らを扱って世界にスカウトするかを考えている二人の姿があった。


「して、君は何を彼らに与えるのじゃ?」

「見た限り食料……なんですが、彼らここ数日食べてないんですよ。何か飲んでるのは分かるのですが……神様、見覚えは?」


 この世界で生物として存在する以上彼らも例外なく食事と休息は必須である……のだが稀に何かを飲むだけで食事についての会話すらほとんど無いのだ。


「やけに飲む間隔が短くなった、とは言っておったのう」

「ええ……しかし何とか彼らの食についての生命線を握りたい所です。……あれがある限りは難しいですが。」


 少なくとも彼らは周囲の敵を倒し、何らかの方法で食事をとっている以上生きようとしているのは確かだ。

 食料を手に入れられない場合胃袋を握ることは相手がどんな条件でも有利に働く材料になる、背に腹は変えられないという訳である。


「……彼らには悪いですが最悪あれの破壊で対応しようかと。それにどうやって彼らに接触しましょうか……」

「そうじゃのう……城の主としてどこかに案内すれば良いのではないかの?どうせあの深部までは他の者は入ってはこれないじゃろ、弄っても問題はないと思うのう」

「じゃあそういう方向でやってみますか……彼らが話のできる人達だといいですね。」


 そういうって城の深部を作り替えていく、彼らに接触を図るために実際の城のように居住性を持たせていく。

 流石に自分が世界に降りて話をするのはまだ安全とは言えないので代役を作ることにした。

 あとは彼らからあの液体を奪うだけだ。


「さて、これであとは彼らの持ち物を狙って攻撃するように周囲の敵のアルゴリズムを書き換えます。機械ですから違和感はないでしょう。」

「うぬ、最悪金縛りでもして無理やりじゃ、少々小賢しい手じゃが仕方ないのう。」


 こういう時は容赦のない神様である、とりあえず彼らに仕向けた機械たちの働きに期待しよう。



「やはりこれ以上魔法を打つのは……」

「あなた……私に魔法以外を使わせるつもり?……こんな姿の私に?」

「……いや、僕が悪かった、撤回するからとりあえずその魔法を止めてくれ。……とりあえずあと10本、僕が消費を抑えて君に使わせたとしてもそろそろ底を尽く、それだけはわかってくれ……」


 【勇者】の周囲を取り囲むように展開されていた魔法陣が消えていく。

 腰からポーションを二本取り出し2人で飲む、残りは八本だ。

 マント一枚しか羽織ってない【魔王】は当然【勇者】の前で戦うことを嫌がった、【勇者】も戦うのに支障が出るので彼女を後ろに付けさせて極力見ないようにしたかった、その結果【魔王】が後衛で魔法を放ち、【勇者】が前衛で剣をふるうことになったのだ。


「はぁ……戦闘ができないと聞いていたんだがそれにしてもどういうことなんだ?……魔力も精度も僕が戦った【魔王】以上。戦えないというのはどういう事だ?」

「あの拘束具がある限り何も出来ないし、かと言ってあれが無ければ私は【魔王】のまま戦わないことを選ぶわ、だから戦えないってことよ。別に弱いなんて言われてないわ。」


 いくら自分が死ぬ事がないとは言っても瞬間的に復活するのは厳しい。

 彼女は自分が復活する前に次を打ち込み続けて封じ込めも可能だったのではとまで考えさせられる程の威力、精度、連射力を持っている、【魔族】の守護と繁栄を願うものとして申し分ない強さだ。


「ポーションがなくなる前になにかしら手に入れられるといいのだけれど……」


 最悪、【勇者】は飲食が無くても死ぬ事は無い、ただ魔法による身体強化を使えなくなるだけだ、ただ敵は襲ってくるので早く倒して早く外に出ることを優先とした、その結果2人でポーションを使っている。……実の所【勇者】は彼女に服がない方が問題だと思っている、食料が無くてもいくらか戦える彼にとっては食料よりも衣服がないことの方が問題だったのだ。

そんなことを考えていると二人にこれまでとは違う機械の敵が襲いかかってきた、創造主より彼らの持ち物を奪うために新たに投入された人型の機械たちで、機械歩兵と形容できる彼らは他の敵と違い二人を殺すことより持ち物を狙う、攻撃はすべて勇者の腰のアイテムに集中し、挙げ句の果てには液体の蒸発まで行うように作られている。

 要するにこれまでの敵が人々に試練を与え突破させる作りだったのに対して彼らは二人を完全に詰ませるための敵だ、作られた時点で二人の攻撃を少しでも長く耐え、手数でアイテムを狙う彼らは次第に数で彼らを追い立てるような奴らだ。

二人も予想外の敵の変容に魔力の消費を増やして対応せざるを得ず、しばらく続くうちにその生命線の残り本数も6本、4本と減り、ついに最後の2本となってしまったのであった。


「……あと何本?」

「残りは二本、僕は飲むのをやめて残り二本は君に使おう。」


 ここから出られなくなるのではと次第に思い始めるなか、追い打ちをかけるように追手の勢いは弱まるどころかむしろ激しくなっていく、二人は戦闘を割け逃げるようになるといつの間にかとある部屋の前へとたどり着いた。


「……明らかに誘導されたと思わない?」

「僕も同じことを考えていた。ただ罠かどうかはともかく逃げるためには入るのは手だと思う。」

「……もし罠だったらあきらめてポーションを1本飲むわ……」


 そう言って彼らは追っての機械歩兵から隠れるように部屋に逃げ込んだのであった。


「一体どうなってるんだ……僕は夢でも見ているのだろうか?」

「私には普通の部屋に見えるわ……幻覚かなにか……?」


 部屋の中はこれまでとまるで違う空間が広がっていた、これまではあくまで遺跡のような印象を受ける天井や床であったのだが、ここはうって変わってなぜか普通の部屋で異様に綺麗だ。

 二人は幻覚でも見ているのではないかと自分の視覚を疑った、すると部屋のどこからか光が集まりあの男の姿がホログラムのように現れる。


「……異世界からの客人、ようこそ我が世界へ。」

「だ、だれだお前は!ここはどこだ!」


 【勇者】が斬りかかるがホログラムに一切の影響はなく、その男は話し続ける。


「別になにか悪いことをしようってわけではないから気を荒くしないでほしい。お願いがあるだけだ、君たちが食料に困っていることは把握している。単刀直入に言おう、こちらからの条件さえ守ってくれれば、こ君たちに食事と居場所を提供する。ほかにもある程度の希望を叶えよう……君は私を誰かと聞いたな。私はこの世界の創造主たる者だ。」

「……確かに僕たちはその点について困っているのは事実だ。しかし何をもって信じろと言うんだ?」

「そうだな……ではそこのテーブルに何か食料をだそう。それに関しては信頼の証ということで食べてもらって構わない。」

 

 そういうと机の上に一通りの食品が現れる、さすがに二人もこれには驚いたように目を奪われてしまった、いくら【勇者】や【魔王】でも生きる死ぬにかかわらず久々の食事、というものは二人には十分すぎる甘い餌であった。


「ほ、本当にいいのか?」

「ああ、まぁゆっくりとしていってほしい。そのあと話をしようじゃないか……【魔王】様と【勇者】殿?」

「……!?一体どこでそれを!」

「創造主だから、とでも言っておきましょうか。とりあえず食事中にいても邪魔でしょうから後ほど――」

「……ちょっと待ってくれ、ある程度なら叶えてくれるといったか、聞いてもらえると嬉しいのだが……」


 もしかしたらこの男ならあの悩みも叶えてくれるかもしれない、そう思った【勇者】は男の要件を飲む代わりにあることを願うことにした。


「おや、いいでしょう。……代わりに話は聞いていただきますがよろしいですか?」

「変な話じゃないといいんだが……しかし、僕にとってはそれよりも重要なことだ……彼女の服をどうにかできないか?」


 【魔王】が顔を真っ赤に染めてこちらをにらんでいるがそれよりもその姿でいられる方が困るのだ。

 ホログラムの男は一瞬どういうことだと思いながら彼女のことを見て大体を把握した。


「なるほど……どうにかしましょう。それに関してはすぐとはいかないので食べながらでもして待っていてほしい。その後で話をしましょう。」

「……わかった。」

「それはごゆっくり。ようこそ我が世界へ――」


 そういうとホログラムが消えていく、いくらポーション生活に慣れていたとしても目の前に置かれた食事に二人そろって目が釘付けになってしまう、久々のまともな食事にありつけるかもしれないのだ。

 【魔王】が自分のお腹をみつめ、うつむきながら恥ずかしそうにつぶやいた。


「……餌付けされている…うぅ……でも私は久々のご飯が食べたいから……話は聞こうかなって……」

「……僕も同じだ。諦めて食べよう……悪い話を吹っ掛ける男じゃないとは思うが……」


 体裁なんて言っていられない状況だ、二人は男の話を聞くことを飲んで食事に手をつけた。――


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