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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第十四節 あれよあれよと花散りて
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希望の船

 ◇


 同刻、これを塔を挟んで反対側、つまり創造主側から見た住民たちは懐疑の念を抱いた。

 それも当然、同じような者と共に見慣れない人型の者たちが行軍してくるのだ、言葉の一つも交わしてない以上敵か味方かはっきりしていないだろう。

 そしてその件で地図と睨めっこをし、頭を抱えるのは上の者どもの仕事である。


「将軍殿、向こうにも軍が見えますが……どこの者かご存知でしょうか?」

「いや……少なくとも私は見たことがない、他に見たことある者は?」

「…………」


 場所は連合軍本部、各国の上官は初めての異形の相手との大々的な戦いの最中新手の出現に戸惑っていた。

 報告の限りではどうやらその我々と似た姿形をしたものたちは魔物と人を掛け合わせたような存在と行動を共にしており、さらにはよくわからない光線を放つと言う。

 見たこともない鎧を身に着けており、それが輝きながら素早く動いたと言う噂まで出回っている。

 一つはっきりしているのは彼らが同じ敵を討っていることだ。


「ううむ……向こうの誰かと意思疎通は取れないのか?」

「いえ……見渡す限り敵が壁のようにおりまして……伝書すら……」

「そうか……ん?いや、飛空艇は使ったか?そうでなければさっさと向こうまで飛ばせ!」

「おい伝令!今すぐ使える艇を送り出せ。一番速いのを使え!」


 数分もしないうちに向こう側を目指して小型の飛空艇が飛び立ち、陣営からは小さな点程の大きさになった。

 しかし点になった直後だ、機体がふらついた。

 異物どもが上を過ぎていこうとした飛空艇を狙いはじめたのだ。

 大地から仰々しい得体のしれない塊が飛空艇へと地獄へいざなう手のように伸びていく。

 陣からは飛空艇になにか手を出すことはできない、ただ見ているしかない。


「……くそっ!」


 将軍が机に手を打ち付けた瞬間、操縦手の健闘虚しく塊が飛空艇の翼を貫いた。

 バランスを崩した飛空艇はきりもみ回転しながら高度を落としていき、そこへさらに二発、三発と翼が貫かれ、最終的に地平へと機体が消えていく。

 異物が山を為すように群がっていくのが見えてしまった。

 本陣内が重い空気に包まれる。

 と、突如駆動音と共に一機の飛空艇が陣近くに降り立ってきた。

 中から降りたパイロットは本陣へ駆け込んでくる。


「本陣はこちらか!伝えたいことがこちらに!って通してくれ!」

「わかってはいますが、お待ちください!」


 それをよそに一人の兵士が走りこんできたが近衛に止められた。

 どの国の物でもない黒い装いだが今度は皆が所属を知っている、アイヴィスだ。

 本陣の空気は一変して希望にすがるといわんばかりに明るくなる。


「通せ、アイヴィスはあとどれぐらいかかるんだ」

「――アイヴィス、あと二時間ほどで戦闘域に入り戦闘を開始する予定です」

「そうかそうか……よし、全軍に通達!二時間後に攻勢へでる。これは今敵と分かり切っている者のみへの対処だ。我々に今二つも相手取る余裕はない」


 各隊へ伝令が飛んでいく。

 それを見送って立ち上がり己の剣を手に取ったタイミングで何かが起きたのか、そのまま剣を手放してしまう。


「……なっ、何者!」

「い、いかがされましたか!?」

「目の前に突然現れた……これを手に取った瞬間、だ」


 身構えながら再び剣を手に取る。

 周りは何事かと、なにかに取り憑かれたかと将軍へ身構える。


「……やはり見えるぞ。おい、ちょっと代われ」


 将軍は一人近場にいた者を己の手へ引っ張り無理やり柄を握らせた。

 あまりに真剣に言うとはいえやはり半信半疑である。


「いやいや、いくら将軍殿の言葉と言えども……うわあっ!?」

「……どうだ、お前にも見えたか?」

「え、ええ……確かに……我々に近しい形の者が……」


 流石に二人目が目の前で現れると本当ではと考え始め、ならば自分もと将軍の剣に触れてみる。

 そして先の二人と変わらぬ反応を見せ、同じ物が見えていると確信した。


「やはり皆、見えている様だな」

「ええ、確かに、しかし……何でしょうか」

「わからん、少なくとも今は関係ないだろう……アイヴィスが来るまでは維持するぞ」


 ◇


 アイヴィスが到達するまで予定では半刻、まもなく姿が見えるだろうという頃、再び伝令が息を切らして走り込んでくる。


「き、緊急につき!ご無礼をお許しください」

「構わん、しかし一体なんだというのだ……次から次に騒ぎが起こるなど……」

「ぜ、前線で控えている部隊の者が相次いで幻覚が見えると混乱が生じております!」

「なんと……」


 その場にいたほぼ全員が頭を抱えた。

 どうもこれはここだけの話ではないようだ、と。

 大混乱に陥った現場から駆け込んだ伝令はその様子を不可解だと首を傾げた。


「んむ……自分だけではない様だな。全員に幻覚ではない、現実だと伝えよ。会話を試みても構わん、と」

「は、はい?」


 この反応が本来なら普通だ、誰も混乱が起きたという報告に対して受け入れろなんて指示したこともされた事も無い。


「受け入れろ、ということだ。喚く奴には味方だとでも吹聴しろ」

「本当によろしいので?」

「よろしいも何もここでも起きた。現に問題は起きていない以上無視を決め込む」

「は、はぁ……了解しました」


 狐につままれたような顔になってしまった伝令を送り返す。

 そうして後を振り返ると遠目に見える希望の船が次第に大きくなりつつあった。

まさかアイヴィスでも同じことが起きているとは微塵も思っていなかっただろう。

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