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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第十四節 あれよあれよと花散りて
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権限の使い様

 彼等の持つ武器をまじまじと見てみる。

 しかし特段目を見張る部分はなく、強いて挙げるとするならば使われている素材が少々頑丈で、デザインも装飾少なく実用性に振り切られているのを伺わせるぐらいであった。

 使い手は相手がどの様な存在かをよく把握している様で、例え刃の付いている神器でも易々と直接使うことはしておらず、異物を消し去り、改変を修正する光線を放つことを主体に戦っている。


 ……と、ある時向こう側の様子が一変した。

 着々と勢いを押し殺し、形勢を取らんとしていた所から一気に勢いがついたのだ。

 異様にただでさえ高そうに見えた士気がさらに上がっている。

 原因もすぐに明らかになった、アウラが直接現れたのだ。


「……来たか」


 向こうでは誰がともなく「アウル・オーラの名の元に」と謳い、歓声が湧けばさらに地響きが轟く。

 間違っても戦争直前に軍を並べて鼓舞しているのでは無い、まさに今剣を振るっている最中の話だ。


 その原因の神様は普段とかなり様子を異としており、男と相見えた情報空間ですら身につけていなかった鎧を身に纏い戦女神たる様を周囲に示していた。

 鎧の装飾は多く、その上から羽衣を纏い風になびかせ、威風堂々と言ったところだろうか。


『アウル・オーラの名の元に!アウル・オーラ様万歳!』

「……皆の者!」

『…………』


 鳴り止まない崇奉の呪文はアウラが口を開くと一斉に死んだように止まった。

 男は神様の言葉を一言一句聞き逃すまいとアウラの声だけを研究室内へと取り出す。


「迅速な対応、褒めて遣わす……が、心して聞くのじゃ、此度の戦いで終いにするでな。手あたり次第全て滅ぼすのじゃ。なに、かわいい住人達じゃ。できないことなどなかろうての」


 手を開くと彼女は手の平の上にに槍を一本作り上げ、それを手に取った。

 そしてそれを投げんとて構える。

 アウラの瞳には例の力を行使するたびに溢れる光が帯をひいて充填され始めた。


「進軍は……どこらへんじゃろうかの……」


 槍を持っていない手は投げる向きを指先で示す。

 その指先から瞬く間に膨大な量と大きさの魔法陣が浮かび上がり始める。

 それと同時に男の周辺に既に閉じたものをこじ開けるような感覚が背筋に忍び寄る。

 明らかに目の前の神様が権限を男の近辺までねじ込ませようとしている証拠だ。


「……ふむ」


 愚かにもこの時男は迷った。

 アウラのこの行為はあくまで今目の前にいる異物を排除するためのものだと思ったのだ。

 現状を作り上げた原因を頭から抜け落していた。

 アウラの瞳本体がわからないほどの眩い光を纏ったころだ。


「……そこじゃな」


 槍を投げた。

 いや、撃った。爆炎と爆音と衝撃波と共に。

 触れてもいない地形が抉れ、そのまま一筋の線を描く。

 その一閃はパラディウムの塔を貫きそのまま勢いを落とすことなく飛び続け……


「っ?!」


 男の目の前まで飛んできたのだ。

 しかし、男に当たることはなく――これはトールがその場ではじいたためだが――槍は天井に突き刺さっている。

 そして男は画面の向こうへ悪寒を感じた、アウラ側の者どもが皆こちらを見ているのだ。

 天を仰ぎ見ているのでは無い、完全にこちらを見つめている。


「……よいな?逃がすでないぞ?」


 アウラもこちらを見据えながら話を続けた。

 もう既に一部はアウラの連れてきた隊と共に塔へ直接流れ込み始める。


「しかしまぁ……なんじゃ、流石に私らによって同じ者が殺し合ってしまうのは少々気が引けるでな。言葉ぐらいは伝わるようにしてやろうかの」


 そう言って手をひらり、はらりと空を撫でる。

 手の軌跡から流れる光が瞳のと同種なのを見るに言葉通りに改変が行われたのだろう。

 ついでに考えればおそらく今のはこちら側では住人を戦力として手を加えていないことを確信しているからこそ出来る事だ。

 敵とするならば互いに話している内容が伝わらない方が都合がいい、言葉が通じるということはまだ味方と見なしてもよいという意味も含まれているのだ。


「……言った以上目的は果たすからの」


 アウラが一息つくと瞳は元に戻り、再びこちらを見据える。

 そのまま周囲の近衛らしき者へ引き継ぐと振り返り内へと消えていった。


 盛大な歓声と共に代わって指揮を執り始めた者はその身体よりふた回りも大きな鎧、結晶による魔力噴出機関を組み込まれた鎧を着ており、兜もあるためにその人自体を把握することは出来ない。

 しかしながら解析するまでもなくその鎧はアウラの力を受けているのが理解出来た。


『アウラ・オーラの名の元に!全軍、進めーっ!』


 笛号令と共に兵は動き始め、さらには背後に多大な魔法陣が生み出される。明らかにこの時期の技術、知識で作れる魔法ではない。

 よく見れば隣には小さき何者かが見えた。

 どうもこの者が仕掛け人だ、あの大きさの者は確か……【厄災】が作っていたのを覚えている。


 文字が空に立ち並び魔方陣をさらに編み込んでいく。

 編み込み終わると何をするでもなくその魔方陣はパッと光を放つと霧散し、代わりに兵達の鎧がそれとなく光の反射に金を帯び始めた。

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