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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第十四節 あれよあれよと花散りて
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望まれるべき改変

 たったこれだけ、そう言われた瞬間無意識に引き金をさらに引いた。


「美しくないなぁ」

「美しく……?」

「あぁそうさ、美しくない。美しいというのはこう……痛みと苦痛を伴う中にある歪みだ。どうしようもない矛盾や絶望、そういうものが混ざれば尚更美しい」


 そう言って相手の得体の知れぬ者は周りに何かを纏い始める。


「美しいものを創り出そう、全てを美しく作り変えよう、全ては美しくなければならない」

「……なんだあれは」

「美しい物で染めあげればほかは何もいらない。美しく完結したものは他を求めず、何も必要がないのだ」


 気味悪くどす黒い流動体の物が相手からこちらへと飛んでくる。

 世界へと行っていた修正と干渉の強制力を引き上げ、正面に絶対的な改変の境界を設置してその不気味な触手とでも言うような物を弾く。


「……実に不愉快だ」


 男はその言葉にこの相手が明らかに己と美的感覚の相性が絶望的なまでに合わないことを悟った。


 この状況はいささかまずい。

 何より今は神様の方も手を焼がなくてはならないと言うのにさらにこんな輩に来られてはひとたまりもない。


 その場から離れるようにしながら修正の範囲を広げ、相手との距離を取ろうとする。


「……ちっ、まぁいい後ででも美しくするのは容易いからね」


 相手がその一言以後何も言うことはなく、追いかけてくることもなかった。

 意識と存在が次第に研究室へと戻ってくる。

 戻ってきてみるとソファの上で隣にはマキナが座っており、こちらを覗き込んでいた。


「おとーさん!」

「ああ……やっと調子が戻ったか」

「それどころじゃないの!世界が!」


 そう言ってトールを指さす。

 トールは何も言わずに壁へ世界の状況を映し出す。


「なっ……?!」


 世界に刺さっているのは無数の気味悪い巨大な柱。

 柱を線となして杭で区切られたかのようにその間は腐っていく。

 先程まで自分が修正していたのはまるで無意味だったと言わんばかりの勢いと速度で腐食はすすんでいるようだ。


「マキナ、できるか?」


 見える以上は干渉出来るはずなのだが自分がどのようにしても全く受け付けない。

 マキナの権限を復旧させマキナにやらせても変わらなかった。


「ダメみたい……」

「……いや、気にしないでいい。それよりも……」


 画面の中へ意識を注ぐ。

 見覚えのある異形の異物だけでなくそれに類する者共が柱から湧き出ているのがわかる。

 どす黒い憎しみが湧き上がった。


「……またアレの類みたいだな……」

「おとーさん……っ?!あれ!」


 マキナが指さす方へと目を向けるとその空間が裂け、中から見覚えのある土地が顔を出した。

 一ヶ所、二ヶ所の話ではない。

 丁度こちらの世界とあちらの開いた口のあいだに件の柱が仕切りのように立っている状況が映像の視点から見渡せる果てまで続いている。

 中から何やら同じ輩の行軍が見えるが……


「……こんな時に……なんてこった……」


 しかしよく見ると行軍には変わりなさそうだがどうも向こう側の様子は少々異なっている。

 何やら追われているような……そんな感じすら感じる。

 柱から湧き出たうちの幾らかがそのまま裂けた空間の向こうへと流れていくのが見えた。

 まさに加勢、といわんばかりだ。


 次第に裂け目は隣の裂け目と繋がり一つの巨大な割れ目になる。

 大きな割れ目になったことで視界が広がり向こうの様子が分かるようなった。

 すると向こうでも同じように無数の柱が大地に突き刺さっており異物の輩が湧き出しているまでは全く同じ様子なのだが向こうの方はこちらよりかは幾らか少ないではないか。


 その原因はすぐに分かることとなった。


「ねぇおとーさん、あれ!」

「……ん?」


 一筋の光が塔の目の前を掠めていく。

 その場にいた異物は跡形もなく消し飛んだ。

 つまり……湧き数が少ないのではない、駆逐されているのだ。

 今の一閃でこちらから流れたうちの半分は消滅したのではないか。


「向こうには独自の【守護者】がいるのか……?いやいや……ここの創造主ではない以上権限は……」


 アウラが【守護者】を自在に作ることはできないはずだった。

 ジュノーの場合は呼び出した形を取り、無から作り出すのとは少々異なるため割愛する。

 要するに言い方を変えれば彼女もまた異物だ、という話だ。

 それでも【守護者】を冠することは出来るのが仕様の穴とでも言えるのだが……

 そのため考えられるのはジュノーと同じように呼び出したか……もしくは既存の者に力を与えて【守護者】と同じ域まで練り上げたか、或いはそのどちらも行ったか、である。


「トール」

「既に手配しております。ですが如何せん数が……」


 こちらはこちらで異物の排除に加えてもしもに備えて【守護者】を向かわせる。

 仮にそのまま向こうから攻めてきた時に備えるのだ。

 しかしそれでも数が足りるか不安さえ覚える。


 そのまま創造と修正による介入を続けながら様子を見守っているとこちらからも光線やらなんやらが柱や異物目掛けて飛んでいくようになった、【守護者】が到着している証拠だ。

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