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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第十三節 加速
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過剰戦力

◆Sideアウラ


 ゆらりゆらりと城の中を進む。

 歩を進める程身体の汚れは消え、服が整っていく。

 しかしその顔は物憂いそうにしていた。


 ただただ過ぎようとすれば皆が手を止め向き直り頭を下げれば、それには愛想を振りつつ軽く流す。

 この場で媚びながら寄ってくる者は容赦なく突き飛ばす。


 そうしてたどり着くのはとある一室。

 そこには既に何人かが席についており彼女を待ち構えていた。


 そこにいる皆は誰一人として一般人では無く、その力は既にこの世界のものさしで測ろうとすることは不可能な者達だ。


「……はぁ」

「ん?神である貴方がため息とは珍しい。何かありましたな?」

「どうしたもこうしたもあるか。全く……先が思いやられるんじゃよ」


 半ば笑いながら言う筋肉質の男に軽く手を布のように振りながら「勘弁願いたい」と嫌々感をアピールし、そのまま席に着くやいなや突っ伏してしまう。


「ハッハッハ何を弱気になっておられる。我々が呼ばれた限りそんなことはさせませんぞ!」

「お主とて全力で戦ったフリをして引くなんて出来ぬじゃろうが、この脳筋」

「……ぐっ。まぁそうですな。しかし我の全力よりも強い相手がいるはずなのでしょう?我はそれの相手をして負ければ良い!痛てっ、何をする!」


 他の者に叩かれ頭をさする男を叱るように指を指す少女。

 頭に降り注いだのは少女の手ではなく、踵であった。


「よく考えろこの阿呆!保証も無いものを願うんじゃない!」

「良いではないか!戦いの果てに強者に破れるのは我の夢の一つだぞ!」

「何が負けるのが夢よ!死にたがりが!」

「何を言うか!」


 そのまま軽い口論が始まるが周囲は気にする様子もない。

 突っ伏した彼女は更に深いため息を吐く。


「はぁ……それがおるか怪しくなったから言っておる。はっきり言ってもう少し強くなると思っておった。これではこちらが過剰戦力じゃ」


 それを聞いた二人が取っ組み合いの形のまま手を止める。


「なんと……」

「お前らのうち一人……いや二人じゃな。それだけで方がつく。一人じゃ流石に無理じゃが……二人なら圧勝じゃろうな」

「そんな……」


 二人して同じように眉を八の字にして悲しそうな顔になる。

 それを察したのか突っ伏していた彼女は表をあげて申し訳なさそうに笑った。


「すまんな、お主たちを色々と弄くり回した挙句に不要になりそうな事になってしまってのう。お主たちにとって大事な年数を奪ってしまったかもしれん。何にせよお主たちの出番の為に最後まで手はうつがの……」


 そこに口を挟むのはここにいる七人のうち最も年齢が高そうに見える男だ。


「……ならば私の分はいい。少なくとも護るためにこの力を振るえるならば結構です。それでも足りない時は……貴方の手で元に戻せないのか?」

「よく考えてみよ。次の日、いや次の瞬間から見た目が子供に戻り周りにそう伝わる事をじゃ。世界は確実に再び英雄が出来上がると好奇のととんでもない期待をかける。それが子供の精神で耐えられると思うかの?」

「……軽率でした、撤回します」


 また一つため息をつく。

 そして目を閉じて、教を上げるような調子で詠唱し始めた。


「……我が名はアウル・オーラ。アーク、ベルベット、カルラ、デルベラ、エイワーズ……それとリベルト。創造主の権限において汝らの【守護者】としての役目を剥奪する」

「なっ……!」


 その場にいた面々から鎖がちぎれるような青い霊体が弾けとんだ。


「……これでお主たちは世界の時間に再び囚われる。それに奪ったのは役目だけじゃ。別に力は奪っておらんよ。事が終われば一人の住人として過ごすが良い。永久の鎖は硬く重苦しいからの。本当にその覚悟が出来たなら全てが終わったあとに今の姿で再び繋いでやると約束はしてやるのじゃが……」

「……それは幾ら何でも無責任、とは言いませんか」


 一番年上の彼の拳にほんの少しだけ力が入る。

 彼が言いたいことはこれだけではない、しかしまだこれだけに留めているのだ。


「……そうじゃな、リベルト。お主はどうせ鎖に繋がれるじゃろうな。何より他の子らよりもこれに慣れておるしの」

「私の事ではない!私以外のことだ!彼らから彼らの意思を除いてこのようにしたのは貴方だろう?!アウル・オーラ!」

「……落ち着いて」

「っ……!」


 思わず立ち上がった段階で他の子らに制止されてしまいそのまま不満さが現れるように乱暴に座る。


「……とりあえず言えることは来るべき時はそう遠くないうちに私が起こすという事じゃ。本当はお主たちを集めたのは全く逆の……「敵は強い」と報告をして期待させるつもりじゃったんだがなぁ……頭が痛いのう。今日は本当にすまなかったの、家族の元へ帰るなり持ち場へ帰るなり好きにしてくれ……私はこのままじゃ」


各々互いに顔を見合わせる。

彼らとでここまで落ち込んだアウラを見たことがなかった。

一人、また一人と何もすることが出来ないと悟りこの場をあとにする。


「……じゃあなアウラ様」

「じゃあ……私も」

「うぬ。また何かあれば呼ぶでな」

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