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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第十三節 加速
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存在の移譲

 アイヴィスの鎧はふんわりとした服装の印象はそのままに随所で装甲化が行われ、ところどころ縁取りにつかわれた金装飾が目を引く。

 鎧もモチーフをどこかで見たような機関と魔力放出をしている。

 どうやら先程までの灯火は彼女の胸元の機関からのものの様だ。


「同じ名前にしておいて大正解だったやぇ」


 アイヴィスは新しい身体と鎧を眺めながら安堵したようにため息を吐いた。

 これを見て面白がっているのはアウラである。


「ほう……!この瞬間に物にしたか!しかし使いこなせなければそこまでじゃよ」


 アウラから一筋の光がアイヴィス目掛けて飛んでいく。

 アイヴィスは何かを張り巡らすでも無くその一閃を装甲だけで受け止めた。


「……もちろん、ちゃんと使えるんやぇ」


 軽く受け止めた場所を払って傷がないのを見てにやりと笑い返す。

 胸元の灯火は煌々と燃え上がっている。

 それを見たアウラはなにか諦めたような素振りで隔離していた本を床に落とすと、お手上げだ、と言わんばかりに手を横に振った。


「……お主、何を依代にしたのかしっかりと考えることじゃな、私は引き上げさせてもらうかの」

「させないやぇ!」


 男もすぐさま世界を閉じようと改変を始めたが間に合いそうにない。

 アイヴィスが槍を地面から抜き取り矛先をアウラへ向けると辺り一面に黒い鋼の船体が現れた。

 現れた船体の砲座から無数の砲弾が飛んでいく。

 しかしアウラへ笑いながら向きを変え手を振った。


「ハッハッハ……遅いんじゃよ。こういうのは最初からやっとれ」


 着弾し爆炎と轟音が空間を覆う。

 男も光弾を放っていたが着弾する頃には既にアイヴィスの砲弾で埋めつくされ着弾したのかすら分からない。


 砲撃が止んだ跡には残った者の本以外何も残っておらず、アウラが逃げおおせたことだけが事実として残っていた。


 アイヴィスから肩の力が抜けるとそれを合図にしたように艦影が消え、鎧も霧散し、元のふんわりとした格好に戻った。


「流石に消されたかと思ったやぇ」


 そんなことを言いながら空間を修繕していく。

 部屋に機能はなくとも、この瓦礫では運用しづらい。

 世界の損傷はこの祭壇状の空間とアウラが紙を溢れさせた際に壊れた扉ぐらいであった。


「それにしても……余裕、だったな」

「そうみたいやぇ……」

「所で話は変わるが、アレは参加してたのか……?」


 アレとはそこにいるミノスの事だ。

 確かに流された際にアウラの本を持ってくる、ということはしていた。

 ……がその後は?という訳だ。

 その問にアイヴィスは何故か首を傾げた。


「していたやぇ。なぁ?あんさん」

「え、えぇ」


 半分しどろもどろ気味に答えられると疑いたくなる。


「……本当か?」

「ここの維持と……アクセスの遮断と……」

「あとうちの再構成の手助けやぇ」


 アイヴィスの再構成にこの牛頭が関与したこと自治に驚きだかそもそもその維持に私が気がつけていないのが不思議な話だ。

 アイヴィスの再構成の種明かしもして貰いたい所だがこちらの話の方が優先度が高いやもしれない。


「あー……ミノス。誤解したことは済まなかった。ただ君はどこを基準に作業していたのかね?」


 まさか、という顔が返ってくる。


「え?私は普通に……いや、音でしょうか?」

「音?」

「ええ、はい。音です。そこにある音を操ります。本来発生するはずの音を消して物事を無かったことにしたり、逆に音を加えて物事を引き起こせます」


 この説明に今度は男が首を傾げた。

 この牛頭は記憶違いが無ければ祭事などの文化的な【守護者】だ。

 少なくとも音の【守護者】ではない。


「……君は音を司ってはいないはずだが」

「私は確かに祭事を司っています。祭りは音と雰囲気があれば作れるので……その延長ですかね」

「『解釈次第で何でもあり』ってことか……」


 ここにアイヴィスが口を挟む。


「なぁなぁ……もしかせんでもあんさん、うちと会話してる間も音を遮断してたんじゃないんやぇ?」

「……え?聞こえてませんでした……?」


 いやいやまさかそんな、と青ざめたように訪ねてくるが全くもってその通りだ。


「あぁ、全く。これっぽっちも聞こえてないな」

「そ、そんな……だからですか」


 この時点でミノスは意気消沈、いや幽体離脱と言わんばかりに白くなってしまった。

 流石に自業自得とも言えるので深くは触らないでおこう。


「いや、そんな使い方をしているとは思わなくてな……で、気を取り直して聞きたいんだがさっき再構成を手伝った、と言ったな」

「え、ええ、言いましたね」

「具体的には何をしたんだ?方法次第では他の【守護者】にもやらせたい」


 この空間は便利な武器にもなりうるがそれと同等の脆弱性まで持ち合わせる。

 今回利用目的は果たした上で早々にアウラに見つかってしまった以上もはやここを残す理由が無くなってしまったが、それとは別にアイヴィスのような防御方法は得ておきたい、という訳だ。


「残念ながらそれは……無理かも知れません」

「ふむ?」


 期待に反して帰ってきたのは残念な報告であった。

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