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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第十三節 加速
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その創造主は強引で繊細で

 アイヴィスは槍先を切り上げるようにしてアウラの胸元へ刃を向ける。

 アウラも手から棒状の物体を組み上げ競り合うようにしてぶつかった。


「私に近接で迫るとは……【守護者】としはどうなんじゃか」

「せやねぇ……でも話しやすいやぇ?」


 柄と柄で競り合った瞬間に会話を交わす。

 会話が終わるとアイヴィスが突き飛ばすように再びぶつけて二人の間に距離を作ると、槍を持ち直してそのまま懐に飛び込み突き上げる。

 アウラはアウラで腕が人の形を失うと棒ごと融解し、今度はそれを盾に成形してそのまま弾いた。

 創られた盾はアウラの元から切り離されるとそのまま浮き続け、アウラの周囲にとどまっている。


「何でもアリになるのが私らじゃぞ。よく考えて攻撃手段を選ぶんじゃな!」


 アウラが一歩踏み込み、瞳が煌めいた瞬間、槍を攻撃から防御に切り替えて地面に突き刺す。

 すると、アイヴィスの足元の魔法陣が一層青く発光すると彼女の目の前で薄いガラスが割れたように破片が飛び散った。


「何でもアリなのは同じやぇ?そっくりそのまま返しやしょ」

「ケッ、言いよる」


 槍を地面から抜き取ると刀身沿って紅く一筋の光が手元から伸びていく。

 光は先端まで来ると水が流し込まれるように光球として充填され始め、すぐさま光が強くなる。

 目も向けられないほど光が強くなるとその矛先をアウラへと向け解き放った。

 その光砲は質量をもっているのか周囲の紙が勢いよく空に舞い、空気が擦れるような轟音が唸る。


 これまで構えているだけで何も出来なかった男は遠距離にアイヴィスが切り替えたと確信しすぐさまこの光砲にあわせ引き金を引いた。

 周囲のビットがそのままアウラへ向けて光弾を空間を埋めるが如く放ちアウラへ接触、侵食せんと飛び出していく。


 対してアウラは面白がっているのか腕を広げ、瞳が金色に輝くと今度は男と全く同じようにしてなにやら呼び出した。


「自立兵器を合わせるというのはなかなか悪くないと思っておったが……ただただ砲台にして弾を放つなんて一辺倒じゃまだまだじゃのう!」


 アウラの周りにはこれまで散った破片が吸われるように集まり渦を成していく。

 男とアウラでは権限の度合いは大差ないがまだ男の方が上にある。

 男は何が起こるにしても良くないと判断し直接アウラの行動を封じるように創造を働かせた。

 権限へのアクセスと遮断が互いに繰り広げられ始める。

 アウラが男が意図しない所から侵入し創造を始めれば男がそれを感知してより上の権限の元に拒絶する。


 次第に侵入と拒絶の頻度と創造にともうなう理への介入深度はこの世界の特性に反映され、紙が生み出されてはその理の本の元へと送られようとするが物理的に力と力の衝突に巻き込まれて消失を繰り返すようになっていく。

 時たま意図せぬ運用に理同士ですれ違いと矛盾が生み出されるとそこから無が溢れ、世界に穴を開ける。

 不意にアウラの口角が上がった。


「どうしたのかの?まだまだ私はやれるでな!」

「……っ」


 男の顔が曇る。

 ここが部屋なのが幸いだ。

 ただでさえ理に関した本が今、矛盾に挟まれてオーバーフローを起こして自壊しつつあるのだ。

 もしもこれが手前の書庫や入口であれば巻き込まれた本は情報と存在ごと消え、またたく間に世界は混乱に陥るだろう。

 さらに言えば、矛盾をアウラに突かれ、対処に困るだけではない、矛盾は現実に無として現れ周囲に伝播してしまうのだ。

 それこそ、一つあれば何個あるかわからないほどに。


「こういう世界はの?少なくとも我々が力を振るえぬようにするべきじゃったのう?どんどん壊れてしまうぞ?」


 アウラのもう片方の腕が光とともに白いものへと溶解する。

 彼女の瞳は今度は紅く輝くとそのまま一筋の光を放ち権限の殴り合いをしていた男めがけて飛んでいった。


「くっ!」


 すかさず男のビットが間に入ると身代わりとなって蝕まれ、風化する様に消滅する。

 しかし一発だけではない、そのままアウラはまた一発、間髪入れずにもう一発とどんどん撃ち込んでき始めた。

 それと同時に権限の侵入を行っているのだから男に負荷がかかっているのは言うまでもない。

 霞む視界と薄れゆく存在に冷や汗が流れる。

 引き金を引く手が緩んだ。

 人間的部分が残っていた男は視覚外の攻防に処理が追いつかず、そこに漬け込んだアウラが根幹の理に侵入し始めたのだ。

 アウラの光砲がついに男の守りを食い破ったその時だ。


「……っ」

「……全く、情けないんやぇ。うちの創造主がこうなるとうちもこまるんやぇ……あんさんもそろそろ成果をだしてくりゃれ?」

「ッ!ブモオオオオオオオッ!」


 突如として牛頭の【守護者】の雄叫びが音として周囲に伝わった。

 その瞬間、アウラは何かに気が付いたようでハッとしてやられた、という顔になった。


「音が聞こえたならそれはうちらとつながることになるんやぇ、なぁアウラ様?」

「……っ……よく気が付いたのう!」


 男の目の前にアイヴィスが割り込んでそのまま流れるように槍先から光砲を放ちアウラの攻撃を相殺し始め、向かってくる物理的な攻撃をすべて薙ぎ払う。

 アイヴィスの足元の魔法陣が輝くと彼女の背中に別の魔法陣が浮かび上がった。

 槍を持ち直し、そのまま円を描いてから地面に突き刺す。


「ここで戦えること、本当に幸運やぇ」


 彼女の背後の魔法陣が光を放ち始めた。

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