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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第十三節 加速
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これは何の本

 しばらく進んで次第に最深部と思わしき場所へ踏み入れる。

 遠くには通路の終わりが見え、この周辺にはすでに本棚すら置かれていなかった。


「……ここは……まぁ私と神様の物ぐらいしかないだろうが……ん?」


 身の丈以上の大きな扉の前に来た、どうやら通路の終わりは扉だったようだ。

 男が手を当てると先ほどの鍵の時と同じようにするりと扉が開かれ、開けた場所につながった。


「ほう……!」


 その空間はため息が出るほど美しい、と感じた。

 その部屋はここまでの保管というよりは最早各当する二冊の本を祭っているような空間だ。


 その二冊の本はかなり版としても大きく、金色の表紙であった。

 抱えるほどもあるそれは台座から浮いており光を受けて輝いている。

 二冊の唯一の違いは片方が鎖で包まれ台座から飛び立たぬようにされている事だ。


 鎖の意味が分からぬが、片方は私のでもう片方は神様のであっているはず。

 そう思い、まずは鎖のない方に手をかけようとする。


「まずは楽な方から……っ?!」


 触れた瞬間、血が通ったかのような液体がこみ上げる感覚が手を伝わり思わず手を引っ込めてしまう。

 手のひらを見てみるが変化はない。


 落ち着いてもう一度触れてみると、やはり同じような感覚がこみ上げる。

 しかしそれでも二度目、もう最初のようには驚かない。


 期待と不安に挟まれながら、男は一呼吸おいていよいよ表紙を開く。

 光が僅かに溢れ、内容が現れる。


「ん……?これは……」


 驚くことに内容は私のものでも神様のものでも無かった。

 何度見返してもその内容はマキナについてであったのだ。


 権限諸元から仕様、果てはバックアップ記録、改変記録に至るまで事細かに、まさに世界に関与したこと全てが書かれていた。

 めくるにつれて次第に私情を覗いてるような気にさえなってくるので半ばで本を閉じ、元の場所へ何事も無かったかのようにこっそり戻す。

 流石にいい気持ちのするものでは無い。


 しかしここでアウラの本はどれだ?ということになり、或いは隣の本が神様のであれば私の本はどこだ、ということになる。


 他に本はないかと部屋を見回してる。

 しかし空間にある台座は二つのみ、他に本を置く余地はない。


 部屋を歩き回りながら無いものかと探していると華やかさと美しさとは対照的に黒い一冊の本が影に紛れて転がっていた。


 大きさも至って普通でここに来るまでに通った書庫に置いてあるようなものと大差は無く、むしろ薄汚れており紙に至っては日焼けしボロが出始めている。

 これまで見たどれよりも古いことをアピールするかのようなわざとらしさまで垣間見得る様なその本には『全能者All・All』とタイトルが付いていた。


「なんだこの題は……?」


 そもそも題名がついている時点で奇妙である。

 これまで見た本は例えトールやマキナの本でさえ題名は書いていなかった。

 それに加え造りが違う、まるで外から持ち込まれたかのような本だ。


 中には何が書いてあるのか、場違い感のある本に違和感と興味の境で恐る恐る表紙をめくったが……


「……全く読めん」


 かすれて読みにくいだけではない。

 そもそもこの言語を知らないのだ。

 この世界の住人の言語であればいかなる変化を遂げてようと創造主はどんなものでも読めるし不自由なく意を伝えることも可能だ。

 それなのに読むことが出来ない、つまりこの本は世界の異物である。

 この世界で異物として存在する者で私と同じ権限帯に居るのは神様しか居ない。

 これは間違いなくアウラの本である。


 パラパラと紙をめくって何か挿絵からでも情報は得られぬものかとページを進め始める。

 最初の理解が及ぶ挿絵は惑星についてだった。

 構造が種類別に事細かに描かれている。

 何やら注釈らしきものも見えるが残念ながら読めない。

 加えて、動植物の生体サイクルや維持される数量についても図のサイズで示されている。

 中盤に差し掛かったあたりか、急に挿絵に人の顔が混じり始めた。

 初めは猿から始まり動物の図鑑のようなものかと思ったが次に進めば進むほど人の顔である。

 唯一読めるのは数字の羅列……恐らく神様基準での暦か?

 つまるところアウラに関係がある人なのだろうという所までは考えが及んだ。

 あるところまで行くと男も写真で知るような人々が並ぶ。


 さらに後半へ進み、とあるページでめくる手を止めた。

 この姿は……アウラだ、白い人型の存在。

 その背後にはあのジュノーがなにか祈るような姿をしている。


 と、ここで男はその彼女がこれを読めるのでは、と思いついた。

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