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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第十三節 加速
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情報回廊

 書かれていたのはマキナがアウラ下となった世界の方にいると示したものであった。


「そうか……ああ、そうかそうか……」

「実は報告を受けて書き換えを阻止すべくことに当たっていたのですが……あの時私が一度創造主様の元に行った隙に現地へ近づいたらしく……その際に」

「こういう報告は早めにしてくれ……糞っ!……どうなっているんだ……?」

「申し訳ございません、世界を取ると思いましたので」


 頭を下げるトールの言葉は【守護者】特有のものである。

 私はマキナか世界か、被害にもよるが作り直しになってもマキナを選ぶだろう。

 世界は私にはいくらでも用意できる。


「……お前達はそれが正しかったな。まぁこれはなんだ、私の気分とでも……思ってくれ」

「かしこまりました」

「……まぁいい、マキナは追い出しの後に向こうに行けたんだな?」


 半ば苛立ち気味に言ってしまう。


「はい、私は行けませんでしたので」


 このマキナだけが行けた状況からすればアウラが直々に選んでいる可能性が高い。

 となると、私は行けないだろう。


「……向こうにいる【守護者】で連絡が取れそうなのはいるか?いや、そもそも連絡は取れるか?」

「残念ながら現状取れていません」

「……ちょっと待っててくれ……」


 光球を手に取り世界に手を加える。

 することは強引で単純、情報を別の世界に鏡面的に保存するようにし、無理やり世界に侵入口を作るのだ。


 他世界の情報はすべてその世界へ移し取られ、そこの情報はすべて他の物へ還元される。

 この世界の情報を弄れば他の世界に反映される寸法だ。

 見た目は私が使いやすいように大図書館でいいだろう。

 並ぶ本は個々の情報、飛び交う紙は個々の意思と言葉。

 隣で見ていたトールが口を挟む。


「そんな場所を用意してよかったのですか?下手をすればアウラ様どころか住人に使われかねませんよ」

「今の神様にさえばれなければ構わん。ここを経由してマキナに帰るよう指示をする」

「……跡をつけられませんか?」

「その時はその時だ。何、情報しかない所に異物が入れば嫌でもわかるさ」


 アウラとて元あるものが変えられたのに気がつくのは意識が世界に広がっているからに違いない、流石に新しくできる場所にすぐさま意識が行くとは思えなかった。


 やがて世界が組み上がる。

 またたく間にほかの世界の情報が移し取られ溜め込まれていくのが光球に映し出された。

 腰を上げ研究室の出口へと向かう。


「さて、私は向かうかな……トール、ここの管理を任せてもいいか?【守護者】を増やすまでで構わないんだが」

「大丈夫でございます。しかと承りました」

「今後仮に【守護者】が消えた場合その管轄はお前に任せる。差し当ってお前には今後必要になれば自分で【守護者】を用意してもらうかもしれん」

「心しておきます」


 頭を下げるトールを背にそのままドアノブに手をかけ外に出る。


「なにか先の件も含めてあれば連絡するように」


 図書館を思い描きながら暫く歩けば視界に膨大な本棚と本が入って来た。

 なかなかによく出来ている。


「ここ……で間違いないな」


 外という概念も光源もないのにも関わらずほのかに外壁の窓から暖かい光が射し込む。

 ダーク調で木造のその空間は中央のホール状の場所を吹き抜けとして幾重にも階層を積み重ねており、その奥は回廊と言っても差し支えない見た目をしていた。

 頭上には紙が本棚と本棚の間を飛び交い、さながら鳥のようである。


「今の所、思い描いた通りか……」


 回廊をそのまま上へ、奥へと進んでいく。

 次第に空気が変わり段々と飛び交う紙もまばらになり、本の装丁も次第により重厚なものに変わっていく。

 この辺りはどうやら【守護者】や我々の情報の様だ。

 飛び交う紙もよく見れば一冊の本へ向かっている、あれはトールの物に違いない。

 一冊ごとの厚さも大分分厚くなっている、確かに住人に比べれば当然情報量は増えるか。


 さらに奥へと進むと図書館というよりは書庫の体をなしていく。

 灯りは暗くなり段々と温度も下がっているようだ。

 不思議な事にここの本棚は空きがある。

 こちらが実は【守護者】の区域だろうか?それにしては数が明らかに足りない。


「……はて、なんの情報かね」


 試しに近場の本に手をとってみた。

 硬い革に近いが異なる何かで装丁されたそれは確かに装飾からするに豪華だがタイトルは無い。

 さらによく見れば鍵が付いている。


「鍵か……鍵……」


 と、どうしたものか、諦めて戻そうかと思った拍子にカチリと音がした。


「ん?」


 なんの拍子か、はたまた創造主が手に取ったと判断したのか鍵が解けてしまった。

 後で不味いかなと思いつつもそのまま表紙をめくる。


「まぁあとで戻せばいいだろう。書き換えなければどうということは……」


 そこに書かれていたのは世界の理であった。

 確かにここにはすべての情報が……とはしたがまさか理までこうなるとは私の思慮の甘さか。

 中身は確かに理の一部で間違いはない、面白いことに改変履歴まできっちり記されていた。

 しかしまさかの弱点を作ってしまった、何とかしてこれを隠さねばならぬ。


「……踏み込まれた際に弄られては困るな……檻にで仕舞っておくか」


 こうして図書館の最奥地には檻の壁が作られることとなる。

 男はさらに奥へと踏み入れた。


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