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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第2節 文化成長編
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カゴちゃんとただの聖剣 ①

「鍛冶の神として送り出した子が寄り道して剣を見失った挙句【鍛冶師】に拾われて暮らしているんだ……」

「帰ってくれば送りなおすこともできるんだがのう……しかしかわいがられているようじゃのう……」


 そういいながらマキナ含めた3人で研究室から鍛冶の神の様子を見ている……のだが【鍛冶師】に囲まれて泣きじゃくりからの工房に住まわされるようになるまでの流れを見たのだ。

 

「オリハルコンの剣じゃなくてもなんとかなるんだけど体裁がつかないんだがな、代わりの剣でも送り込もうか……」

「おとーさん、おとーさん、剣を送り込むならマキナを使ってほしいの、マキナはおねーさん、【オリジン】のまま馴染める。」


 そういってマキナは胸を張る、いやかわいらしい、がここでは要件が違う。

 マキナがそのままの姿で送り込むというのはスムーズにプランの移行を示せるという意味だ。

……念話という手もあったがどうやら概念を追加しないといけないらしいので今回は見送った。


「そうだな、なら剣はトールに作らせればいいか。彼なら世界に合った代物を作れるだろう……というかおそらく彼はもう作り始めてるかもしれないな……」

「えぇ、マキナはトールと交代していました……おそらくすべて見ていたかと思いますわ……」

「まぁ自分の本業の神様があれではな……あとで慰めてやろう」


 トールはマキナと交代で世界の状態を常に観察しているはずだ……要するにこちら3人が見てないところからことの顛末をすべて見ていたことになる、おそらく内心かなり怒っているだろう、彼女をデザインするうえでトールにも印象を考えてもらったからな……と考えていると


「そ、創造主様。お、お願いがあるのですが……よろしいでしょうか……」

「あ、案の定きましたわ……トール、心中お察ししますわ……」


 トールが息を切らしながら研究室に入ってくる、手にはやはり剣を持っていた。

……剣を持ったことがない男にもわかるほどその剣の刀身は美しく、装飾も細部まで凝られているのが分かった、おそらくトールはこれを即席で作り上げたのだろう。


「……トール、その剣を届けにいかせてほしいというのだろう?」

「そうでございます……私も【鍛冶師】の端くれ、あのような事態を見てしまっては何とかせねばと思いまして……」

「もちろん許可する。ただマキナも連れて行ってほしい。何かの役には立つはずだ、ついでにしばらく世界を自由に見てくるといいだろう。そのうちまた降り立つからな。」

「………?かしこまりました。このトール、いかなる手をもってしてもマキナ様をお守りします。」


 二人とも【オリジン】なんだからおそらく何もしなくても問題にはならないだろう、むしろ力の行使だけはしないで済むのが理想だ。


「……頼むから穏便にな」

「じゃぁおとーさん、いってきます」

「楽しんでおいで、いってらっしゃい」


 そう言ってマキナとトールを送り出す、なぜかとても心が寂しく感じた。



「カゴちゃーん!これなんてどうだ?」

「そうですねー……んー……ここのゆがみ直せます?そうすれば大丈夫だと思います」

「カゴちゃん!次こっちもみてくれー!」


 カゴちゃんとは、【加護】ちゃんこと鍛冶の神である。

 あの日名前がないことも言ってしまった結果【鍛冶師】の男たちが【加護】ちゃん呼びだしたので利用していた【冒険者】やら【騎士】やらみんなが看板娘だとおもってカゴちゃんと呼び始めて定着してしまった。

 【加護】は当然ポンポンつけていいものではない上に、彼女もそれは理解しているので能力大盤振る舞いとまではいかないが【鍛冶師】たちにとってはしっかりとしたものには確定で【加護】をつけてくれる少女が舞い込んできたのである、加えてかわいいときたら男たちの顔も明るい。  

 【加護】自体どうしてつくかわからなかった上にいい物につくぐらいしかわかってなかったのだから当然と言えば当然の帰結である。

 逆にカゴにとっても幸せなものだった。

 存在を消されるとまで危惧していたが今は消されていない、ばれていないことはないので今後もその可能性は薄い、加えてこの世界で能力を包み隠さずにいられる上にここでは素晴らしい武具がつくられるからだ、周囲の人々もよくしてくれている、剣のことさえなければ……


「……ここでございます。マキナ様」

「ごめんください、ここで武具を扱っていると聞いたのですが……」


 現場の空気に異様に似合わない【ヒューマン】と【ドワーフ】がやってきた、【ヒューマン】の方は誰が見ても美人でその仕草一つ一つから品の高さがうかがえる、【ドワーフ】の方も執事で老齢に見えるが背筋は伸びており、その目つきはかなり鋭い。


「……こんなところに貴族のねーちゃんが何の用だ」


 【鍛冶師】達はかなり警戒している、カゴの存在自体は皆が知っているが彼女が【加護】をばらまいているのは工房内だけの秘密だ、表向きはあくまで拾われた看板娘、この貴族がもし彼女を奪いに来たのであれば大問題だ。

 しかしながら【冒険者】には見えないので工房に来るような娘ではない、一体何をしに来たのであろうか。


「……別に問題を起こしに来たのではありません、彼女にこれを渡していただけますか?渡せば彼女は理解するとおもいます。」

「剣……?ちょっと見せてもらってもいいか?」


 そう言って【ドワーフ】の従者から剣を受け取って驚愕する、何だこの剣は。

 手に触れた時点で魔剣、神剣のような呼ばれ方をする代物だ、魔力を放っている時点でおかしい。

 剣に限らず物品はすべて差はあっても魔力を吸いこもうとする、生物も吸おうとするので生物側が数値からが強ければ対して問題はない……のだがこの剣は逆だ、明らかに強大な力で魔力を放っている。

 魔力を放ち続け保有してた魔力が空になれば物体は形を維持できなくなり壊れる、しかしこの剣はどうだ、一体どんな鍛え方をしたら法則を無視するような業物が出来上がるのか……


「……とんだ業物だな、渡せばいいのか?」

「ええ、お願いします」

「その前にこの剣について調べさせてくれないか、俺だって【鍛冶師】だ、こんな業物見せられてそのままなのは気になって仕方がねぇ。」


【鍛冶師】の男には彼女らは関わったら大変なことになりそうだと思いつつも剣を調べてみたい気持ちもあった、こんな業物一生で見れない方が普通だ。


「……トール、如何しましょう?」

「そうですな……【鍛冶師】殿、貴方の作品を何か見せてくだされ、それに……」

「なるほど、そういうことか、ちょっと待ってろ。ついでにその目的の娘も呼んでくる。」


 そう言って剣を返すと工房の奥へ消えていった。



「おい、カゴちゃん!何だってんだあの二人は!」

「ひ、ひいっ、え、えー……と前に話してた私の神様の娘と【ドワーフ】……です……」


 【鍛冶師】の男はカゴの肩を揺さぶりながら興奮気味に聞いた、面ではぶっきらぼうに答えていたがそうでもしないとあの剣を触りたい衝動は抑えられなかったのだ。

 カゴも実は来店時には表に出ていたのだが来た瞬間に奥に逃げ込んでいた、ついに消されると思ったらしい。


「お前に渡すとか言ってとんでもない剣を出してきたぞあいつら。本当に大丈夫なのか?」

「た、多分滅ぼしたりはしないですから…多分……」


 そう言いながらカゴの目は既に死んだ魚のように濁っている。


「はー……オリハルコンの加工依頼なんてとんでもないもの引き受けちまったなぁ……短剣のままで良かったろ……」

「あ、そのオリハルコンの短剣作ったのがあの【ドワーフ】ですよ」


 おいおい……冗談も程々に……と思ったがカゴちゃんも冗談みたいな事実だったので恐らく事実なのだろう……あの業物もその【ドワーフ】の作品に違いない、その剣を調べられることは相当大きな価値があるのではないか。

……【鍛冶師】としての大一番というわけか……


「カゴちゃん、とりあえずあの二人は安全なんだな?」

「え?えぇ、そのはずです。」

「分かった……じゃあこれを見せても大丈夫だろう、俺はあの【ドワーフ】と話がある、カゴちゃんは【ヒューマン】のねーちゃんと話してこい」


 そう言って出してきたのはオリハルコンの魔導盾、先日の余りのオリハルコンで作り進めていたものだ。

 防具は見せれば弱点も見せることになる、脅威相手に防具の弱点を教えるのは自殺行為に等しいのである。


「……生憎これしかない。どうだ」

「……そうですね、オリハルコンの加工方法は教えてなかったのでそれを加味すれば上出来ではないでしょうか。【加護】は目をつぶりましょう」


 【加護】までばれてるとはやはり本物……この【ドワーフ】よく見たらただの【ドワーフ】じゃないじゃねぇか……


「そうですね……剣を調べさせてもいいと言いましたが気が変わりました。一本鍛えさせてください、鋼で。」

「は…?あれで作ってもまともな剣には……」


 いや、この【ドワーフ】の鍛え方が見れるのだから素直に見ておこう……

 そう言って【鍛冶師】はトールを工房に案内し剣を作る様子を観察することにした。


(最後の最後にあった誤字を直しました)

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