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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第十二節 歪み
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模擬戦の行方

「ふぅ。まぁ思ったより食らっちゃったかな」


 晴れていく煙の中笑いながら現れた彼女はまさに戦闘狂と言われてもおかしくない光景であった。

 ボロボロになった贋作を未だに掴んだままなのが余計に恐ろしさまで付け加える。


「…………」

「……まぁ流石に劣化品には無理だよね」


 ジュノーの代わりに粗方の光弾を受けた贋作はぐったりしており、もはや再起不能と見える。

 ところどころ身体を成すパーツは消え失せ、存在としても不安定なものになってしまった。

 本物はそんな贋作をモノのように扱い、視線一つやらずに持ち上げると瞳に力を込める。

 満身創痍の贋作も残った部位の動きから最期に逃げようとしているのは男からでも分かるが、その抵抗にはなんの意味もなくそのままジュノーの瞳によってかき消されてしまう。


 綺麗な見た目しておいてとんでもないことを平然とやってのける姿には流石に残った人の部分が男に恐怖を示した。


「平然と……よくやるな」

「ん?これがやり取りさ、僕は僕で気を抜けば存在が飛ぶよ」


 ……改めて彼女が戦い慣れていることを知らしめられた。

 今でこそ笑っているが先程煙から覗いた彼女の瞳は思えば直ぐに恐ろしさが蘇るほどだ。

 流石にここで一度止めておきたいとさえ思う。


「……一度ここらで辞めにしないか?」

「どうしました?まだ僕は大丈夫だけど……」


 彼女が大丈夫という話ではない、私が宜しくないのだ。

 流石に今の段階では万策尽きた、彼女の直接の指南が欲しい。

 そして再び贋作のようなビットになりうるものを作った暁には彼女がどうなるかわかったものでは無い。

 あとは彼女が同意してくれれば直ぐにでも切りあげたいのだが……


「んー……多分万策尽きたとかですね」

「……そうだ、こうも対応されちゃ今の私には打つ手が思いつかなくてね」

「なるほど……じゃあ尚更もう少しやろうか?ちょっと私のコピーを使うにしてももう少し似せてもらわないと!」

「……は?」


 彼女の返答は同意ではなかった。

 それは継続の宣言であり、策が尽きたことを明かしてしまった男には地獄の始まりであった。


「なかなかに自立した物を使うのはいい考え。ただ……見た目が僕なのに中身が劣化も劣化なのは嫌なセンスだけどね」

「そ、そうか……」

「それに、実際のところ私の意識をそらすなどたしかに有効だったし……だから違うものにするかもう少ししっかりとしたものを作れる様にすればいいさ」


 そう言われるがいざそんな自立兵装を作れと言われてもやはりジュノーぐらいしか思い当たらない。

 まぁ……彼女に差し当たりないように適当に見た目だけぼかすことにしよう。

 彼女を真似るのは無理だろう、作ったところで彼女に性能的に成りきらないのが関の山だ。

 幸いにも彼女は見た目は天使を模している、その辺で折り合いをつけることにしよう。

 別に一人でいる必要は無い、数は……とりあえず三騎もあれば評価に足るだろう。

 そして彼らは【守護者】ではないし生命でもない、私の武器の一部となる。


「これなら文句はないかな」

「……いいね。私の見た目してないこともいいね、実にいい」


 その自立兵器を見たジュノーは非常にその自立兵器たちに満足してくれたようだ。

 生み出された自立兵器たちとは天使、要は創造主の使いである。

 ジュノーのように奇々怪界な装備こそないが【守護者】ではないので世界の理に縛られることはないまま力を振えるだろう。

 生み出された彼らはただ私の前で来るべき時を待ち構える。


「そうそう、そう来なきゃ。でも……僕も流石に四対一は苦手だし、もう一段手加減を無くそう」

「まだあるのか……」

「そりゃもちろん。まだまだここら辺じゃ何度も使ってるから奥の手にもならないね」


 そうは言うが彼女は特に何か用意したようにもなにか準備しているようにも見えない。


 今度は何も合図はない。

 ただ二人と三騎が無を過ごす。


「……っ」

「ふふっ」


 ジュノーの策が読めない、動きを待つかと思えば笑い、リラックスしてる様に見える。

 この際仕方がない、男は引き金を一度引いた。

 この引き金は弾を打ち出す引き金ではない、三騎を動かす引き金だ。

 三騎は三様に飛び出しジュノーを囲うように襲いかかった。

 男はさらに引き金を引き弾幕を創り出す。


「クスッ……まぁそうなるよね」


 ジュノーの微笑みがリラックスしたものではなくあの企みが通った時の顔に変わったのを男は確実に見た、あの先程煙を抜けた時の目に間違いなかった。


「……これが創造主とその【守護者】の戦いさ!見えるだけが全てじゃないよ!」


 翼を展開し、太陽の光を背負うように腕を広げる。

 そのまま背中からおぞましいほどの手が伸びてくる。

 明らかにそれは男やアウラが行使してきた【創造】と同じ域のもので、それをジュノーはなんの負荷もなく使いこなしているではないか。


「なっ……君は【守護者】じゃないのか?!」

「【守護者】でも然るべき手段を取れば出来るのさ!さぁ今回はここで止めにしよう、フィナーレだよ!」


 手が三騎を掴みそのままジュノーの背中へと引きずり込む。

 そのまま手は男にも伸びてきて男の転移ですら無視して男をジュノーの元へと攫う。


「な、なんだこれは……」

「おっと、危ない危ない」


 三騎はそのままジュノーの背中に取り込まれて霧散してしまうが男はジュノーの持つ例の剣によって救い出される。

 どうやらそのまま取り込まれれば三騎と同じようになってしまう恐ろしい代物の様だ。

 創造主相手に容赦無さすぎなんじゃなかろうか……


「さぁ答え合わせ……しようか」


 戦闘から離れたときの無邪気そうな笑顔すらこれ程恐ろしいと思ったことは無い。

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