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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第十二節 歪み
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仕切り直し

 恥ずかしがっていたジュノーに対して男はかなり焦っていた。

 これで勝てると思ったのに耐性まで作られたのだ。

 いよいよできそうな有効打に限りが見えてきた、一体何をすればいいんだ……?


 距離を詰めさせないためにとりあえず引き金を引き光弾をとめどなく生み出す。

 しかしとりあえずで作ったものに優位性はあるはずも無く、ジュノーは軽々しくかわしてしまう。


 彼女に勝つことは不可能なのか?

 仕切り直した後から容赦なく前回最後に使用していた翼からの光弾も使ってくるようになり、余計こちらの弾が届きにくくなった。

 段々と慣れてきたのか弾の出し方に思考を割く必要が無くなり弾の生成数やバリエーションも増やしやすくなってきたとはいえ届かなくては何も戦況はうごかない。


 そもそも彼女の仕様の穴が見抜けないのだ。

 ジュノーはアウラが男が元いた世界から連れてきた【守護者】。

 しかし彼女が何を守護していたのかは知らないし、そもそも何を権能として持った【守護者】なのかすらわからない。

 模擬戦前に記憶を探しがてらその辺も見てみたが彼女が何かを守っている描写は無かったのだ。

 自然に囲まれて和やかにしている記憶か、何かと戦う記憶しか無かったのである。


 そんな焦る創造主を確実に処理能力で限界へと追い込む彼女は段々と翼から発する光弾の数と速度を引き上げた上で男に斬り掛かる。

 それに対応しようとする男の差し込む壁の厚さ、数、生成速度の限界はそう遠くない。

 創造主とて処理能力を超えてしまえばどうしようもなくなる。


 歩を進め位置を転々と変えながら策を巡らせながらも貧乏揺すりの如く引き金を引き続ける。

 そんな中、遂に男は焦ったあまり作るものを間違えた。

 思わず「あっ」と声がでる。


「え?」


 そのまま飛ばされてきた『手違い』にはジュノーも驚きを隠せなかった。

 慌てた作ってしまった物、それはまさに今相手をしているジュノーの影とも言えるようなものであったのだ。


 恐らく性能は本物の半分にすら満たないだろう。

 それでもその『手違い』は男が把握するジュノーであり何より動くものが男一つから二つに増えたことは大きな変化をもたらした。


「…………」


 無言のままジュノーの贋作は翼を展開し、光弾を縦横無尽に放つ。

 しかしこれは先程の弾密度に毛が生えたようなものだ。


「いきなり僕を出すなんてね。でも紛い物にも足りないこれじゃ……って!」

「…………」


 ジュノーが喋っていようとも関係なく斬り混んでいく贋作。

 見てると翼を器用に防御と攻撃に利用して斬り掛かる時には鎧代わりにし、離脱時には弾をばら撒くなどを繰り返している。


「…………」

「最後まで話させてくれよ!もう!」


 その贋作は次第に本物のジュノーと似たようなパターンで本人に幾度となく襲いかかるようになった。

 よく見れば手に持っているのはジュノーのものと同じ例の剣で何故かこちらには刀身があるせいで別物に見える。


「あぁもう、うっとおしい!」


 流石にしつこいと感じたのか段々とジュノーも贋作に対してはかなり力任せに吹き飛ばさんと殴りかかり始める。

 剣があるにもかかわらず柄で贋作を殴る光景は異様としか言えなかった。


「……同じ自分ならまだいい、変に劣化してる自分相手はうんざりするよ」

「いや、まぁなんだ……すまないね」


 なんとも気の毒な、その状況は男に謝るぐらいの余裕を与えた。

 そしてもう一つ、アクティブな動体が増えたおかげでジュノーにとってターゲットが男一つから男と贋作になった。

 ジュノーは二つを同時に狙えると言っても先程よりも彼女の攻撃を処理しやすくなったのだ。


 更に贋作は接近戦を好むらしい。

 これは男と相性がよく、贋作が接近戦をする際には男は再び冷静に引き金を引けるようになった。

 そして接近戦を持ちかけられている間はいくらジュノーと言えど若干だが男からの攻撃へと注がれる意識の度合いが減るのだ。

 これは奇襲にしろ挟撃にしろ優位になれる可能性が増したことを示す。


 男は贋作の背後から縫うように弾を飛ばし死角からの攻撃を狙う。

 そのまま贋作が斬りこんででジュノーにいなされた時にはもう弾は彼女の目の前だ。


「っ……!」


 ここに来て初の命中弾……とは言っても、既に勘づかれていたのか贋作の方を見ながらも器用に翼をそのまま防御へまわして弾を受け止めていた。

 しかしそこで効果薄しと攻撃の手を緩めない。

 威力よりも速度と弾密度へ重点を注いで受け身になったジュノーへ弾幕を貼り続ける。

 時折威力の高い弾を混ぜることで防御の解除を遅らせることに成功した。

 贋作はそんな状態にこそ斬り掛かる。


「…………」

「てはまだ塞がってないよ!」


 しかしそこはジュノーだ。

 瞳に力を込め遂に贋作を直接破壊しようと力を振るう。

 贋作もこれには危険と判断したようでジュノーへの踏み込みを浅くして直ぐに防御へ周り己の崩壊を防ぐように死角へ入ろうとした。


 視界へ入れようと贋作を追いかけ男から目線を逸らした瞬間、待ってましたと言わんばかりに弾の威力と数をありったけのジュノーへ放つ。


「しまっ……!」


 ジュノーの姿勢がついに崩れる。

 二戦目ながら、男は初めて一本取れたかに見えた……が。


 爆煙が霞む。

 中から現れたのは贋作を鷲掴みにして盾にし、被害を受けども軽傷で済ませた本物の姿であった。

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