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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第十二節 歪み
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再戦

「さて、僕も同じ手は使いません」

「……ほう?」


 先程のであればかわせば……と思っていたが、どうもそうはさせてくれないらしい。

 そう言って手を空高く掲げた。


「……これが一番使い込んだ僕の主兵装さ!」


 そのまま何かを掴んで胸元へと下ろす。

 そして彼女の手に握られたのは剣とは言い難く、それの柄だけのものであった。

 柄だけなのにも関わらず彼女はそれをしっかりと重さがあるように振り、刃はなくとも何故か風切り音が聞こえる。


「どうかな、不思議かい?」

「……ああ」

「まぁ種明かしは終わってから、で。じゃあ始めようか、そっちはいいかな?」

「もう大丈夫だ、いつでも構わない」

「それじゃ……始め」


 瞬間、彼女が消えた。

 しかし創造主の前で存在を消すことは出来ない、なれば動いたのだ、視界外へ。

 男は全方位へジュノーを炙り出さんとありったけの光弾を放つ。

 やはり後方で間違いないらしく放った弾が消えたのを感じた。


「そこか!」

「ご名答、でも探すものを間違えたね!」


 ジュノーを探すよりも射点を探すべきだと分かるまでに数秒もいらなかった。

 まだ焦るべきではないと一歩踏み出し射点の裏へと飛ぶ。


 そのまま冷静に三度引き金を引いて光弾を放射状に散射、さらに大型の光弾を並べて束にし、それを彼女を囲うようにジュノーへ放つ。

 これは命中目的ではなく誘導のためだ、速く動くならばまずは足を止めるべきだ。


 しかしジュノーも今度は避けたり、迎撃するだけではない。

 平然と光弾を掻い潜り男へ刀身の見えない剣を振るい、首元へと突き込んでくる。

 その踏み込みには全くを持って躊躇いがないように男には見え、なかなかに恐ろしい。


 しかしこのまま突かれる訳にはいかないので男も容赦なくジュノー本体に壁をぶつけ軌道をずらさせる。

 その際声をあげないので動揺せずに済むことが有難い。

 それでもジュノーには一瞬顔が歪んだことを悟られたようで「気にしなくていいんですよ、気にしたら死にますから」と呆れられてしまった。


 戦いながら男は如何にジュノーを降すか考える。

 そもそも彼女が速いお陰で大差はないが刀身の分の間合いが全くわからないのが厄介だ。

 加えてこれまでの光弾は問答無用で断ち切られたり、見えない刀身に弾道を逸らされている。

 弾には男が定めた目標へといかなる手段を以てしても追いかけ、当たればたちどころに存在と概念にダメージを与える様になっている……はずだ。

 それを逸らせるということは先程壁が『分かれた』様に何かしらしている刀剣で、ただ見えない刀身があると言うだけではないという事を表している。

 足を鈍らせ、あの武器を無力化し、最終的には彼女の翼も無力化せねばならない。

 実に厄介で何かしらの新しいアクションが無ければ切り開けないだろう。

 ではどうするか、彼女を含む環境を変えてしまおう――


「そうだな……君はただの一人の少女に過ぎない」

「……?!」

「さぁ何故、創造主たる私の前にいる?」


 ジュノーを作り変える。

 実に強引な無力化だが間違いはないだろう。

 彼女の顔が歪む。


「っ……なかなかに……考えたじゃないか……」

「環境さえも自分の物に、と言ってたからね」

「流石に、模擬戦でやるとは、ね……」


 そう言って顔をゆがませながら彼女は驚くべき行動に走った。

 柄をそのまま己の身体へ向けそのまま突き刺すように胸に当てたのだ。

 そしてその柄を胸元から腹部にかけて刮っ割くように下ろした。

 割かれた衣服の下からキメ細やかでしなやかな肌が顔を覗かせるがそれどころではない。

 突然のことに男とて驚かずには居られなかった。


「なっ?!」

「――構築完了」


 ニヤリと笑ったジュノーの切り口から食い破るように手が伸びてくる。

 そのまま腕が柄をジュノーからうけとった瞬間にジュノーは糸が切れたようにだらりとしてしまった。


「……僕達は身体だって使い捨てるさ」


 ジュノーの声がする。

 どこからだ、と思えばやはり胸元の切り口からだった。


「後で元に戻してもらうから、覚悟してよね」

「環境を変えても……君は耐えるのか……」

「僕だって伊達に【守護者】してないからね」


 そのまま二本目の腕が出てくる。

 いよいよ切り口がその二本の腕によって広げられ、中身が顕になった。

 一回り小さくなったジュノー本人である。


「外見を犠牲に情報を得て耐性を作る、こうやるのさ!」


 男はこれを聞いた時ワクチンを思い出した。

 抗体を作るためには一度感染した物が必要だ、外身を分離して敢えて潰すことで利用したわけだ。

 身体をこのように使うとは、なるほどいい手だ、と感心した。


 その間に一回り小さくなったジュノーは外見から小っ恥ずかしそうに出てくると即座に服だけをどこからか呼び出して纏い、男の前に構え直した。

 感心から打って変わって、流石にそれを見てしまうと申し訳なさがでてくる。


「戦闘時にこんな姿見せるつもりは無かったんだけど……仕方ないね。僕は服まで作るつもりじゃなかったから」

「なんか……すまなかったな」

「いや、規制してないし大丈夫さ……さぁ仕切り直しだよ」


 ジュノーは抜け殻を無に帰すと切り替えたようで、赤らめた顔から抜け出した。

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