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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第十一節 誰が為に
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立つ鳥跡を濁さず

 ユラは黙り込んでなにかに耽ったあとため息をついてからようやく口を開いた。


「なんとか誤魔化す訳には……いかなそうですな」

「当然じゃ、お主ら住人の約束とは訳が違うでの」

「それは……残念ですなぁ」


 とここで鐘の音と共に外が騒がしくなる。

 生徒が授業を終えて出てきたのだろう。


「おろ?もうそんな時間かの?」


 資料作成にどれだけ費やしたのかがよく分かる。

 この調子からするにもう昼時だろう、少々長居しすぎたやもしれぬ。


「……アウラ様は今生徒に見られるのは少々厄介でしょうな」

「まぁそうじゃが……別にその程度いくらでも何とかするからの。特にお主が気にすることではない。一番手を焼くのはお主含めたそこそこの付き合いのあった者じゃよ」


 付き合いのあった者、まぁと言っても普段何気ない会話をしていた程度なら簡単にアウラの存在を消せる。

 

 ユラ以外で言えばペトラとライカ……あとはダンあたりかの?あの三人に関してはちょいとほかの教師より出会っていた時間が長い、存在を消した後に空いた隙間が多すぎると何かと怪しまれてしまう。

 故に共通のダミーを入れなくてはならない。


「ふむ……ならば最後の手伝いとして彼らを呼びましょうかね?」

「……すまんの、あぁ教師皆でなくとも良い。ライカとダンとペトラとお主だけ弄れば事は済むんじゃ」

「ふむ……おや?一人は呼ばなくとも来たようですな」


 その一言と共に二人とも入口の方を見る。

 するとまさに仕組まれたかのようなタイミングの良さでペトラが入ってきた。


「……ユラよ、何を思って察知した」

「ふおっふおっ……そんな気がした、と言いますかな。これが長年の老いぼれの経験というやつでございましょう」


しかしペトラ自身は習慣的にここを訪れた訳では無いらしく二人が居ることに驚いていた。


「あら?アウラ様ではないですか……所長があの場所に居ないのでもしやと思いましたが……」

「そのもしや、じゃよ。すまんな、思ったより時間がかかってしまっての」

「あまりに遅いので心配しましたよ……ってアウラ様は何が起きてもそう問題にはなりませんでしたね」


 ため息混じりに安堵の顔を見せる、アウラが如何に問題ないと分かっていても心配なのには変わりない様だ。


「そうじゃぞ?お主たちの死ぬようなことでも私には痛くも痒くもないからの。心配は受け取っておくがもう二度と不要じゃ」

「ええ……まぁアウラ様が特殊なだけで本来なら親しくした者への生きうるものの性ですけどね」


 ペトラの返答ににこやかだった顔が一瞬素面に戻る。

……そうなるようにしたのはあの男でありそうだとその男に見せてきたのは自分だ。


「……そうじゃな。のう、ペトラよ。ちょいと頼まれてくれんか?」

「構いませんが……なんでしょう?」

「居ればでいいんじゃがライカとダンを呼んできてくれんか」


 それを聞いたユラが慌てる。


「な、アウラ様。それはワシが……」

「別に誰が呼んだとて変わらぬ。他に人が紛れなそうなのが学長のお主より一教師たるペトラのが適任というだけじゃ……それにお主、ペトラを代わりと……」

「そ、その話をここでせずとも……!」


 歳に似つかず揉み消すかのように慌てて恐る恐るペトラをみると当の彼女は目が据わっていた。


「ん?……何ですか所長?私を代わりに……何ですか?私は私ですよ……?」

「そ、そういう意味じゃなくての……?ちょ、ちょっと落ち着いて話を聞いては……」

「アウラ様、二人を呼んできますので、私はこれにて」


 そのままユラとは目を合わせず反転し部屋を出ていく。

 乱暴に閉められた扉の音がさらにユラに刺さったようでユラがまるで風前の灯火のようになってしまった。


「……おじいちゃん。き、きら……嫌われ……******」

「はっ?!お主何やっとるんじゃ!」


 なんということだろうか、ユラは白くなるどころか先ほどのようにアウラと同じ身体へと変わり始めてしまった。

 大慌てで元に戻すがまさかここまでになるとはアウラですら思ってもみなかった。

 そもそも改変でもないのに自発的にあの身体になるというだけでも驚きである。


「お、おじいちゃん……」

「やれやれ、さすがに焦ったぞ……ほれ元に戻らんか。お主には話があるから残ってもらったんじゃぞ」


 元に戻ったユラをゆすって我に帰させる。

 さすがにこの事態にはアウラも乾いた笑いが出てしまったがユラに話があるのは事実だ。


「……は、話とは……な、なんでございましょうか」

「やっと戻ったか。お主、私の代わりが居るなれば納得するか?」

「それはどういう……」

「何、ペトラの言葉に思うところがあっただけじゃ。どうじゃ?納得するか?できるか?」


 ユラはしばし考え込む。

 あまりにも代わりという言葉がつかめないからだろう。


「代わり、というのはどういうことですかな?」

「……お主がペトラを孫のようにかわいがっているのとは別の面のペトラと同じじゃよ」

「ふむ……確かに『代わり』というわけですかな。アウラ様が消えてしまった後それが代わりに仕込まれるというわけですか……」


「まぁ……この老いぼれがそんな好意に文句はつけれませんな」


 ユラではなくアウラが笑った。

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