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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第十一節 誰が為に
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立つ鳥跡を濁さず

 朝日に照らされた創造主同士の対峙、最初期のほんのり感はとうになく、男の頬には冷や汗が垂れる。


「……ちなみにその心変わりの理由を聞いても?」

「だから言ったであろう?お主の防衛意識がひどすぎるんじゃ。それだけじゃよ」

「半身に合流しに行ったとトールから聞いていますが?」

「まぁ何。そこで証拠と共にいろいろと見せられたもんでな。裏を取った上で見限ったとでもおもってくれ」


 手を横にしながらやれやれ、と言うかのように、いや、もう手を貸す義理がなくなったとでも言いたいかのように嘲笑う。

 おそらくこのアウラのことだ、何かきっかけがなければこの状態から戻ることはないだろう。

 

「……重々精進させてもらいます」

「うぬ、それでよい。じゃあ私は適当に狙っておこうかの。あぁそうじゃ一つ安心させてやろう。私が用意した【守護者】は強いぞ?嫌な顔一つせずにお主の型落ち【守護者】でも守ってくれるじゃろうて」

「ハハハ……なるほど、そうですか……」


 型落ちなんて言われて癪に障らなかったわけではない。

 男は現実を認められないほど若くもなければそれに打ちひしがれるほど脆くもないのだ。

 先の一件で【守護者】がさして役に立ってないのではないかという予感はしていた、それが事実とわかったに過ぎない。


「まぁ、重ねて言うがそういう事じゃ後はそうじゃの、少々私に関して書き換えさせてもらおうかの。その方が都合がいいじゃろて……楽しかったぞ」


 吐き捨て……るかのようにではなく、非常に朗らかに手を振りながら消えていった。

 なんとも奇妙で一方的な決別である。


 アウラは学べといった、ならばそれには従っておくべきだろう。

 久方の自習という奴だ、まずは【守護者】の調整とアウラからの餞別とも言えるジュノー辺りを調べさせてもらおう。


 男は研究室へと身体を飛ばす。


――朝日は奇しくも雲に隠れていた。


◆sideアウラ


 アウラは地下へとやってきた。


「半身には悪いことをしたのう」

「見ましたよ、『アウラ』。早速半身との話をかなぐり捨てましたね」

「じゃな……というか見ておったのか。なら話は分かるじゃろ?」


 ジュノーは寂しそうな顔をする。

 この地下空間から移転するための支度をしていたそうだが、役割の都合上アウラと男の会話は筒抜けだったという訳だ。


「……僕も書き換えですよね?」

「……じゃな」

「黙ってるのでそこをなんとか……とは?」

「気持ちは分からんでもないが……何があるかわからんでな。流石に向こうは馬鹿では無いからの。お主から色々と引き出すじゃろ。まぁ保管はしといてやるから終わったあとに戻しておく、で許してくれんかの?」


 アウラとて今なら悲しめる。

 男に遭遇した時こそ豊かな感性は持ち合わせていなかったが役目から解放されたと同時に様々なものを逆輸入し自己に適応した。

 故に元のジュノーが寿命となった際には悲しんでやれたし笑ってもやれた。


「前の状態ならバッサリお主も切り捨てられたんじゃがの……なんとも面倒なものじゃな」

「何を今更。そんなだから今回半身に八つ当たりするわ、奴らを私ごと巻き込もうとするやらしてるんじゃありませんか」

「ハハハ……それもそうじゃな、じゃあのジュノー。しばしの別れじゃ」

「ええ、くれぐれも下手をしないでくださいよ。我が創造主」


 笑いあい、別れを告げる。

 ジュノーが目を瞑った内に改変を進め、視界から立ち去る。


 あの時に絶対の盾をジュノーから取り外したのがここで功を奏した。

 あの目がある限りはジュノーは改変を一切受け付けないのだが今はそれが無いために改変を受け付けてくれる。


 ジュノーの記憶を取り外し、世界ごと記憶をアウラの居ないものに書き換えると世界から創造主としてのアウラは消えた。

 これで残るは個人的な交友部分を書き換えなくてはならない。

……要は学園周りだ。


 学園の障壁破りをした場所へと飛んでみるとそこは放置されており教室のなかから覗くと生徒が行き来しているのが見える。

 確かに朝日を見ていればそれぐらいの時間は要していたと思う。


 廊下へと繰り出してみればユラが待っていたらしい。

 律儀に椅子まで用意して座っていた。


「……すまんのう、長引いてしまったようじゃな」

「昨夜当たりに地響きからなにやらあって何事かと思いましたぞ。何かあったものかと心配しておりました」

「なに、安心せい、このようにピンピンしておる。で、障壁破りに使った魔法を残しておきたいのじゃが……」


 腰を上げユラがアウラを部屋へと連れていく。

 途中かなり生徒の目をひいたので適当に手を振っておきながら彼らの記憶を改竄する。

彼らは何も気にすることもなく私の存在を忘れるだろう、次に知るアウラは世界を侵略するアウラである。


 ユラの学長部屋……ではなく研究室へ。

 相変わらずの資料と道具の山が視界に入ってくる。


「何が必要ですかな?」

「なに、紙でもあればそれで良い。お主ならものを見せれば理解できるじゃろ」

「ふぉっふぉっ……そう言われると嬉しいことにございますな」


 ユラから紙を貰い例の魔法陣を転写して渡す。


「ほれ、これでいいじゃろ」

「いやはや、丁度これで詰まっていたところでしてな……まさかこのような形で答えがやって来るとは」

「おろ、それは何よりじゃが……お主の成果を毎度横取りしているようで悪いのう」

「まぁたしかにそうかもしれませんな……かと言って過程はこれまでの成果があって初めて理解できるもの故」


 受けとった紙をまじまじと見つめ何やら思うことがあるらしく資料を取りに行った。


 今後その答えをもたらす者が消えることなぞつゆ知らずと言った様子にアウラの顔は少々陰りを見せた。

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