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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第2節 文化成長編
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【鍛冶師】の受難

「どうすりゃいいんだよ……」


 【ドワーフ】たちの目の前にはオリハルコンの塊が一つ置いてある。

 悩んでいるのは国一番の【鍛冶師】と言われている男とその弟子たちだ。

 先日の一件で陛下に呼び出された……までは良かったのだが、依頼された内容に驚かされた。


「これを……剣に出来ないだろうか……?儀式用で実用性は問わないのだが……」

「剣を作ること自体は構いませんが……これは一体なんの金属なんでございましょう?長年様々なものを叩いて鍛えてきましたがこんなものは見たことがありませぬ」

「これか?オリハルコンだ、そうか、貴殿でも見たことがなかったか……」


 オリハルコン、話に聞いたことはあったが現物を見たのはこれが初めてだ。

 そもそもどこで取れるのかすら分かっていない、どのように扱うのがいいのかすら分からないのだ。

 唯一わかっているのは、この国には何故か一本だけオリハルコン製の短剣があるということだけである。

 作れる技術があったのなら2本や3本位はありそうだが今のところ1本だけでそれも大層な装飾もされていない一見普通の鉄製短剣のみ、天からもたらされたなんて噂もある。

 そのオリハルコン最大の特徴は魔力を流せば青白く光り輝き物理的に魔力が見えるようになり、いかなるものでも傷がつかなかった、ということだろう。

 そんなとんでもない代物を剣にしてくれと頼まれたのだ。


「うーぬ……陛下も無茶なことをいってくれる……」

「師匠、これ、加工できるのですか?」


 弟子達は溶かせるのかどうかと疑うが短剣がある以上溶かすことは出来るはずだ、削り出した短剣など聞いたことがない。


「短剣は存在してるんだ、溶けないなんて馬鹿言っちゃいけねぇ。」


 そんなことを言いながら軽い気持ちで魔力を流してみる。

 塊から魔力が可視化されて現れる、塊をふた周り大きくしたような形で魔力が外に出ているのがわかる。


「これじゃあどうみても……盾だよなぁ……軽くて小さくて……これはこれで作っておくか……」


 今回作りたいのは盾ではなく剣である、貰ったオリハルコンも限りがある、何としても剣にしなくてはならない。


「仕方ない、まずは普段のミスリルの温度だ、そこから融点まであげてみてどうなるかやってみるしかないだろう、なに、悪いようにはさせない。」


 そう言いながら男たちはオリハルコンの加工を始めるのであった。



「んー……ここらへんに憑く予定の剣があるらしいんだけど……まだできてないのかな」


 周囲から浮いた格好の紅い翼の生えた少女が工房の中にいる、何かを探しているようだ。

 彼女こそ例の鍛冶の神になるべき存在であり、今は予定通り城への道を示すためにささげられるオリハルコンの剣に憑くことになっていたのだがその剣が見つからないのだ。

 話ではもう剣はできているはずなのであとはそれに憑りついて人々を城へ導けばいいだけのはずだったのだが……


「剣がないっ!?……ま、まさかもう工房から運ばれちゃった……?こ、これじゃあ怒られるどころじゃない……」


 涙目になりながら剣を探す。

 工房には素晴らしい出来の武具や防具の数々、見とれている場合ではなかったのだ。

……実際のところは彼女がほんの少しだけ調子に乗って実体化し、世界を飛んだり防具や武具に加護をつけて回ってる間に陛下の元へ剣が運び込まれてしまった、という彼女の失態のせいなのだが。

 鍛冶の神として作られた以上どうしても出来のいい物に加護をつけずにはいられなかった……と言うのが彼女の言い訳である。

 なお、彼女は男含め、創造主たちにすべてばれているということを知らない。


「うぅ……これではお役目を果たすこともできないじゃないですかー……ぐずっ……ビエエエエエッ」


 ついに泣き出してしまった。

……泣き出せば当然だれかが気が付くわけで……


「だ、だれだっ!」

「ひぃぃっ、あっ、あやしいものじゃないんでっ……ず……ヒック…」


 そこは異様な光景である、泣きながら答える不思議な少女とそれを不審者だと思って取り囲む【鍛冶師】たち、彼女は確かに工房をうろついていた不審者ではあるのだが……

 

「お前さん、どこの迷子だ?おい、【ギルド】に言って迷子のこと知らせて来い。」

「ま、待ってください……こ、これでも一応鍛冶の神様なんでずぅ…ちょっとまだ生まれたばかりですけど……」


 そうはいっても信じてもらえるなんていうことはない、そればかりではない、創造主になにをされるか分かったものではないので必死に策を考える。


「あ、あの……そこにあるオリハルコンに【加護】を付けたら信じてもらえますか……?それで信じてもらえたらオリハルコンの剣まで連れて行ってほしいのですが……」

「嬢ちゃん何を言って……」


 そう言って【鍛冶師】が剣とは別に試験としてつくった盾に触れると魔力を流した時とは違い赤い輝きを盾が放ち始める。

 盾自体完成品ではなかったのだが細部に異なった装飾が付き始め、次第触る前とは違う光沢を放つようになった。


「……【加護】をつけたので【鍛冶師】様ならわかるでしょうか、今つけられる物をざっとつけたのですが……」

「まさかそんなわけ……んん?どうなってんだこりゃ……前よりも軽いしさっきよりも魔力が流し安いどころか自分で魔力をため込んでるじゃねえか……」

「こ、これで信じていただけますか……?」

「……師匠、これ本物の【加護】ですか?彼女どうしましょう?剣はもう献上してしまいましたよ?」


 献上……してしまったと?

 ただ事ではない、それではただのオリハルコンの剣だ。

 なんとしても剣にたどり着いて城までの道を示さなければならない、しかしこの姿でやすやすと剣までたどりつけるわけもない。


「あ、あの……それで剣まで連れて行ってもらえ……ないですか?」

「……んー……嬢ちゃんには悪いがもう剣を呼べるような状況じゃ……いや、まてよ、しっかりとした鍛え方が分かったからもう1本つくらせてくれって頼めるかかもな……もう1本つくりたいとは前々から言ってあったし……いやどうだろうか……」


 【鍛冶師】たちの顔が暗い、一度完成した品を呼び戻すのは【鍛冶師】として名折れなのだ。

 いくら少女が鍛冶の神だからといってそう簡単に一度送り出した剣を整備以外で手元に呼ぶのはプライドが許さない。


「そ、そんな……私なんて主に報告すれば……ぐずっ……」

「ま、待ってくれ泣かれたら俺たちが困る。嬢ちゃん、とりあえずだ。とりあえず剣については考えてやるし、鍛冶の神様ってのは信じてやる。信じてやるからしばらくここで待ってくれ。」

「ぐずっ……え?……何とかなるんですか……?」


 少女にとっては藁をもつかむ思いである、【鍛冶師】たちにとってはとんでもない客が来てしまったが【加護】をつけてもらう魂胆である。


「そうだな……代わりに【加護】ってやつをちゃんとした品だけでいいからつけてくれねぇか、それで嬢ちゃんが剣のもとに行けるように俺たちが手助けをする。これでどうだ?」

「剣のところに行けるならなんでもいいんです!おねがいじまずっ……ぐずっ……ビィエエエエエエッ」

「おいおい……本当にこれが鍛冶の神様かよ……」


 こうして奇妙な国一番の【鍛冶師】たちと鍛冶の神様の少女の共生が始まった。

……なお、このやり取りもすべて創造主たちが白い眼で見ていたのは言うまでもない。

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