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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第十一節 誰が為に
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教師もまた

 食事に手をつけてからさほど時間を経ずして声をかけられた。


「ちょっと……どうして学長の目の前で生徒が……ってアウラ先生?!」


「……ん?おお!ダンではないか、久しぶりに帰ってきたぞ」


 声をかけてきたのはダンであった。

 彼は魔法陣を仕込んで動かす類の魔法具を専門で教えているこの学園の教師陣の一人だ。


 手には軽食を携えておりどうやら席を探していたようで「ちょっと失礼しますよ」と予備の椅子をこちらへと持ってきて腰掛けた。


「いやぁアウラ先生だなんて思わずてっきり生徒がこっちに座っているのかと……」


「ハッハッハッ気にするでない、最初の頃もそうじゃったからの」


「……堂々と学長の目の前で食べてたので違うとは思ってましたが、まさかもまさかの結果ですよ」


 そのままダンも食べ始め、四人になるとさらに談笑に花が咲く。


 それに加えて教師目線での学園の変化をよく知るいい機会になった。


「それにしてもいつの間に戻ってきてたんですか、ゆらりと消えて……」


……そう言えば彼は私が学園を出たところを見ておらんのじゃな。


「さっきじゃよ、ダンの方は変わりはないかの?」


「おかげさまで……ただ教える範囲が増えまして、調整に追われてますよ」


 そう言いつつ一息ついて水に手を伸ばす。

 カリキュラム改定というのは教える側には忙しくならないわけが無い話である。

 聞いたユラも半分苦笑いが混じった。


「いやぁ資金繰りの為じゃからワシにはどうもできんでの……ここまで範囲を増やされるとは思っておらんかったんよ。すまんのう」


「いえいえ、学長のせいじゃありませんよ」


 食べる手は止めずにダンも返すがどことなく声に仕方なしさが聞いて取れる。

 そのまま彼はアウラたちよりも早く食べ終わってしまった。


「……ん?金がないのか?」


 すると、ユラも残念そうな顔をする。

 学園である以上経費は必要だ、学びのためと綺麗事だけでは運営できない。


「あの時の生徒の中にボンボンがおったようでな、吹っかけてきおったんじゃ。まぁその結果猶予と称して介入してきおってな」


 あのユラの手に力が入っているところや記憶ではこの学園は少なくとも私がいた頃はそのような話とは無縁であったのを考えれば相当な額なのが伺える。

……なんとかしてやれんこともないがの。


「暗い話を出させたようですまんな」


「アウラ先生も気になさらず。話し始めたのかこちらですから」


 そう笑って誤魔化ように言うがやはりここには多少の恩があるのでどうにかしてやりたいところだ。


「……ん、そういえばダンよ。後で話があるでな、ほかの教師にも学長室に来るよう話を通しておいてくれんか」


「ん?分かりました。ちょっと生徒の面倒を見ないと行けないので少し遅れるかも知れませんがそれで良ければ」


「大丈夫じゃ。長い話では無いからの」


 ユラも本来の目的を思い出したようで周りで食べていた教師に話を広める。


「おお、そうであった。皆の者、そういうわけじゃ。授業前にワシのところに集まってくれんか?」


 急な話にも関わらず嫌な顔一つせず了承されていく。

 まぁ全員に行き渡らなくても話が進められるならいいのじゃが行き渡るに越したことは無い。


「分かりました、この後ですね」


そんな光景のなかダンは手元の水の残りを飲み干して席を立ち上がった。


「……では僕は先に、話は伝えておきます」


「うむ、頼むぞ」


 椅子も予備の方へ戻し食堂を後にしようと生徒の間を抜けていく。

 途中声をかけていた生徒が居たので恐らくそれが面倒を見なくてはならない子なのだろう。


「……相変わらずダンは人が良過ぎるぐらいじゃの」


「おかげで人気も高く職員からの評判もいい。学園としても手放したくはない人材ですな」


 後姿を見ながらそんなことを話す。

 そんなダンを見ていてもう一人について気になりだした。


「そういえばライカはどうしておるんじゃ。ここらには見えんが……」


 これにはユラよりもペトラの方が反応が早かった。


「ライカさんならアウラ様と合流する前に教室を通りかかりましたがまだ授業中でしたよ。ですがここにその時の生徒の一部が見えるので恐らく補習かなにかかと」


「なるほどの、まぁダンがもし出会ってくれればその時につたえてくれるじゃろ」


「むしろ会いに行くはずですから大丈夫だと思いますよ?なんだかんだそういう所があるんです」


 そう言って手をパタパタとわざとらしくペトラが仰ぐ意味がつかめなかった。

 なんにせよ伝えてくれるならそれでいい。


「……まだ時間は十分あるんじゃが、ワシらも待たせてはいけませんな」


「そうじゃの、呼んでおいて後からのうのうと来るのは良くないからの」


 さて、頼んだ側として待たせるのも申し訳ない。

 食事をかき込む、まではいかないが急ぎ目に食べ終わらせた。


そのまま三人は学長室へと帰っていく。

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