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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第十節 竜ノ娘編
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騎士団からの派遣者

「えっと……取らないといけませんよね」


「そうね、外したがらない理由は知らないけど、外してもらわないと中身が変わっても分からないもの」


「は、はは……ですよね……」


 手招きしてやって来た副官に耳打ちする。流石にこんな人間を寄越されてはそれが当人か確認出来ない。

簡単に騎士に偽装できると、この国を疑う訳では無いが……


「ねぇ、他に書類は貰ってないの?彼女の身元確認方法についてとか……」


「あぁ種族を見れば分かると言ってましたよ、依頼書の方に書いてあると聞きましたが……」


「……さっきの山の中に無かったわ」


ため息をつきながら副官が先に預かったであろう追加のゲート用魔方陣を広げる。


「……これが何かは?」


「こ、今回こちらが依頼した転移門の魔方陣です!」


「……君が騎士団からの派遣である決定的証拠として種族を見ればわかると言われている。それを示せるならその状態で過ごすことを許可しよう……国もこんな確認に手間のかかる人間を送らないで欲しいんですがね」


 種族の特徴と言っても様々だ。

 【エルフ】、【獣人】は耳や尻尾など……しかし個体数的にこのような確認には絶対用いられることは無い。


「えっと【鑑定】は……」


「偽装できるのでダメですね……言ってしまえば幻視もありますがまだ幻視の方が使い手がいませんから」


「……暗に外せと言ってますよね」


 次第に声に透明性が消えて嗚咽混じりになっている、まさか中で泣き出したりしてないでしょうね……むしろそこまでして姿を隠したいのかしら。


「ええ、理解が早くて助かります。それが一番早いですから……そろそろ観念して外してもらっても?」


 と言うとそのままゆるりとドアを塞ぐように立ち、扉の固定具を刺してしまった。彼なりの優しさだろう。


「……ほかの乗組員には言わないでもらえますか?」


「どういう意味かは分からないけど……少なくともこの艦では貴方を種族や見た目を理由に貶したり笑うような人は乗せてないわ」


 地域によっては虐げられる種族もいるとは聞いているが彼女はそういう出自なのだろうか?副官の言葉からするに当人が確定できる種族というのが気になるけど……


 いよいよ観念した彼女は兜の留め具に手をかける。パチンと軽い音と共に中から紅く燃え上がるような髪が舞い上がった。


「うぅ……私サクヤは【竜人】です、どうかこのことは秘密に……」


 そのままゴトゴトリと重い音と共に次第に全貌が見えてくる。やはり鎧の中で泣きかけていたらしく目尻は赤くなっていた。


「……綺麗」


「確かにこれなら種族だけで特定出来ますね……それにしても、竜ですか」


 鎧が外れる度に彼女があの竜に近しい種だと思った。その予測はむしろどこに隠してたのかとしか思えないような翼と尻尾が出てきた時に確信に変わる。彼女は鎧を外しきり、下着姿になったところで顔を真っ赤にさせてようやく手を止めた。


「あ、あの……恥ずかしいのでもう宜しいですか?」

 

 流石に可哀想なので部屋にかけていた外套を羽織らせる。曲がりなりにも騎士団で例の指輪はしているようで寒くはないらしい。


「頭だけで良いと言いたかったけど……ごめんなさいね、これでも羽織って頂戴。代わりに後でなにか持ってくるから」


……と言うかこの扉を閉めた男を部屋から出せばこんなに手間取らずに確認が取れたのではないのかしら?


 途中で当人も気がついたようで後ろを向いているから良しとするがこちらの思慮不足だ。副官には部屋の外に出ていってもらうと共に人払いもしてもらう。


「……さてもう大丈夫よ。恥ずかしい思いさせたわね。ただ幾つか聞きたいことがあるけど答えてくれるかしら?」


「え、ええ。答えられる範囲なら……」


 顔はまだ赤いが大分落ち着いたようだ。


「いきなりだけど貴方、【竜人】じゃなくて竜そのもの?」


 流石にいきなり過ぎたか、むしろ気が付かれたことを驚いているのか、彼女をしどろもどろさせてしまった。


「えっ?!えっと……そ、そうです。人の生活に興味を持って最近この姿になりました……恐らくどうして騎士なんてやってるのかと言われそうですがそれはエレイア様のご好意でして……」


「なるほどねぇ……まぁこれを知ったからといってなにかする訳じゃないから安心して」


 エレイア様とはサイヴァスの現女王、エルフの主の事だ。研究者としての魔法使いでユラ様が有名な一方エレイア様は魔法の使い手として高名な人である。そんな人がご好意で、ここまで手配しているというのだからなにか考えるところがあるのだろう。


「そ、そうですか……良かった……ここには私の同族を殺す程の力を持った存在がいるので一体何をされるか不安で不安で……」


「え?そんな人うちに居たかしら……?」


 リースには全く見当がつかなかった。

 そんな人がいるなら毎回頼りっきりになっていたはずだからだ。そんな人は当然アイヴィスにはいない。



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