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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第十節 竜ノ娘編
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出港に向けて

「出航前の船体チェックが無ければどうなっていたか分からないわね……」


 出航前の整備で発見されたのだが、艦橋から右前の噴出機関までの調整用魔力を通す為の魔力路が押し潰れていたのだ。修理はすぐに取り掛かられたがそれをせずに出航していれば逆流、最悪管の爆発……とまともな状況が思い当たらない。


「他に潰れてるところは?!」


「潰れたところはありません」


 アイヴィスの損傷は底面に集中しており魔力路も底面に配置されていた。幸いにも艦砲などできる限り精度を要求するような部品は損傷しておらず、外から叩き直せば問題ないようなものばかりだった。


「一体一夜のうちに何が……ゲートの位置が変わったのと絶対関係あるわよね……」


「例の【魔族】の仕業とみて間違いないでしょう、ゲートの文字も似たものを見ましたから」


 文字から考えて彼らのものなら確定だろう。


「破壊、というよりどかした時にそのまま地面に置いたような感じよね……」


 アイヴィスの傷は何かしらダメージを与えたと言うには軽微すぎる。ただただ当たりどころが悪かったのだ。


「……よしこれで問題ないかな、試験お願いしまーす!」


 と丁度ティナが全体を直し終えたようだ。艦橋へ試験開始の声が飛んでいく。機関から人が離れていき、私もティナと屋内へ退避する。


「総員退避確認よし、魔力通しまーす!」


 やはり近場は建物の中であっても激しい振動に見舞われる。固定機に繋がっている以上離陸することは無いが時折浮きそうになるのが出力の高さを物語っている。


「そう言えば積荷の方は?」


「……所長、整備担当にそれを聞く?」


 ごもっとも。大所帯で現に私が把握してないのにティナが機関以外を把握する余裕があるわけが無いわね。


「そうね、探してくるわ……あとで報告が来るだろうけど、被害があるなら配給量変えなきゃいけないし」


すると後ろから書類を山のように持って様々な乗組員が声をかけてくる。


「……艦長。探さずともこちらに山のように書類がありますよ?」


 各部門明らかに担げるほどの書類を持っている……これは出航まで缶詰ね……


「……部門別で並んで、全部寄越しなさい」


「……あっ、終わったみたいだから私は機関の方に行ってくるよ」


 手伝わせるつもりは最初から無かったのだがティナは逃げるように消えてしまった。


 まぁこれが艦長のあるべき仕事なのよね……



「あああああ……腕が痛い……」


 やっと書類と筆から解放された。適当なものの途中にかなり大事なものまで混ざってくるせいで集中が抜けないのは非常に体によろしくない。


 例えば何故かアイヴィスの予算で飲もうとしたらしい酒場の請求書の隙間に今回の修繕に用いた材料代の請求書が挟まっていたり、損失貨物の報告書が追記が多すぎて一部他のに紛れていたり……


「お疲れ様でした……ただ請求書の方はあとでキツく言っておきます……」


 そういう彼はお茶を差し出しつつも目は笑っていない。

まさかそんな物が混じっているとは思いもしなかったのだろう。


「あぁ、ありがと……ええ、ただ支払いは済ませておいて。あとで彼らから徴収するから」


「既に行動済みです。仮にも我々は今はそれぞれの国を背負ってますから、いくらアイヴィスという信用があってもそれを借りてやっていいことではありません」


「そうねえ……いくら休みでもツケをここに持ち込むのは困るわね。減給はしておくわ」


 よく良く考えれば三日の間、フルで休みだったかと言われるとそんなことは全くなかったし、夜間そう言うのに走るのは無理もない話かしらね。


「はぁ……で、騎士団の方から誰か来た?」


「あぁ来ていますよ。待たせていますが呼びますか?」


……人を待たせているとわかれば呑気にお茶をすすっているわけにもいかない。

いやむしろどうしてそれを先に教えてくれなかったのか……むせそうになりながらも机を片付け、書類の相手をしているうちに崩れた衣服を整える。


「いやいや……私にお茶を出す前に呼んで頂戴……お茶はいつでも飲めても話はいつも飲めるとは限らないんだから……」


「……さすがに無休で対応し続けるのもいかがなものかと思いまして……ではよろしいですね?」


 どうやら副官の気遣いもあったようだ。

確かに部屋に入ってから一度も休憩を入れずに書類仕事に追われていたのは事実だったし、手足を伸ばさねばそのまま石にでもなってしまいそうな時に休憩を無理にでも取らせようとしてくれたことは感謝しないといけない。

今からやるのは面接ではないが乗組員以外と会話中に何かあればそれこそ問題になる。


「もう大丈夫よ、通して」


「……だそうだ、入ってくれ」


「失礼します!サイヴァス騎士団から来ました、サクヤと申します!」


 私もそこまで背は高くないのだがそれでもその騎士の頂点が丁度視界の中央あたりにある。見れば鎧も真新しい、声と名前からしてかなり幼い印象を受けるが本当に騎士団なのか怪しくすら思える。


 しかしこの推定少女、本来なら兜なんてここではつけないのだがご丁寧にバイザーまで降ろしており、それがさらに偽って乗ってきたのではと疑惑を加速させる。


「よろしく。私がアイヴィス艦長のリースよ。……早速で悪いけどその兜はここでは要らないわ、外してもらっても?」


「え、えっと……」

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