捏造、古代文明
「神様……伺いますが、どうして最近少女の恰好ばかりされてるのですか……?」
「そうじゃのう……まず1つ目に見た目がよい、二つ目にバリエーションがおおい、そして3つ目に私が楽しいからかのう、性別なんてものは私にはないからの。」
「な、なるほど……」
最近少女の姿のまま過ごしているアウラに男は尋ねてみたが返答は予想通りであった。
「創造主様、アウラ様について思うところは私にもわかりますがそういうものだと思えばどうにかなるものです。」
「なんじゃその言い方は」
トールに言われ、男は深く考えるのをやめた。
◇
……さて、世界の時間をまたしばらく進めるにあたって抜けがないかの確認をしなければならない。
世界が発展する前なら多少世界を改変しても後々神話だの天変地異だのと説明すれば時代の進みと共にごまかすことができるのだが、時代が進んだ後ではそうもいかないのだ。
下手に進んでから修正してしまうとまずより多くの生命体に混乱を巻き起こす。技術体系なども改変前を基準にして発展しているので下手をすればそれらがなくなってしまうのだ。
「トール、何か変えたほうがいい点はあったか?」
「そうですね……創造主様のノートに【古代文明】なんて希望はありましたか?」
「【古代文明】か……いいのう、私も最初は作ってみたんだが壊れてしまってのう。あとで抹消せざるを得なかった、なんてことがあったのう……」
どうやらアウラは過去に私のいた世界で経験があったようだが、どうやらうまく作用せず壊したらしい……そんな物があったのかと少しばかり世界にいるうちに見ておきたかったと思う。
……いや待てよ?むしろこの見ておきたかったというのは実現させてみるべきではないだろうか。
「【古代文明】作りますか……文明に干渉できるようにしておいて直接文明に手を出さなくていいようなものを。トール、マキナと交代してきてくれ、これはマキナと作ることにする。」
そろそろ孫娘もかまってあげないと何を言われるか何をされるかわかったものではない。
◇
「おとーさん、【古代文明】ってどんなふうにつくればいいの?」
「そうだな……できる限りのオーバーテクノロジーでいいぞ。原理ブラックボックスでやりたい放題。調整は私がやるから好きに……いや、そうだなこのイメージで自由にやってくれ。それで問題なければどちらの世界にも設置する予定だ。」
そういってホワイトボードを久々に出す。
そこに書いていくのは塔、や箱――部屋の集合体、いわゆるダンジョンのような建造物だ。
「んー……おとーさん、要は遺跡みたいな感じする前提の建物?」
「そうだ、人々が攻略できるようにするがその印象で作ってくれればどんなものでもいい。だんだん奥に踏み込む程、恩恵も与える代わりに踏破も難しくするつもりだからそれも守ってくれればうれしい。」
今回マキナを起用したのは相手をしようとおもったからだけではない、唯一子供として作った彼女なら遊び心も混ぜてくれるだろうと思ったからだ。
「うーん、これをこうしてこうかな!どーん!」
ん……?どーん!なんてやる娘だったろうか、【パーティー】観察交代のときにも楽しそうしていて替わるといった時残念そうにしていたとトールが言っていたが何か影響されるものがあったのだろう。
そう言って出来上がったのは黒を基調とした巨大な城――その下にはつぼ型で底部にはなにか別の印象を持つ構造物、周囲にはいくらか柱と外壁らしきものが見える。
「おとーさん、これを浮かべてほしいの。それっぽく雲とかで隠してなにかの条件がそろうと見えるとかだとかっこいいの。」
「ああ……合格だ。それにしても……かっこいいなこれ……すごいぞマキナ。」
非常に好奇心を掻き立てる、どこかに埋めるつもりのデザインをするだろうと思っていたのだがこういう想像力はやはり形だけでも子供の方がいい、自由で柔軟な発想をしてくれる。
マキナも褒められて自然に笑っている……なんというかより子供らしくなった気がする。
「さて……ここから調整が私の仕事だ。マキナがいいものを用意してくれたからな、はりきってやって見せよう。」
――創造主による捏造、古代文明だ。
まずマキナの希望通り雲隠れ、可視の条件は……過剰な魔力とかでもいいな、ついでにその時は全天の色も変えてやろう、演出は大事だ。
次に出現する敵役、まぁこの世界ではどちらも機械は発達しにくいだろうしそういう類を……と思ったがあえて自分の世界の兵器やロボットたちでいいのではないか、まさにこちら側からしたら異物感がだせるだろう……まぁいつか技術をそのまま利用してくれればきっと魔法だけではなく機械も……などというどっちつかずなことになったら大変だけども面白そうだ。
さて、ここで与える技術の目玉――記録媒体を適当に配置して……
◇
「マキナ、できたぞ。世界にこっそりおいてきた。あとで少しなら弄ってもいい。」
「はーい」
世界に配置するときにさすがに隠れたまま気づかれなくては意味がないのでいくらか地上に遺跡を捏造。人々が存在は認知している状態にしておく、何かの拍子に一度可視にして認知させるのもいいだろう。
あとは……後付けとして無理やりまぜる歴史だ、人々がこれを追い求めてくれるような言い伝えが作れれば文句はない。
「マキナ、なにかそれっぽく付けられる歴史はあるかい?夢を掻き立てるようなのがいいんだが。」
「おとーさん、そういう付けたし歴史はアウラ様のがいいと思うの、面白いのを作ってくれると思うわ」
……どういうことだろう?経験者だからということだろうか?
とりあえずアウラをこちら側へ呼ぶ。
「……と、マキナが言うので神様にお願いしようかと。」
「そうかそうか……ちょっと待っておれ……」
そういうとまじめな顔をしたかと思いきや姿を最初に出会った時のモノに戻して空中になにか書き始めた、言語もおそらく神様本来の物だろう。
「最近の感じでやると思ったがまじめに神様だったんですね……」
◇
「……できたぞ。これでいいかのう?」
といってちゃんと読める言葉になって文が空中に出てくる。
姿は以前の得体のしれないモノなので非常に違和感がある。
『英知を極め、大いなる力を操りし、異なる理をもって世界を制した種族の残した遺物。その中でも檻は彼らが滅んだ後にも稼働を続け、いまだにその英知が見えるという』
見える文章はこれだけのはず……なのだがその言葉にはいろいろな歴史が見えるように感じる、ただ感じるだけで実際にはないだけなのだがなぜか感覚が歴史があるように見える。
「不思議におもったかのう?君たちは言葉は言葉らしいがそれを聞く、読むたびにイメージを植え付けるということをしたのじゃ。歴史を混ぜるときは読むたびにそれが真実だと思い、それがさらに深みを持っているという感覚を持たせるようにするのじゃ、いうなれば言霊みたいなものじゃのう」
そう笑いながら姿を変えていくアウラ、今度は少女ではないようだ。
「それと……世界をつくれと言っておいてなんだが……世界の時代を進めたあとにこの関係ですこし君の世界でやらせてほしいことがあるのだが……だめかの?世界を弄るというわけではないのだ」
少年…?というより角と翼をもっている姿、よくみれば魔力まで半端な量ではない。
角と翼さえなければ普通の【ヒューマン】の少年だろう。
「城の認知のためにかぎってなら。さすがに世界の改変はいくら神様でも二度もやるのは困ります。」
「う、うぬ、それは気を付ける。ちょっとだけ城を人々に【英雄】として見せるだけだ、それだけを認めてほしい」
【英雄】、いつの間にノートを見たのだろうか。
「……それなら。その計画の流れを教えてもらっても?」
「うむ、まず――」
◇
世界の時代を進め、アウラを世界に降ろす。
計画を認めるついでにアウラにはあることを頼んだ。
「神様が【英雄】、というよりも文化英雄か……」
男は心配半分、期待半分でアウラを研究室の光球から眺めるのであった。
評価ptついてて悶え死にかけました。ありがとうございます。
動画でも絵でも3Dでも評価されたり見てもらえるというのはうれしいもので、それが目に見える形だとよりうれしいのです。
追記:違和感のある部分を変更しました。文章は寝かせるべきかもしれない