言った手前
……と、とりあえず魔力を吸い上げて自壊しないかやって見ないと……
我々のゲートなら式を書き換えるだけで綺麗に接続が切れる。
しかし今目の前にあるのは片面【魔族】型、もう一面創造主型と非常に厄介なものを取り扱わなければならない。
「アスタリア、こちら側のゲートは書き換えました?」
「ここに移す前に書き直そうとしてそもそも構成が分かりませんでしたの」
ゲートとは以外にもうまく出来ているもので基本的にどんな方法で作ったとしてもゲート自身で魔力を空気中から取り込みそれだけで維持できるような効率を誇っている。
機能を止めるならばその魔力を何かしらで取り込むことを防げば恐らく創造主が作ったものでも止められるはずだ。
「……言ってしまった手前、魔力枯渇で止まればいいのですが……」
魔力を抜き取り始める。しかし抜き始めて違和感に気がついた。しかし十分か二十分ぐらい吸い上げても一向にゲートが自壊する様子がない。
「……?終わらない?」
もう既にMP換算で四桁中盤ぐらいは吸い上げた。我々のゲートが五つか六つは閉じれるほどの量だ。幾ら何でも多すぎる。【鑑定】にかけてみてその理由がよくわかった。
「なんでこんなふざけた……あぁ……」
そうか、あの創造主はゲートを作った経験が無いのですね。
見たものはそこらの【魔族】よりも多大な魔力保有値。四桁程度じゃびくともしない訳だ。
「おじ様、メビウスと一緒にゲートを破壊して貰えますか?」
「……姫様、このまま接続だけ切って我々で活用できないか?」
ゲートの魔力を見ながら魔力を水のようにして取り出し覗いているルシウスはなにやら思う節があるらしい。
「ん?ルシウス、どういう事ですか?」
「これは創造主が置いた純粋な魔力。そのまま壊して捨てるぐらいなら魔力源として運用すれば純度が高く安全な魔力をこの場で得られるようなる。その方が世界をまたいで魔力を貰うより遥かに楽だろう」
水をすくい上げるようにゲートの淵に手を突っ込む。そのまま手元が光ったまま再び手を抜き取るとゲートの魔力がそのまま彼の翼に吸い込まれる。
「なるほど……運用してしまおうと、確かに価値はありますね」
「私が全力で魔力を放出しても今ので全回復できますですが……その場合どうやって接続を切るか……」
全員が黙り込んでしまう、動かす時に色々してみていた……魔将何人かで吸引やら念動やら物理的に押したり引いたり……今思えばコントのようだったがゲートに対して何も出来なかったのである。その内には接続の遮断、変更も当然含まれる。
アイギスがアスタリアのないにも等しい裾を引っ張った。
「アスタリア、幻視、維持できる?」
「ん?ずっとは無理ですが……できますわ。なにか思いついたの?」
「ゲート、隠せる」
アイギスはアスタリアに話しているのだが誰も話していないので普通に聞いている。
確かにしっかりとゲートを幻視で隠してしまえば向こうの人間に気が付かれないようにできるだろう。
「先延ばしは好きではありませんがいいですわね、姫様も聞いていましたでしょう?」
「え、ええ……ただそれだと向こう側を隠すときにアスタリアは幻視で誤魔化したとしても何らかの姿をさらさなくてはいけませんね」
「そうですわね……消したようにみせつつ幻視をかけなきゃいけませんし……」
さすがにゲートの反対側に対して幻視はかけられない。どうしても向こう側で行う必要がある。
もう一つの問題として幻視はあくまで視覚情報を書き換える。アスタリア程の使い手であれば感触も弄れるがさすがに有を無にはできない。
「ともかく通行さえとめれば最悪閉じたってことでなんとか……ん?……そうですわ」
◇
時間ぎりぎりに彼等が戻ってきた後、成果と驚くべき事が判明した。見たこともない種族、【魔族】が存在するということだ。
「……にわかには信じがたいが……別世界があってそこにははるかに発展した種族が住んでいてそれも【魔族】って名乗った、ねぇ……」
「え、えぇ……そうです艦長、そして彼らはゲートを開いたわけではなくこちらでの何かが原因でつながってしまったのだ。と説明していました」
彼らの話は簡単に信じられるものでは無いが嘘として扱ったところで、というのもあるが……話を聞けば聞くほど【魔族】が現実離れしすぎていて信じ難くなる。そこまで魔力に長けた……いや、魔力に愛された者共がいるというのだろうか。
「で、ゲートからの侵入については?」
「元より何も通すつもりはなく閉める予定だ、と」
「……警戒だけはした方がいいわね。あっちの決定は私は関せずだけど何よりアイヴィスの真上だし、あとでローテーションでも組んでおきましょう」
……この国を出るまで、例の魔法陣が完成するまでに気にしなくてはいけない事が増えてしまったわ。
それにしても若く美しい少女が【魔族】の姫様ねぇ……そう言えば前に工房で存在が現実離れした少女にあった覚えがあるわ……今思い返せば初対面にしてはやけに私が馴れ馴れしくしたような……