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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第9節 異界遭遇編
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魔族都市 ①

「ここが我らの居場所。魔界全てがそうだから特に名前はないですけど」


「は、ははぁ……」


 体内から空気が抜けたような声しか出ない。調査隊はそのまま城下まで連れてこられたのだがそこまでの移動で驚かされた。始めは徒歩だったのだが……


「あなた達、浮遊は出来まして?」


「い、いえ……」


「まぁ、そうだと思いましたわ……転ばないようにちゃんとバランスは取ってくださいまし」


 そのまま全身を魔力が包み身体が浮き上がる。重い鎧があるせいで上手く直立を保てていないまま容赦なく動かし始めた。


「うおっ?!」


「なかなかに不便な装備品ですわね……まぁせいぜい頭を擦らないようにして欲しいですわ……ねっ!」


 速度が一気に引き上がると瞬間身体が過去に置いていかれる。そのまま何も無い平原を越えると何故か同心円状に伸びる天井のある真っ直ぐな通路を潜る。


 壁には装飾の代わりに見たこともない文字と魔法陣が延々と浮かんでおり、時折それが勝手に動いているのが通り抜けていくさなか横目に見えた。


「副艦長、やはり我々の文明より……」


「あ、ああ……発展しているな」


 歪みなく真っ直ぐな壁、謎の浮遊する文字、解析を挟まずとも感じられる膨大な魔力の流れ……自分らの世界より遥かに発展している気配を所々に感じている。解析役もデータにとるべきだろうとは考えているらしいがこのような状態で技術を盗むような真似は何が起こるかわかったものではなくただただ呆気に取られるばかりである。


「何か気になることでもありましたか?」


「い、いや……我々よりも高度な文明のようだと……」


「そうですわね。正確な年数は言えませんが幾星霜年と言っても差支え無いぐらいには」


 通路を超えてくるとようやく城下への門が見えてくる。門の前には門番のようになにやら我々の数倍もの大きさのある四足、燃え上がるような模様を持った獣が待ち構えていた。魔物の類にしては大き過ぎるほどだ。


「あら?今日は貴女でしたの」


『失礼ながら後ろのそれは何です?姫君の言っていた例の者ですか?』


 アスタリアが平然と会話し始めたことはもはや驚きではないが相手の獣が口を開かず流暢に返答したのを聞いて目を疑った。頭の中に遠近感のない声が聞こえてくる。


「ええ、脅威ではないから話をさせてしまおうかと思いまして」


『大丈夫ですか?姫君は良くても彼らが混乱しませんか?……まぁアスタリア様が決めたのですから私の責任ではありませんからね?……あぁ客人たちよ、くれぐれも深く踏み込むんじゃないぞ』


「え、えぇわかりました……」


 あまりにも普通に声をかけられてしまい返答してしまった。視覚がなければそれこそ普通の人同士の会話だ。


『……ええ、はい。そのように……アスタリア様、用意は出来ているそうです。寄り道せず中央通りからお入りください、どうぞ』


「ええ、ご苦労様ですわ」


 前足を軽く踏み込み直すとそれに合わせて扉が開く。門を抜けるとすぐに城下が広がっている訳では無いらしく恐らく円周上の城壁の中を暫く歩かされた。途中何ヶ所も同じような門がありそれぞれに様々な姿形の門番が立っている。


「質問しても?」


「何です?答えられる範囲でなら喜んで答えますわ」


「ここは一体どういう種族の集まりの国家なんでしょう?貴方のような【デミヒューマン】から先ほどの【魔物】まで……」


 急にアスタリアが立ち止まり振り返った。一瞬先ほど魔力を放出したときの顔になりかけたが今度はそうなる前に何か気が付いたようでそのまままた歩みを戻しながら説明してくれた。


「……私たちはどんなに見た目が違えど同じ【魔族】ですわ。ここで鑑定を使っていないのは正しい判断です、使えばそれは戦いを挑んだととらえる所ですからね。【魔物】と確かに似た名前をしていますが我々は全く別の種族ですので間違っても今後他の種族と間違えないであげてくださいませ……【魔族】であることに非常に誇りを持っている者ばかりですので。」


「鑑定してなくてよかったな、お前」


 隣で青い顔になっている、魔法使いを肘でつつく。むしろ彼がもしも【鑑定】でも使っていたならこの場の全員の首か胴体が消し飛んでいたかもしれない。


「やりかけて生きた心地がしませんよ……確かに言われてみれば相手のことを探るわけですからね……」


「あぁ申し訳ありませんが逆は許して下さいませ。身体検査ぐらいのつもりで受けてくださるとこちらとしても都合がいいですわ……さてここです」


 再びとある門……これまで門より明らかに大きな門の前で一行は立ち止まった。他所と違って見張りの数も一人二人ではない所を見るにこれが中央通りの門なのだろう。またアスタリアと門番らが会話しているのをぼんやりと眺めて待っていた。


「えぇ、確認は取れました。大々的にやるものではないのでこちらからどうぞ」


 今度は門がひらくわけではなく隣にある普通の扉を通るように案内された。そのまま通り抜けるとついに城下の町が調査隊の目の前に広がった。


――視界に広がるは城下というよりもはや大きな都市国家であった。


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