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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第8節 アイヴィス編
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【another】学園による一号報告文書

《学園最重要機密》


『学園地下に関して』


【魔法】


 我々の世界には魔法が存在するのはどんな種族であっても当たり前のように知っている事実だ。その基礎理論も関連事項のためこれについても記す。


『――初代学長ユラは学園の前身である【魔法研】時代において大規模な魔力運用について理論を完成させたことは有名であるが、その過程については多くの物が疑問視されている。


 一つは学会論文に書かれている世界樹周辺を覆った色鮮やかな空について当人が再現したとしているが再びそれを行ったことはこれまでないとされている。次にその理論の構築であるが余りにも完璧な部分が多すぎる。そこに至る過程があまりにも迷走がなく、答えがわかっているかのような構築のされ方だ。』


 ……と初期のころに多くの他学者から書かれることも多々あったが私は一貫して否定し続けている。しかしながらお告げがあったのは確かだ。


 お告げ以後魔法は急速に発展し、少なくともお告げ以前の百年が一年もかからずにすぎるほど凄まじいものを見せたのは言うまでもない。魔導具から魔法陣に至るまですべてだ。全てがお告げ以後まるで決められたかのようにどこからともなく技術が現れ普及していった。しかしながらその技術の起源、あるいは開発者を知るものがいるか考えてみてほしい。その考えた結果がある存在を示してくれるだろう。


 魔法とは離れて力を加えることができる方法とするのが一番説明しやすい。「風」「火」「地」「水」の四素と我々が呼んでいるものを魔力で動かすことによって魔法は発現している事がわかっている。空気中に存在する四素を魔法で実行させることにより火を起こしたり水を流すことが魔法では可能だ。しかしながらここにはもう一つの原則がある。これらを発動させるのに魔力をつぎ込むという表記がされるが実際には違う、学園では【魔力の指向性】と呼んでいる物が存在する。火を正面に起こす場合魔力はその地点に向かって真っすぐに術者から向かっていく。


 正確には魔法とはこの対象に向かっていく力を操ることを言う。対象の地点で魔法は詠唱されたとおりに作用し、様々な物に働きかける。対象に向かっていく力を理解しそれを操ることは四素以外の物も操れることを示す。常に外部の魔力を遮るように力の方向を作れば壁に、細かく振動させれば音に、視覚情報を遮るようにやれば幻視に……と応用が効く。


 しかしながら万能ではなく遠くで作用させようとするほどより多くの魔力を投じる必要があり私が発表するまで人間の魔力量では遠距離で大規模な魔法行使は不可能であった。


 私はあの日確かにあの人からお告げを受けそれをまとめ発表した。それに至る原理から理屈まで全てを聞かされたわけでは無かったが理論を書くうちに自ずと理解した。


【学園地下について】


 大災害以後その方には出会っていないが一つ使命を受けた。学園地下に置かれたある物を隠し、守り通すことである。


 この文書はそのある方が戻ってきた際学園が対立しないようにするものだ。


 この学園地下はその方が作ったものであり、そのある物は意志を持っている。間違ってもこの事を当時の教職員と当代学長以外に知らせてはならない。


 以下に必要な場合の対応を記すので参考にすること。


『学園の地下には空間があるが調査の結果巨大な結晶が世界樹から産出しており、魔物の巣窟と化している為封印した。決して地下への入口は開けられることのない様、ほかの壁とは違いがない。なお、ただの壁ではなく地下から外に出ないよう地下全域と学園の境界には大いなる結界が張られた』


 これに従い説明を行うこと。以下はあの方が来た場合についての対応である。


『あの方と付き人、特殊な場合を除いて何人たりとも入れてはならない。入ろうとすればそれは学園を脅かす者として速やかに排除すること。中で何かあった場合は速やかに生徒を地下階層から連れ出すように。何があったとしても保証されない』


【あの方について】


 あの方は恐ろしいほどの魔力適正を誇り、【錬成】に長け、その容姿に定まったものは無い。決して先入観を持ってはならない。


《著 初代学長》



「……まぁこんなもんじゃな」


 久々に論文以外のものを記して疲れた。ペンを置いて一旦休憩をいれていた所でペトラが入ってきた。


「あら……これは一体何のために?」


「ん?あぁペトラか……そうじゃのう……予感。と言うべきかの」


 つい先日アイヴィスからボイベンの技術屋経由で使者が来た時の話だ。


 答えは期待以上のものであった。全く同じものであれば作れるということらしく、完全な手の形にするとズレが生じてしまうらしいがそれで量産できるならば問題にはならない、それならば適した形にすればいい話だ。


 返答とそれに合わせて見本の魔法陣を渡した時に不意に雲の隙間から色彩豊かに魔力が溢れるのを見た。アウラ様がいた時は魔法行使の度にあった事だがアウラ様は災害解決の為に座に戻られた。その時に地下に半身を置いていったがどうも解決してからも取りに来る様子はない。アウラ様が嘘をつくことは無かったがどうも半身が置き土産に見えてきたのだ。わしが生きている間に取りに来るとは思いにくい、いやむしろどうもそうなる前に受け取れなくなる予感がした。この文書はあくまでもしもの備えという訳だ。


「やめてくださいよ、取りに来れなくなるなら分かりますがその前に死んでしまうみたいな予感の仕方は」


「じゃが考えてみればもしそうなればアウラ様に迷惑をかけてしまうじゃろう?わしが生きている間にアウラ様が来てくださればそれで済む話じゃよ……強いていえばあの半身と会話の一つでも出来ればのう」


 実際のところ会話ができない訳では無い、過去に一度隠すに当たってその半身と対面している。正直半身と言われても信じ難く、無機質な素体から光を灯す身体はあのアウラ様の半身とはまるで別物だった。そして向こうの言葉は一切理解できない、しかしながら不思議なことにこちらの言うことは理解しているようで地下に入るに当たって事情を話したところそのまま自ら地下に入っていき勝手に蓋、というより地下への入口を完全に隠した。


 ユラとしてはアウラ様の姿で教師になってもらえればとでも考えていたがそうはならず、そう聞いた当時も首を振って拒否だけは示した。


「……まぁまさにあれが神としての姿と言われれば分からないこともないですね」


「じゃのう……むしろわしらにはあの人の身体こそアウラ様としか認識がないがのう」


 そろそろボイベンから使者がアイヴィスに発つ頃だろう。魔法陣量産に向けて次の準備を進めなくてはならん。がその前にこれをどこかにしまっておかねば……丁度いいところがあったではないか。


「……ペトラ、これを隠せるかの」


「……できますよ?……なかなか悪い考えではないと思います」


 そう言ってハッチを開いてペトラの胸の内に仕舞いこんでしまった。

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