ステータスと種族②
「さて、その【パーティー】は今何をしているのかな……?」
そう言って男は目の前に映像を出すと、丁度その【パーティー】が平原を進んでいくのが見える。
リーダー格は【ヒューマン】か……他は【エルフ】、【ウェアキャット】……結構バリエーションに富んだ【パーティー】だなこれは。
しかし平原を進んでいるといって無防備に進んでるのではないようだ、というより探しているようにも見える。
「マキナ、彼らはいつ頃から【パーティー】を形成していたかわかるかい?」
「そのリーダー格の【ヒューマン】は最初に【ギルド】が出来た集団から一人でほかの集落を目指してるのはみたよ、集団に話をしていろいろもらうたびにメンバーが増えていたわ」
どうやらその【ヒューマン】の男が色々な集団、集落を転々としながら情報を言い広めているようだ。それに興味を持った人々がついていってこの規模の【パーティー】が出来上がったとみていいだろう。
言語の問題はおそらく初期配置した種族から時代が立っていないのでまだ地方で独自に発達するレベルではないのだろう。
そもそも彼らがこの段階で一団として動いてる時点で恩恵がある。
例えばある集落が弓を発明したとしよう、そのあとその【パーティー】が来ることでそのパーティーは情報をもたらすと同時にその弓についての情報を得る、情報同士の交換、情報と物品の交換が行えるだろう。
そしてその【パーティー】がいろいろな集落に立ち寄るたびにその弓の情報を渡せば弓が広まるというわけだ。
「トール、【パーティー】に【ドワーフ】を混ぜて鉱物の情報を口伝の言い伝えのようにして与えてきてくれないか?手段は問わない。」
「かしこまりました。このトール、【ドワーフ】の集団にそれを授けて【パーティー】が来るように仕向けてまいります。」
そう言ってふっと消えていく、彼はしっかりとこなしてくれるだろう。
「マキナ、その【パーティー】が全滅しないようにだけ見てやってくれ、ただ力に溺れさせないようにだけ目を見張っててくれ。」
「おとーさん、わかった、しっかりやってくるの!」
そう言って帰っていく、マキナの場合は観察してればこなせるからそれで問題ない。
……ついでにコーヒー牛乳も持って行ったようだ、相当気に入ったらしい。
「さて……こちらの世界にも同じような進み方をしてくれてればうれしいんだが……」
世界樹の世界の方で同じようになっていないか確認する。
残念ながら物々交換までしか発展していないようだ、【ギルド】となりうるものはまだない。
「ん……?宗教が出来上がっている……?あれは……巫女というか……なんだ?」
世界を見渡しているうちに見つけたのは周囲の服装と比べて明らかにきらびやかな服を来た少女が舞を舞っている姿である。
ただ舞を舞うだけではない、明らかに炎や水を操って纏っている―― 魔法がつかえているということだ。
彼女は【デミ・ヒューマン】、しかしその身体構成から出自はおそらく魔物と思われる。
魔物が人に紛れて討伐されないように工夫したのだろう、その結果人と混血が進んだと思われる、そうして魔法を使えるようになったのではないか。
そうして思わぬことにそれを周囲が神の使いとでも崇めたのだろう、一目見ようと集落に人が集まっているのが見て取れる。
「彼女を含めて一族には魔法を広めてもらえればいいんだがなぁ……とりあえずこの集落は守っておくか……滅んで魔法が絶えても困る。」
周囲の結晶のうち集落に影響しそうなのだけを集落から遠くなるように再配置する。
彼らが自らちょっかいをかけなければしばらくは平和に発展するだろう。
またこうしてしばらく観察するうちにいろいろな種族が生まれていくのだろう。
0が発明されればステータスと区分変化――進化も実装できるだろう、それまでの観察だ。
◇
「そうだな……観察を続けてる間に【ステータス】実装に向けてルールを決めておくとしよう。」
まず仮に種族と最もかかわりの深い物事の根源に近づけば近づくほどより高位種族になると設定する。
【エルフ】で言えば、【ハイ・エルフ】、【エルダー・エルフ】、【エンシェント・エルフ】と【エルフ】に関わりの深い自然について根源に近づけば近づくほど種族名の前に付いていく様な感じだ。
加えて、根源に近づくというのを知識とレベルを条件に、レベルはなんだろう、人生経験の数値化としておこう。
……それと別枠に【オリジン】を追加しておこう、これは完全に我々用だ、世界に降りてる間に死なないための保険となるだろう。
「種族はこれでいいか、そういえば【スキル】という概念を使えば伝番も簡単か……トールに相談してみるか」
「創造主様、お呼びでしょうか。今のところ問題なくこちらはこなせております、少々問題がありましたがお許しください。」
すでに背後にトールがいる。
先ほどまで彼は世界に降り立っていたはずだが……聞けばすぐに戻れるようにしていた上に自分ではなくドワーフを1体増やして混ぜたという。
少々の問題についても
「【パーティー】に信じさせるためにオリハルコン製の品物を1品流しました。」
「現物を見せたほうが効果的と判断したのであろう?ならば問題ない。」
実際問題があるとは思えないことだった。
実物を見せたほうが説得力があるのは事実である。
「トール、魔法使いが世界樹側に生まれた。【スキル】の概念を授けて伝番しやすくしてほしい。」
「鉱物の次は魔法でございますか、ですが【スキル】はすでにあるようでございます」
そういって映像を出してくる、先ほどの巫女とは別の場所の巫女のようだ、服装はきらびやかだが周囲含めデザインが違う。
こちらは周囲の人間に「火」の純粋な元素の出し方を教えているように見える……なるほど、どのように動いてどのように言えばうまく「火」を扱えるのかを伝えられているというわけか、これは確かに【スキル】でやろうと思っていたことまんまだと思っていいだろう。
「確かに存在しているようだ、ところでトール。0は発明されたか?」
「えぇ、ちょっと手を貸しましたが彼ら自身で発明してくれましたよ。」
この言い方からするに0を要求する場面を作り出したのだろう。今後の目標に合わせて追加でやってくれたのだからありがたい限りだ。
「……なら【ステータス】も問題ないな、進化と合わせて実装させよう。マキナを読んできてもらえるか?」
変更するうえではマキナにも伝えなければならない、異変だと思ってもとに戻したりもあり得るからだ。
トールがマキナを呼んで来てくれたのちにマキナに変更を加える旨を伝えて世界に改変を行う。
「ステータスと進化を実装したついでだ。あの巫女は進化出来るように手を加えておこう。」
そういって巫女の【デミ・ヒューマン】に人間への理解を条件として次の高位種族を与えた。
彼女たちはおそらくそう遠くないうちに進化を果たし周囲に驚かれるであろう。
これらは世界にとっては大きな仕様変更なのだが既存のものの上書きにはならないので今回はその記憶を弄る必要があったこと以外は影響はなかったので大判振る舞いだ。
……そろそろ必要なものは揃ってきたしまた時間を飛ばしてもよさそうだ。