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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第8節 アイヴィス編
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軍人らしく

「……一体何を話しているんだか……」


 部屋に入った途端空気が凍りついた。なにせこれまで秘密裏に崇めていた物が知られてしまったのだから。


「い、いやこれは……」


「流石にそういう感情は個人としては些か困るんだけど?……いや、むしろこの艦がティナがアレでもなにも問題が無いわけがよく分かったわ」


 軍は軍以外には関わらないべきと言ったが個人でどう思うかは別だ。だからこれは艦長ではなくリース個人として対応する。


「あ、あの艦長。一つ弁明させて頂けませんか」


「今この話は軍としてではありません、一個人としてよ、軍として関わるのは軍内の話、これは私個人の気持ちよ」


 部屋の男どもは互いに顔を見合わせた。これまでこんなことは無かった、いやしなかったからだ。


「……え、えっとリースさん?」


「……まぁそれでいいわ。先に私の名誉のために言っておくけど確かにあの子は大切に思ってはいるけど恋人じゃない。むしろティナなんか白馬の王子様を探しているぐらいなのよ?」


 男どもが動揺する。まぁあの感じで白馬の王子様を探している印象はないかもしれない、むしろ逆に興味が無いようにみえるのだろうか。


「……え、普段から二人共夫婦みたいに仲良いじゃないですか」


「断じて違う、少なくとも昔から住み込みで私が面倒見ているだけ、私にとったら嫁じゃなくて娘みたいなものよ」


 なにやら話をしていく内に医務室からかけ戻っていた、私に付けられた男が「お、俺の楽園が崩れていく」とか泣き叫び始めた。……そんな楽園はもとより無い。


「……で、手を出せと言ってる訳ではないけど、あなた達よくそんな宗教じみたことしてて何もしなかったわね。長い船旅になるから二人共警戒してたんだけど」


 こう言った瞬間先程までこの世の終わりのように死んでいた男が蘇って急に熱弁し始めた。


「そんなことする訳ないじゃないですか!天使を汚すなど言語道断!俺達はあれを見てその日の戦闘も乗り切りましたし疲れも吹き飛ばします。それを壊すなんてとんでもない!」


 流石に改めて聞いても引く。まぁ艦が緩くなってもそういう風紀の乱れとならなかったのだからなんとも言い難い。


 と普通に話をしていた、恐らく先ほど宗教紛いに熱弁されて引いてた調整師の【エルフ】が付け加えた。


「まぁこいつらの場合そういう事ですがそもそも同じ乗組員。そんなことをすれば首が無くなるか奴隷にされるかというのもありますが……そもそもこの船に乗ること自体名誉となっているのにその名誉の船でそんな犯罪は犯さないという訳ですよ。腐っても、国が違っても軍人ですから……国と名誉に生きているんです、我々は」


 ついでに連合で乗ってる今そんなことをすれば国の名誉に関わりますから……と苦笑いしながら言う。確かにこの船は合同開発。乗組員ももともとそれぞれの国の軍に所属している。そんな船で問題を起こせば国際問題にもなるし最悪戦争にまでつながりかねないのは皆重々理解していたというわけだ。心配の度合いを緩める理由にはならないが一種の信頼になった機会だった気がする。


――しかし、それとは別にすぐに命令と伝達が行えなかった件は別だ。艦長として罰を与えるのには変わりなかった。



 ところで、今このアイヴィスはパラディウムに向かっているが他にも行くべき場所がある。それは開発に参加した各国。それぞれの国に支援物資とアイヴィスの開発データを引き渡すのだ。今現在アイヴィスと同規模の艦船は各国で開発が官民それぞれで推し進められている。計画上は最終的にどの国も十隻まで、と制限するらしいが一級程下の艦の数までは名言していないのでそちらで各国は競い合うことになるだろう。少なくともアイヴィスに積まれる技術はどんな些細な物であっても各国に伝わる。それをどのように利用するかは国次第、国の懐事情や研究者次第だ。


「ふぅー……結局ティナは仕事してない時はぬいぐるみみたいに思われてるのなぁ……」


 説教後、艦内を巡回したのち風に当たりに甲板まで出てきた。周りを見てみれば当番で見張りをしている者以外はほかの国の乗組員と談笑していたり何やら読んでいたりとそれぞれに過ごしているようだ。そもそもこんな大きな艦船は今までなかったという物珍しさもあって見える景色の流れ方から当たる風まで新鮮だったりする。案外観光船も需要が出そうだ。

 

 中には新しく変わった部分を実際に見てみようとツアーみたいなことまでしている。確かに今回の改修はいろいろと細部にわたってかなり変更点も多い。


 例えば甲板などにおいては出入り口が増えた。当初は運び込みや何やらを考えてるうちに中央に大きめのがあれば事足りるのでは?ということだったのだが……いざ実戦に出てみるとむしろ危険だということが分かった。魔物の死体が突っ込んでくることもあったし入り口が大きいがゆえに逃げ込んでもそのまま攻撃が入ってくるなんてこともあった。さらに結局のところ大きくした理由であるマグ、飛空艇の積み込みも甲板からではなく結局他の荷物と同じところからすればいい、最悪甲板に乗せるなら魔法で外から乗っけてしまえとなった。極めつけに入り口が壊れたときにほかの入り口を使うのだがそちらが少ないことの方が問題として際立ったのだ。故に今はその大きな入り口は撤去され代わりに一人分幅の扉を増やすことになった。


――そんな風にアイヴィスは五十回分の航行から得られたものを活かして五一回目の旅に出た。もう襲われてもこれまでの様な被害はでない、いや出さないで済むだろう。


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