表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第8節 アイヴィス編
105/226

五一回目の出港

――ティナとユラの話に華が咲いている傍らアイヴィスの確認作業が推し進められる。意図せず防御機能の動作確認にもなった。効率的にも上々、そのまま艦長の決定により採用となった。そしてまさかの事態となった今回の一件はユラも研究してくれる教師がいるというので学園へと一端持ち帰ることとなった。


 乗組員は再び羽を休め、ドックの作業員は動作改善と改良に追われ、リースやティナも一時の地上での休日を謳歌した。



――数週間後


「前部機関、指さし再確認!」


「第一機関異常なぁし!」

「第二機関異常なし!」


 伝声管から各所からの応答が返ってくる。


「ティ……い、いや班長。後部はどう?」


「後部機関第三第四共に異常ないようです……それと」


 かすかにため息が聞こえた気がする。さすがに仕事の時に言い間違えたのはまずかったようだ。


「艦長が休日気分が抜けきっていないのはダメだと思いますよ?昨晩だって……」


 わざとらしく声のボリュームを大きくしてティナが釘を刺してくる、報告書がないせいなのか、はたまたこの艦が各国独自の物ではないがゆえに規則的に緩くなりがちなせいなのか、こういう時にかなり空気としては和やかで過ごしやすいのだが軍属としてはよろしくないほどに緩んでしまう。


「ちょっと、ティナ!筒抜けだからやめてって!」


 周囲からも笑い声が漏れてくる。せっかく気を引き締めるつもりだったのにこれでは台無しだ。出港だから乗組員以外に聞いてる人間がいないのが救いか。


「はー……それじゃあ気を取り直して……機関始動!」


「ハハッそんなこと……おっと……機関始動!」


「機関始動します」


 担当の乗組員がワンテンポ遅れた。どうやら気が抜けたのだろう……本当にどうにかしなければいざという時――これまでの襲撃ではなかったが――反応が遅れたらどうするつもりだというのか。


「全く……なにかあったらどうするんだ」


 各機関にはそれぞれ出力を安定させるための調整をする担当がついている。さらにそれとは別にリースが各所の出力自体を調整し艦の舵を取る。


 担当の乗組員、要するに機関士らが詠唱を開始する。彼らは機関の中にある調整用絞りを閉まった状態から一定値まで動かした。これで船体が浮くための機関の出力が揃ったのでいよいよ出港の用意ができる。


「こちら機関調整室。アイヴィス出発用意終わりました」


「よし、アイヴィスをドックから離脱させる!」


 自分も詠唱しアイヴィス全体の出力を操り始める。船体が地響きと共にドックの固定台から離れ、影が次第に小さくなっていく。


「各部、異常ありません、推進用に切り替えます」


「推進用機関解放、浮上用出力一時低下」


 後部の噴出孔が若干真下から後方へ角度を変える、その時一端艦のバランスが崩れ後ろに傾くがすぐに立て直される。こういった制御はリースではなく各機関士の仕事だ。船体が水平になったあたりで管から声が聞こえてくる。


「こちら機関調整室、船体安定化終わりました」


「了解……各員、艦長のリースよ。以後本艦はパラディウムまで直進航路をとる、予備役の調整師は予定通りローテーションさせるように」


 そう言って艦橋中央で起動した魔法を足元に魔法陣として顕現させる。これで戦闘でもない限りは消費魔力を抑えつつ船を思うように動かせる。競技用飛空艇でもないので常時精神を張り詰めて舵を取るのは危険だ。むしろ見張りがしっかり交代しながら普段は精神を代わりにすり減らしてくれているので自分は必要時だけしっかりと操舵をこなすことができる。とそこにどこからかゾンビの様な声を挙げながらこちらにやってくるのがわかる。


「あああああ……」


「死霊みたいな声をだして一体だれが……ってティナ?!」


 安定化させたのでティナが艦橋まで戻ってきたらしい……と思えばそのまま艦長室併設の寝床へと消えて行ってしまった。先ほど釘刺されたときに言った通り確かに寝ていなかったのが堪えたのかもしれない、私も確かに寝てはいなかったのだが出発前に仮眠は取った。おそらく彼女はそれすらしなかったのだろう、先ほどまでは緊張感で起きていたのだろうがそれが終わってしまったためにうとうとし始めたところを追い返されたというところか。


「もう……だからあの時一緒に寝ておけばよかったのに……」


 彼女の入っていったのを開けっ放しのドアから部屋の様子を見ているとなにやら薄い布、いや服が部屋から飛び出ていく……これは……


「ん?……っ!?」


 大慌てでティナが開けっ放しにしたドアを閉める。もはや艦では当たり前のことになりつつあるが周囲の乗組員も察したようだ。注意しようにもおそらく彼女はもう夢の国の彼方へ飛び立ってしまっただろう。


「……風邪ひかれてもこまるんだけどなぁ」


「艦長も休まれては?」


 意味ありげに見ながら副官に言われてしまった。いや確かに仮眠しかとってないとはいえ普段よりさほど疲れているわけではない。


「その目は何よ……私が寝てる間になにがあるかわからないからまだ休まないわ。あの娘みたいに事前に寝てなかったわけではないし」


 アイヴィスの五一回目の旅路はこうして幕を開けた。

泊りがけで出かけるので明日分がないかもしれませン

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ