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一般人だけど世界滅ぼしたので世界作ります  作者: 超蔟
第8節 アイヴィス編
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性能評価

 一度部品をパーツとしてくみ上げてしまえばあとはユラの仕事である。作業員はユラが設置すべき場所まで移動するさいにぶつけないようにしたり降ろすときにガイドをしたりする程度で見物ぐらいしかすることがなくなる。ユラ程の魔法使いになると同時に複数パーツを持ち上げてしまうのですぐに取り付けも終わってしまった。


「……取り付けは終わったかので、次はなんじゃ?」


「あ、次はこちらの穴をふさいでいただきます」


 取り付けが終われば今搬出口にしている部分を装甲版を延長し塞ぐ作業が待っている。ここにも魔法使いは起用されるのだ。塞ぐ予定の部分にてを当てるとそのまま【錬成】で装甲版がみるみるうちに伸びていく。装甲につかった四素の割合さえわかっていれば同じ材質の装甲版を増やすことなどユラにはたやすい。


「……どうやら前に同じことをやったやつは少々未熟なようじゃのう……」


「わかるんですか?」


「うむ、今だと僅かながら左側と右側で割合が違うのう……まぁ素材として同じにみえる程わずかな誤差じゃが」


 ユラの言った一言に周囲の設計師と作業員が眉をひそめた。装甲にそのような歪みがあるのはまずいからだ。一枚の装甲板が場所によって強度に差がある場合、意図せぬ衝撃で弱い部分を発端に装甲として成り立たない場合が存在する。これは大きなものになればなるほど顕著になり対応としてパーツ分割して歪みを抑えるなどを講じる必要が出てくるのだ。襲撃され傷つくことを前提としている以上無視できない問題となる。


「……ユラ様、その誤差は直せますか?」


「ん?そうじゃのう……ちょっとやってみるかの」


 船全体が生物のように脈動し始める、装甲版にユラが手を入れ始めたからだ。ユラを始点として装甲版が波打つ。これまでの傷はすべてその過程で消されだんだんとその光沢が均一性を帯び始めた。割合がそろいはじめ均一な素材となっていったのである。


「……前より分厚くなってしまったんじゃが……できたぞ」


 均一になったことで魔力の伝導性が高くなり、これによって確実に一つできることが増えた。硬い装甲版の上からさらに施される新たな防御策だ。もしも先ほどの装甲版のままでやっていたら成功していなかったであろう。


 考案した設計師が甲板に何かを書き始めた。ついて行ってみると甲板に大きな魔法陣を書いているようだ。魔法に精通しているものは何を書いたか分かったらしい。


「……ほう、面白い発想じゃ。それを防御に使うとは……わしの授業に取り入れたくなったんじゃがよいかの?」


「あ、それはかまいません、むしろ光栄なぐらいですね……よし、これでいけるだろう」


 案外書き終わるまでにさほど時間はかかっていなかった。しかしユラはなにか気になる点があったようだ。男の横から覗き込んで指摘していく。


「ん、船を守るのであればここはこうじゃろ……あとは……ここを書き換えればよくなると思うんじゃが」


「え……?あぁ!なるほど……そうか、それで効率を維持しつつ素早く展開できますね」


 そういいつつも最後に軽くユラがなにか仕込んだようだがそれが何だったのかは周囲の人間にはわからなかった。


「それは一体……?」


「効率を上げるための簡易魔法陣じゃよ、ペトラと同じ物じゃから効率は保障できるがのう……さて一度完成したものは試してみないのかのう?何かあっては困るんじゃろう?」


 確かにユラの言うとおりである。試験をせねば報告も行き当たりばったりになってしまう、思いもよらぬ問題だって起きうる。

 

 しかしそれ以外に問題があった。そもそも何を基準として試験するのか定まっていないのだ。もちろん何に耐えればいいかの想定はもちろん存在する。それでもこれを言葉にする際、何か魔物があってそれには耐えられると表現する場合一体何体からの攻撃なのか、時間は?具体的な火力は?などなど言葉や文章として伝えようとするには案外不備が生じてくる。それが魔法攻撃であるなら万人が同じ想定が出来るようにするのはさらに細かく何かしらの基準が求められるというものだ。


「……この防御魔法が動くかどうかですからね……砲一門もってきて撃ってそれで評価しましょうか、おい!ちょっと一門試験用に作ったのがあっただろう!それを持ってこい!」


 奥の方から数人によって砲が一門運び込まれてくる。今すでにアイヴィスに搭載した物との違いがところどころみられるがもとより艦載する予定がないのが明らかな構造で装甲も何もついていない。


 複数の作業員が動作状態を確認し砲弾が用意される。これであとは距離を決めて撃つだけだ。


「……もし動かなければ……」


「やめてくれそんな不吉なことをいうのは……そしたらここの皆首がないかもしれんぞ」


 設計師だけではない作業員の間にも緊張が次第に高まる。試験とはいえあのアイヴィスに一発撃ち込むのだ。なにかあれば大惨事だ。そして砲を用意する一方でアイヴィスの方でも先ほどの魔法陣に魔力が通され魔法が起動される。準備が終わればいよいよだ。


「……魔力通しました!いつでもどうぞ!」


「よし……よぉい!三……二……一……撃てえっ!」


 アイヴィス目がけて砲弾が飛んでいく。作業員もユラも設計師も皆その光景に息を飲んだ。

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