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白き少女は時に世界を見下した  作者: オニオンに首ったけ
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「白き少女は時に世界を見下した」~プロローグ1~

――私は赤い門を開くだろう、プロペラが風を切り、爆撃が肉を裂く黙示録だ――

 ――彼らは時に武力を腐らせた、腐敗は蠅がたかるまで気が付かづ――

――我々は毒の酒を呷るだろう、代償は飲んだ後に回る物だ、アルコールと一緒――









 西暦2300年、月面旅行が金持ちの嗜み、近日は火星旅行への切符が販売され、数億というおかしな値段と共に取引されたことが新聞に載った。


 そんな世界の日本国、日本はかつて戦争をし、第三次世界大戦が2150年に始まると、米国、英国、独と共に中東アジアをまとめたイムラハエルという国と戦争を、それに対しロシア軍の一部はイムラハエルを援助、さらに中国の一部の軍も独断で援助をはじめ世界大戦が発展した、結果としてはイムラハエルは降伏、露中では軍部大粛清が行われた。


 そして現代、戦争の名残はもはやなく、こうして語りを行う私は今、こんな平和な日本国の大都市東京のマンションに住まう学生であった、名前は山本 燈華、現在は高校二年生であり、父親は民間兵器開発局という、日本防衛軍(旧自衛隊)お抱えの研究所で働いていて、母は世界最大級の連合薬社という会社に勤務していた 。

 そう、私はブルジョワといえばそうである、両親ともに仕事が愛人がゆえにあまり金持ち感を出さないが、収入はそこらへんの金持ちより金持ちであろう


「はぁ、面倒くさい」


 私は高校のブレザーを着ると、朝露が未だに残るこの時間に家を出る、親が朝にいないのはいつものことで、高校は私の趣味主に制服が気に入ったという理由で少々遠い場所に通っている、それゆえ朝の6時15分には家を出て、駅に向かわなければならない。


≪ガチャ≫


 ドアを開ける、マンションは使いやすさ重視で最も低い二階を買っていた、親曰く「馬鹿じゃないから高い所はいらないわ」だそうだ。

 私は普段階段を使う、なあに大したことではない、階段に響く孤独な足音、あれが少し好きなのだ、落ち着くとは思わないだろうか?


 外に出れば、少し息は白く色づき、恐らく私の頬は赤く染まっているであろう、地球温暖化、などほど遠いのではないかと言いたくなるほど寒く、しかし肌を少し刺す寒さは心地よくもあった

 朝早いからか外にはあまり人がいない、自転車に乗る私は家から20分ほどの駅に向かい自転車を走らせた、腰まで延びる私の髪の毛は縛るのを忘れられ、まるで漫画の集中線のように私の顔にへばりつく




 駅に着くと私はまず先に髪の毛を後ろで縛った、目が少し痛い、髪の毛が入ったのであろう、二日に一回は縛るのを忘れる私だが、流石に髪の毛の襲撃を無視して強行したことはなかった、後悔している


≪カラカラ≫


 駅のドアを開く、電車というのはこの時代だとマイナーな乗り物である、航空ヘリによる移動がオーソドックスであったり地下鉄が普及したせいであろう、電車の需要こそあれど地上の駅は閑古鳥が泣いている。

 私は手帳形の携帯カバーに挟んだ定期券を改札に通す、≪ガシャン≫という音と共に定期券は少し温かみを帯びながら改札を抜け、私は無意識に定期券を抜き出す


 1世紀前からあまり変わらぬこのシステム、世の中には改札に≪ピッ≫とやる魔法のカードがあるのだが、私はあえて定期券を購入し、それを使っていた、せっかくレトロな乗り物を乗るのならという私の遊び心である。


「間も無く列車が到着いたします、ご注意ください」


 いつものアナウンスはホームに出るとちょうどよく鳴った、一両編成のワンマン列車はこの大都市に似合わない、利用客が減ったためだろうか昔ながらの列車を復元しマニア向けに朝などに使うべく旧車両を最近鉄道会社が導入したのだ、キハ、と呼ばれる種類の列車らしい、私が高校1年の秋に導入された


 電車の中は案外快適だ、このご時世に珍しいボックス席が青いシートと共に両端に6列、デッキ付近には優先席含む通常の椅子が短く用意されている

 しかしこの列車、乗る人は少なくボックスは一人で独占できた、それ故であろうか、ごくわずかな乗客は各自暗黙のルールがあり席は毎回同じ場所に座る、私は一番手前の右の席だ


「ふぅ~」


 席に着く、ボックス席の電車は独り占めできれば快適だ、荷物を手前の席に置き暖かい缶ジュースを飲みながら外を眺める、暖かくて心地のいい快適な電車は学校に行く際のオアシスであった


「間も無く列車が出発します」

≪プシュー≫


 空気の抜ける音と共に列車は静かに走り出す、ガタン、という音は鳴り響き、それに揺られて私も少し揺れてしまう、景色は鉄の摩天楼、しかしそれも徐々に高さが減り、数が減り、次第に大都市から離れていることが分かる


 さて、私はJKである、電車の中でも有意義に過ごすことを忘れない、一世紀前から形を変えない、されど性能の上がったスマホ、これをつければ画面にはいろいろなアイコンが、その中からゲームを起動する

 ゲームの内容は兵站ゲーム、戦艦や戦車、銃や野戦砲の擬人化キャラを駆使し敵を倒すゲームであり、資源運用こそが肝のゲームである、こういうのが好きなのは父親の影響であり、私の将来の就職希望は父親の会社であり、知識量はもはや入社に値すると自負している。


 しかしずっとゲームをしているわけではない、そんなことをしていては充電が切れてしまうのだ、ある程度ゲームを進め一度アプリを切ると次はニュースアプリを開く、色鮮やかな記事は一気に画面を彩った


――月面旅行月面旅行新プラン、価格は驚きの32万!!――

――医療発展、ついに癌への市販薬販売――


 この手の記事はいつも目を見張るものがある、特に月面旅行など今までの半分の値段であり、この価格であれば卒業旅行程度で行えるであろう、しかし私は地球が好きなのであまり興味はない

 そんな記事の中、少々物騒なトップがあり、私は思わずその記事を開いた


・・・・・・

――異世界門、欠陥判明――

 2280年、謎の異世界への門が出来たことは記憶に懐かしく、衝撃的であったであろう、しかしこちらは未知の病原菌を、あちらは新宗教を恐れ完全閉鎖していた。しかしここ数日門を囲む鉄が長らく錆びており、2290年にはすでに穴が開いていたことが門管理省より発表された、現在新病の報告はなく、直ちに修復すると発表された。

・・・・・・


「うわ、こっわ」


 異世界門、これは突如現れた、古臭い小説のような代物であった、異世界への扉、門はあちらの世界の都市とつながっており当初は猫耳の少女がボールを取るのにこの世界にやってきた、という事件があった、しかし世界は物語のように大胆ではなく、資源よりも安全を確保したい国連はその門を封鎖するのであった

 しかし穴が開いていれば意味はない、こんなことであればもっと交流でも持っていればよかったとつくづく思う


―――――――――――――――――――――

【彼らは時に武力を腐らせた、腐敗は蠅がたかるまで気が付かづ】

 敵は同調者を求めている~『民間防衛』より

 敵は武力を使わず征服できるであろう、潜伏させて腐らせれば、嗚呼国とは儚き

―――――――――――――――――――――


 電車が突如止まる、車内は騒然とし、窓の外を見れば目的地からは黒煙が立ち上り、花火のような光は私の学校のある地域に降り注いでいた


「大変申し訳ございません、現在原因不明の爆発のより、駅に列車の到着が困難となりました、これより東京駅へ戻ります、ご理解のほどをお願いします」


 少し焦りを帯びたアナウンスは車内に響く、しかし文句を言う者はいなかった、それはそうだ、爆音に黒煙が立ち込めるその場所に向かいたい者などいなかった。


 先ほどとは逆方向に電車は進む、私は思わずネットを開き、現状を把握しようとするもネットにつながらない、それと先ほどから爆音が鳴りやまないのも不安の種であった。

 電車内ではみんなスマホを眺める、勿論嫌がった者はいなかった、ざわつく車内、冷える肝、ストレスは次第に胃を蝕み目を乾かした。


 しばらくしてに列車は駅に戻った、戻った、黒煙立ち上る東京である、外からは悲鳴が、空からはキュルリという何かをこすったような音が響き絶えず爆音は耳を劈いた。


 私は悟ってしまった、これは攻撃である、錆びて壊れた門の穴、魔法のような爆撃、私は父親の仕事を尊敬し、憧れていた、それ故軍事についても把握していた、故にわかる、きっとこの爆撃は世界各地で起こっているであろうと。

 異世界には魔法があり、このような魔法が使えるのならこの世界の軍事基地、経済都市にあらかじめ人員を送り込み爆撃することはたやすい、そしてあの穴、あれは恐らく賄賂でも受け取った業者が開けたものであろう、異世界の民はここ10年で見事この世界を征服したのだ。


 私は走った、マンションはまだあるのであろうか、母は無事か、父は生きているか、東京はもう焼野原だ、爆撃こそ収まったがもう原形を留めていない。

 走った、走った、走って走った、足で走り、自転車で走った、燃え行く東京を見ながらいつも通る道を一直線に走り抜けた。


――――――――――――――

【我々は毒の酒を呷るだろう、代償は飲んだ後に回る物だ、アルコールと一緒】

 弱さは時に力を求む、信教の自由は自由がゆえに毒を飲んだ。

 自由に混じった赤黒い毒は純白を染め上げる、その毒は赤黒い血を流すだろう

―――――――――――――――


 一部の人間は包丁片手に生き延びたものを殺して回っていた、私は幸い自転車を乗っていたが歩きの者は押し倒されて刺殺されるのが目に見えた。

 彼らは爆撃のタイミングを知っていたのであろう、青い円状のエンブレムが背中に書かれた宗教団体の人間はやけに生き残っていたのだ、つまり彼らが内通者、門を開けた本人であるに違いない


「我らの新人類様に祝福を!!!!!!!!!」


 狂った声を上げ生き残りを殺す彼ら、しかし私に助ける力はなく、殺される少女を無視して、腕のない少年を無視して自宅に向かう。



 マンションは焼けて崩れていた、そして穴だらけの母は焼け尽きたマンションの前で転がっていた、父親もいる、しかし首はない、、、殺されたのだ。

 悲しさで目の前が揺らぐ、燃え行く炎に街が崩れる、私の表情はもう恐ろしいほど崩れていた、涙は止まらない、自慢の母に憧れの父は今目の前で死んでしまった。


「あら、泣いているの、初めて見たわ」


 母はズタボロの体で立ち上がると私を抱きしめた、母が生きている感動はない、死ぬのは目に見えていた、なまじそういうことを学んだが故である、それに母が自分自身救命活動をしないところを見ると、もう遅いのであろう。

 しかし、せめて別れが言えるだけでも幸いなのであろう、私は口を開いた。


「お母さん、、、大好きでした、お父さんも、本当に」

「あら、お父さん、きっと喜ぶわね、、、ねえ、燈華、このマンションには地下があるの、真ん中らへん、きっと今なら銀の扉が目立つはずよ、ねえ、もしも、貴方が呪われた身になってもいいのなら、そこの薬を飲みなさい、効果はその部屋の紙に書いてあるわ、、、愛しているわ、私の自慢のむす、、、」


 ついには息を引き取った、ズルズルと私をなぞるように地面に落ちる、私は母の目を閉じると、崩れた家に足を踏み入れた。


――黙示録だ――


 そう書かれた銀色の地下への扉、私は強引にそれを引き上げる、冷たい風は地下から溢れ、階段は一階分はあるであろう、私は階段に足をかけ、扉を閉めると歩みを進めた。


≪カツン、カツン≫


 足音が響き、冷たい風が肌をなぞる、熱い涙は私の頬を確かに流れ、沈んだ心は今にも壊れそうであった、お気に入りのブレザーはもう土まみれで血まみれだ、私が何をしたというのであろうか。


 しばらく歩きようやく扉が見える、真っ赤な鉄の扉、扉の中央には大きくこう書かれていた


――生きているとは言えないであろう、死んでいるとは見えないだろう――


 扉を開ける、すると熱風が漏れ出し髪の毛が揺れるほど風が吹き荒れた、そして3mほど先にはまたしても扉が、真っ青な扉にまた文字が書かれている


――優しいとは言えないであろう、冷酷であるには優しすぎた――


 扉を開ける、冷風が頭を押し付けるように吹き荒れ、寒さのあまりに髪の毛は少し凍り付き、血の付いた制服は不自然にしわが固まった、そして3mほど先にまた扉が、小さく文字が書かれている。


――この先にあるは不死の薬、飲めば死を忘れてしまうだろう――


 扉を開ける、目の前にはアタッシュケースが置かれている、この中身が不死の薬、なのであろう、母のことだ作ってもおかしくはない。


≪ガチャ≫


 箱を開ければ指輪を入れるようなケースが置かれており、それを開ければ真っ黒な薬が入っている。


 <さて、私はなぜこの薬を飲むのであろうか?>

「生き残るためか?」       「永遠の命が愛おしいからか?」

         「母の薬だからか?」

「気分か?」       「人生を楽しむためか?」

     「永遠に誰かを愛したいからか?」

「永遠に誰かに愛されたいからか?」

                 「永遠の命をもって知識を求むか?」

<馬鹿を言ってはいけない>

<そんなことは些細なことだ>

<何故飲むか、簡単であろう、それは――






――自分の平和を奪われたのだ、返してもらわねばならないからであろう>

≪ゴクン≫



――私は赤い門を開くだろう、プロペラが風を切り、爆撃が肉を裂く黙示録だ――


 目が覚める、体中が少しきしむ、そして後ろの扉を見れば、そこには変わるはてた自分の姿が写っていた、灰色の眼、白すぎる肌、覇気のない表情、そして黒かった髪の毛は真っ白になっていた、そうして寝ている間に崩れてきたのか骨組みの鉄骨は自分の懐に刺さっているのが目に見えた。


プロローグ2に続く

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