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Ⅱ:everyday

生活がいそがしかった為に時間がなく、遅めの投稿となりました。申し訳ありません。

 国民経済、天然資源、領土、軍事力とあらゆる方面で世界最大を誇るマスデニア帝国。

その中心にある帝都グラナスはおびただしい数のビルが立ち並びその隙間を道路や路面リニアモーターカーの線路が網のようにはりめぐらされている。マスデニア帝国自体が世界最大の領土を持っているのと同時にここもまた世界最大の大きさを誇る都市である。


帝都グラナスの東部に位置するヘイゲンシティーに都立ヘイゲン工芸高校はあった。生徒数は全学年で420名とかなり少なく生徒数に比例するかのように学校自体の大きさも小規模で、上空から見るとHの形をしているというほかは外観に特に特徴は無くどこにでもあるような高校である。


 そんな学校の夕日が差し込む廊下をぐったりしながら歩く男子高校生がいた。生まれつきの赤く澄んだ瞳にやや長めに整えられた黒髪、身長は180センチ丁度でどちらかというと細めの体系、そして彼が着ているただでさえ重い藍色の作業着はその格好でマラソンでも走ってきたのかと勘違いするほど汗で湿っていて全体的に色が変色していた。作業着の左胸に安全ピンで留められているネームプレートにはアレン・シュトラウスと刻まれていた。


「AAFのコクピットの内装クーラーが故障なんて聞いてねーよ・・・」


 アマチュア・アーセクトフレーム、通称AAFは元々軍事力補強のために製作された歩行型汎用機動兵器の技術を兵器としてではなく小型化し、建設業者などが使用する重機として運用できるようにしたものである。従来の重機などよりも多くの面で優れている事から今の建設業などにはなくてはならない存在となっている。重機と同じくこれを操縦するには運転免許が必要で、この都立ヘイゲン工芸高校は工芸科目の専攻をしているだけでなくAAF運転教習所の運営もしているのである。機械工学の仕事に就きたいと考えているアレンはその免許取得の為の実習を終えたところであった。


ため息交じりの愚痴を吐きつつアレンは汗で濡れた髪を首からかけていたタオルで拭いた。

アレンが不意に窓に視線を移すと模擬実習用のAAFが格納作業が行われているところが目に入った。

格納作業が完全に終了したところを見届けアレンは更衣室に入った。

更衣室は二十人ほどの人が入れるスペースに扉つきのロッカーが両の壁にあるだけの簡素な造りだった。天井の隅っこに取り付けられている換気扇は故障しているのかカラカラと音がなっていた。

アレンが自分の服を入れたロッカーに向かい取っ手に手をかけたときだった。更衣室の外から彼を呼ぶ声がしたのである。アレンが視線をロッカーから更衣室の扉に向けると、更衣室のドアのすりガラスに髪が短い女性のシルエットが浮かんでいた。


「終わった?」


少し高めの可愛らしく明るい女声が扉越しにアレンの耳に入った。アレンは「今から」と軽い返事を送り改めて着替えを始めた。二分ほどの時間をかけて制服に着替え、ロッカーに忘れ物が無いか確認し、汗で濡れた作業着を放り込んだカバンを肩からかけ更衣室を後にした。

更衣室から出てきたアレンを待ち受けていたのは茶髪のショートカットに薄青く綺麗な瞳が特徴的な幼馴染のレナ・アネーキスだった。夕日に照らされた彼女の髪は温かみのある黄金色(こがねいろに染まっていた。


「この後予定ある?」

レナが髪をかき上げながらアレンに聞いた。

「特に無いよ」

アレンは首を左右に軽く振りながら言った。それを聞いたレナの顔からは少しの笑みがこぼれた。

「じゃあさ一緒に帰ーーー」

「いいよ」

アレンはこの先に来る言葉を察して遮るように返事した。別にアレンに超能力があって思考が読めるわけではない。小中高と二人は同じだった事もあり放課後にレナがアレンのもとに来るということは、すなわち一緒に帰りたいというサインである事をアレンは条件反射的にわかっているのである。


「明後日暇だからさ、一緒に映画でも観に行かない?」

正門から出てすぐの所でレナは思い出したかのように言った。

「明後日か・・・特に用事も無いしいいけど・・・でも今って面白そうなのやってたっけ?」

アレンは首を少し傾げながら言った。

「ほら、あの、サスペンスのやつ!」

「名前は出てこないのか・・・サスペンス・・・あーあれね『白い嘘』ってやつだろ?」

そう言いながらアレンは「サスペンスの」という手がかりなのかも怪しい手がかりで、答えを出せる自分自身を心のうちで密かに褒めていた。

「そう、それ!」

そう言いながらレナは右手の人差し指をピンと立ててアレンの顔のほうを指した。

「サスペンス物好きだし、広告で何回か見て面白そうとは思ってたけどもう公開してんの?」

「だーかーらー明後日がその公開日なの!」

「そういうことね。でもさお前ってサスペンスとかって見るほうだっけか?」

普段レナが観に行く映画は流行しているものか恋愛モノだけであることを知っているアレンにとっては不可思議なのは当然だった。

「いや・・・ほら、たまにはあんまり観ないジャンルも観ようかなって・・・」

そう言いながらレナは今までアレンに合わせていた視線を逸らした。

「珍しいな、まぁいいか。で?何時くらいにどこ行けばいい?」

「映画の上映時間とも調整するからまた連絡する!」

「りょーかい」


傍から聞いてみればどうでもいいような話をしているうちに二人は高校から一番近い東部グラナス駅に到着した。「東部グラナス駅」という名前が付いているにも拘らずこの名前で呼ぶものは少ない。理由は駅自身にあった。無論ちゃんとしたリニアモーターカーステーションではあるのだが、生活日用品や食品に衣服までもが揃う小売店だけでなく、フードコートやゲームセンターなども揃っていてもはや駅ではなく一つの商店街にしか見えないからである。故に人々は駅と商店街が合わさった所という意味を込めて「駅街」の愛称で呼んでいる。


 駅街のホームには人が十人程度入れるガラス張りの待合室とベンチが数席ほど設置されていて、他には飲料水が販売されている自販機が三台置かれているだけという先ほどの駅街とは世界が違ったかのように、一切都会らしさが感じられない質素な感じである。アレンはレナをベンチに座らせ、自販機で二人分のジュースを買いベンチに座った。

「りんごとぶどう有るけど、どっちがいい?」

そう言いながらアレンは二つのジュースの缶をレナに差し出した。

「じゃあ、ぶどう!・・・でもさーこういうのって先に聞いてから買ってくるもんじゃない?そういう細かいところに気を使うことができないとモテないよ」

ぶどうジュースを両の手で受け取りながらレナは得意げに言い放った。

「お前・・・そうは言うけどな、りんごとぶどうどっちも好みだろうが。」

アレンが表情を変えずに言い放つとレナは小声で「ばれたか」と言いながら首を竦めた。だがその表情はどこか嬉しそうでもあった。


 二人がホームに着いてから数分もたたないうちにリニアモーターカーは到着した。丸み帯びたフォルムと白を基調としたカラーのせいでその外観は近未来的に見える。車内にはたくさんの人が乗っていたが、半数くらいはこの駅で降りたため二人は座席に座る事ができた。二人が座席に座った数秒後に空気が抜けたような音ともにスライド式の入り口のドアが閉まり間も無く発進した。乗っていた人のほとんどが降りたのもあるが車内はとても静かだった。二人を含めて誰一人として会話をしていないのである。




リニアモーターカーが高台のレーンに上がったときアレンはいつものように車窓から外の景色を見た。遠くの瓦礫で埋め尽くされた街がいつものように視界に入った。そしていつものようにその景色は大型ビルの影という闇に飲まれ視界から姿を消した。







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ちょっと投稿した後に気づきましたが、読み返すと文章が変なところがあったので時間があったら再編集します。


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